河村・大村コンビ圧勝
愛知トリプル選挙の出口調査データを見ることが出来たら、主流メディアとは違った切り口で私なりの分析を紹介したいと、前の記事「リスク不寛容社会」で予告した。言い訳から始めると、残念ながらネット検索では生データを入手できなかった。名前負けする題名だが、何時もの天邪鬼的アプローチで考察してみたい。
河村氏は民主党支持及び無党派の8割、野党支持の5割以上の得票を得た。そして河村氏に投票した8割が大村市にも投票したというから、両氏の相乗効果を狙った選挙運動が壷に嵌まった様だ。誰もが雪崩を打って河村陣営に投票した(毎日新聞2/7)。
新聞各紙は河村・大村両氏の圧勝は、市議会などの既得権益層を悪役に仕立てた構図が成功、既成政党に衝撃を与えた、与野党とも統一地方選に向けて厳しい対応を迫られる、といった論調だった。又、自治体首長が議会の力関係を強引に変える手法を危ぶむ指摘もあった。
もう一つの指摘は、議会が果すべきチェック機能を果さず、長引く景気低迷が民間企業を直撃し、地方行政や議会が相対的に裕福になり(日本経済新聞2/7)、これが既得権益化したと捉え是正しようとする首長と議会が対決する構図で、これが全国的に広まり始めているというものだった。
推測: 勝者は高齢者
だが選挙前から私が注目したのは、誰が勝者か、つまり勝敗を決定付けたのはどういう人たちか、何が争点だったかだ。ヒントを得る為に、先ずは世代間の投票率分布を支持政党ごとに見たかった訳だ。ということで、以下の議論はデータに基づかない私の推測であることをご了解下さい。
私も新聞の分析は概ね妥当だと思う。その上で、今回の選挙の勝者は2年前に民主党を勝たせた人達ではないかと思う。その人達は団塊の世代とそれ以上の年代、いわゆる高齢者達ではないかと感じる。理由は簡単で、河村氏の政策の目玉は若者のためにならないからだ。
読売新聞社説(2/7)は「河村氏は、減税の財源は行政改革による歳出削減で捻出している、と主張している。だが、地方交付税を受け取り、市債残高を増やす一方で、減税を恒久化することは、将来世代へのつけ回しに」と指摘している。この正論が結果に反映されないのは何故か。
論点: 世代間格差と官民格差
財源問題を真正面から捉えて自治体の債務残高を健全化していくプランを打ち出したら、実質サービスの低下や増税路線と非難されて選挙に負ける可能性が極めて高い。はっきり言うと民度が低いのだ。国民のおねだり体質、特に増え続ける老人は政治を劣化させた(山口巌氏)。
同じような問題提起をしているのが日本経済新聞の平田育夫氏で、公務員・中高年や農業・医師など各種団体は既得権益層と断じ、公平さを欠く優遇措置を縮小廃止すべきと指摘している。ところが、民主党も自民党もこれら既得権益層が主要な票田であり、いつまでたっても改革が進んでいないと。
河村氏が最大の票田は高齢者とその直前の団塊世代だと思うが、彼の政策が最終的に若者と老人のどちら側に立っているか私には定かではない。少なくとも現在のところは既得権益の一部(公務員)を切り崩し、別の既得権益(老人)に移し、最後のツケを若者に回そうとしている。
日本の若者は大人しくて自分達にツケが回るのをこれまで黙ってみている。いつかチュニジアやエジプトの若者のように、日本の若者も立ち上がって既存政党に「ノー」を突きつけるかもしれない。だが今回の愛知・名古屋の選挙は若者が立ち上がったのではなく、老人が選んだ結果だと思う。
蛇足だが、河村氏が深謀遠慮で1)減税を餌にして市長再選と議会多数を制し、2)次に既得権益を思い切って削り、そこで君子豹変し3)財政健全化の為の手を打ち次世代にクリーンな財政を引き継ぐ、という3段階アプローチを取っているかもしれない。某氏によると河村氏は良くも悪くもそういうタイプではないという。You’ll see. ■