アラブの春から3年たちCNNがチュニジアの最近の状況を報じる番組を見た。エジプトで民主的に選ばれたモルシ大統領がクーデターで倒され、軍の独裁政権が復活しそうな最近の状況を見て失望していた。アラブの春を経験した他の国々も上手くいってない。個人的には3年前に「中東ネット革命」(2011/2/16)を投稿した頃の楽観的な気分は冷めていた。
私はこれまで「アラブの春」は自壊したと思っていた。自壊の原因として革命後に」政権を取った、もしくは政権を争ったイスラム教徒の不寛容さがに最大の責任があると思っていた。イスラム教徒は民主主義国を作ることが出来ないかもしれないと。私は「イスラムの失敗」という厳しい見方をしていた。日本のマスコミにはそういった見方は見かけなかった。だが、ここにきてCNNと日経が失敗を明確に指摘する一方で、前向きになれそうな新たな動きを紹介する報道を見た。
それは、チュニジアがイスラム色を薄めた新憲法を圧倒的多数で先月26日に制定したというものだ。信仰の自由、男女同権、検閲の禁止等アラブで最も進歩的な憲法をほぼ全会一致で決定したという。それまでイスラム原理主義者の破壊行為・暗殺等で迷走が続いたが、エジプトの政変で政治勢力各派が危機感を共有し宗教色の薄い憲法を合意したという。
エジプトのムバラク大統領を打倒後、政権を握ったイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」が、宗教色の強い政権運営を強行すると危険だと私は最初から懸念した。だがモルシ大統領政権はムスリム同胞団権力独占の傾向を強めたため、革命勢力がバラバラになり経済悪化に不満を持った一般国民も加わって反政府運動が起こり軍が介入して振出しに戻った。私は日本マスコミの軍介入を悪と決めつける報道には違和感があった。
脇祐三氏はファイナンシャルタイムズの記事を引用してエジプトの分裂は「政治が勝者による総取りゲームのままであるからだ。長期的な安定と民主化の進展には、イデオロギーの異なる政治勢力が互いに譲り、広範な合意を形成する寛容さが必要になる」と指摘している(日本経済新聞2/10)。エジプトの失敗とチュニジアの成功(今日現在)は正にこの違いであり、他の「アラブの春」の国々はその中間にあると私は思う。
欧米ではチュニジアに対する称賛の声が広がったという。一方で日本のマスコミがこれまで詳細を分析して報じなかったのは失望した。私は一昨日まで知らなかった。いずれにしても、チュニジアの成功はイスラムに失望していた私にも個人的に勇気づけられるものだった。私的には「中東の春」の新段階「中東の春2.0」だ。アラブ諸国に新たな目標を与え、欧米先進国にとっても方向付けが出来たのではないだろうか。■