日本株の下落が止まらない。昨日開かれた産業競争力会議で明らかにされた成長戦略の素案に失望した市場は手痛い評価を下した。今日も一時切り返したが、引けにかけ先物主導の売りに値を崩しほぼ全面安の展開となり、2か月ぶりに日経平均は1万3000円を割った。成長戦略発表直後からの暴落は、アベノミクスに対する痛烈なパンチだったと私には感じた。
大幅な株価下落の原因は報じられたところでは、成長戦略の方向性とその高い目標はもっともらしいが、具体的な政策は小粒で目標にどうやって到達するのか道筋が見えないと厳しい評価がなされたためだ。適切な目標設定は極めて重要だがそれだけでは不十分、政府がやる気だと信頼を得る下記施策(日本経済新聞6/5)がたったの一つも素案に盛り込まれず失望を買った。
・法人税の引き下げ
・移民の受け入れ
・解雇規制の緩和
・混診医療の解禁
・企業の農地所有の自由化
これら項目は既得権益にメスを入れるいわば痛みを伴う政策で、参院選を1か月後に控え既得権益層の離反を防ぐために具体的な政策は打ち出さないだろうと従前から指摘されてきたものだ。市場はサプライズに反応(時に過剰に)する。だが、今回の成長戦略の内容が乏しいのは、ある意味予想通りだったはずだ。
予想通りの「冴えない成長戦略」なのに何故市場は暴落で応えたのか。アベノミクスを打ち出した時、黒田日銀総裁の「異次元の金融緩和策」が世界の市場を驚かせ日本株が急上昇した。次に市場が期待したのは「異次元の成長戦略」だったが、一方で現実的な予想は選挙を配慮した生ぬるいものだったのでと思う。黒田氏には異次元の対応をやらせ、自らは安全策を取ったのだ。
言い換えれば、昨日公表した成長戦略から市場は安倍首相の既得権益に切り込む「本気度」を感じ取れなかったのではないかと思う。今、市場が見ているのは安倍首相の政策実行能力があるのかどうかだ。参院選後だとしても、リーダーシップを発揮して省庁と既得権益連合を説き伏せる実力があるか。腹をくくっているか。参院選を挟んだ前後の1か月が勝負どころだ。■