富士山が明日にも世界遺産にも登録されるそうだ。信仰・芸術・景観の観点で不変的な価値があると事前審査で高く評価されたので、18番目の日本の世界遺産になるのは間違いないと報じられた。私は17件も世界遺産があったのかと驚き、同時にニュースが伝える地元民の期待の声に不安を感じた。
テレビが伝えた期待の声は登録を機会に富士山の価値をより高めていこうというより、外国人観光客が増える(地元にお金を落としてくれる)というものだった。今でもシーズン中の富士山登山客は多すぎると感じる。極端に言うと登山口から頂上まで列が繋がっている。
今以上に観光客や登山客が増えたらゴミ・トイレから登山道の維持は極めて困難、よほど覚悟を決めてやらないと自然破壊が進むと恐れる。そんな心配もしないで観光客の落とすお金ばかり気にしているように私には聞えた。多分それ以外の声もあったはずだ。またもやテレビメディアの全く見識の無い報道だとがっかりした。
90年代半ばに米国ワシントン州で働いた時、国立公園が3つある自然に恵まれた州でシーズン中は毎週のようにどこかにハイキングに行った。入園料(確かパーミット)は3種類あり、1週間有効・年間有効・全米の国立公園に年間有効なのが夫々5ドル・15ドル・50ドル程度だった記憶がある。試しにネットで調べると現在は個人5ドル・車15ドル・年間30ドル等々細かく分かれていた。
入園料は登山口のステーションで購入するか、無人の販売機に小切手を放り込んでチケットを入手していた。この入園料はステーションを運営し、公園内の自然や登山道を維持する為に使われる。ステーションでは寄付も募っていたが、最初私は園料など不要だと思っていた。つまり寄付など思いも付かなかった。
寄付の他にレインジャーはボランティアで一時的に維持管理を支援する若者も沢山おり、荒れた登山道を整備してくれているのを何度も見かけた。若い女性のボランティアが多く、ヨモギ色のユニフォームがカッコ良かったのを記憶している。公園で見かけた人達は環境意識が高く、狭い山道で擦違うために脇に避けると、中年のオバサンに山草が傷むと叱られたことがある。
本題に戻ると、テレビが伝える富士山世界遺産登録のニュースには、こういった自然破壊を防ぐ為の努力が今後いかに必要になるかなどという観点は全く伺えなかった。全く見識にかけるというか情けないというか、寂しい限りだ。政府というより日本人の意識というべきかも知れない。
世界遺産登録を機会に入山料をとるのは賛成だが、更に一歩踏み込んで自然破壊から守る本格的な仕組を作ることを提案する。例えば、NZのように山に入る人や車の数の上限値を決めておきそれ以上は入れないようにするとか。そんな例は世界中に沢山あるからいくらでも参考に出来る。お金が落ちない地元の人は大反対するだろうが。■