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2015年度予算案に安倍首相の弱さを見た

2015-01-18 18:36:11 | 国際・政治
来年度政府予算案が先週14日に閣議決定され、関係各方面からの一通りの評価が報じられた。予算案は過去最大の96.3兆円に増えたが、税収増や繰越金の効果で公債発行額(財政赤字)は36.9兆円に縮小した。一方、歳出面では社会保障費が1兆円増え政策に充てる費用の4割になり、年度末に1035兆円になる財政再建の道筋が見えない。大方の評価はこんなところだ。

マスコミ各社は視点を予算全体像を眺めて財政再建か、個別項目を見て社会保障か、どちらかに重点を置いた報道になっている。テレビは時間の制約があり全てを網羅できず、各社の重視する視点が報道に現れた。私が見たTBS報道は介護報酬改定を問題視する内容だった。だが、天文学的財政赤字の中で社会保障費が3.3%増加した問題より、介護報酬が220億円減った問題を取り上げるのは、全国ネット放送としては酷いバランス感覚だ。

朝日新聞は最初に国の財政状況をとってつけたように報じたが、「官邸主導の予算・財源不足が高齢者につけ」といった見出しで詳細に報じている。重点がどちらにあるかは明白だ。だが、誰が受益者で誰が負担するかの議論を欠き財政赤字が膨らんでいくのは空疎で無責任だ。ポピュリズムを体現した報道を受け政治は選挙を恐れ手を打たない、これが我が国の先送り体質だ。

分かり易い例をあげると、仏テロ事件で「殺人を許すような宗教は絶対ダメ」と言った後でなければ、「節度ある表現の自由」を議論してはならない。この順番を理解していない人をテレビ出演させ意見を言わせてはならない。今回の予算案に関する報道も全く同じ間違いを犯している。

一方で、マスコミのポピュリズム報道が大きな影響を持つとしても、政治をやるのは政治家であり彼等が結果責任を負う。現実はギリシャ並とは言わないが目先の人気取り政策が政治を動かしてきた側面がある。その点、私は安倍首相のやろうとしていることには殆ど賛成する。だが、それは口先だけのことでありその裏付けとなる予算案には反映されてないというのが私の印象だ。

介護を除き社会保障と税の一体改革は手が付けられず、働き方の改革と農政改革が揺らいでいる。利益団体の影響が出てきやすい参院選や統一地方選に配慮して、高齢者(年金・介護・医療)と労働・農協など岩盤規制改革が小手先に終わり先送りされそうだ。先の衆院選で安倍首相が増やした政治資産は活用されず萎んでいく気がする。

多くの識者が指摘するようにアベノミクスの第1の矢は狙った通り放たれたが、第2の矢は弱く距離不足、第3の矢は3年目に入ったというのに放たれてもない。市場関係者は口先だけの掛け声という見方が増えている。他の政治家より余程マシだが、安倍首相に対する信頼感はその位に劣化している。沖縄はさておき熊本知事選結果はショックだったはずで、利益団体の推薦が大きく影響する参院や支持勢力に偏りがある公明党が手強い抵抗勢力になる可能性は高い。

安倍首相は衆院選で国民がくれた政治資産を使わないまま賞味期限が切れてしまうのを私は恐れる。お手本にしているという岸元首相に加えて、ドイツのシュレーダー元首相を見習ってほしい。彼は国民に痛みを与える構造改革を徹底してやり尽し政権を追われた。だが、それが今日のドイツの一人勝ちに繋がった。メルケルの功績ではない。安倍首相は政権を失ってもやるべきことをやったと言われるか、名宰相になれるか正念場だ。■
コメント
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