このところ読書量が減ったと言い訳から始める「読書録」が続いた。今回読書をお勧めしたいのはずっと以前に読んだ本で、今になって再度興味が持てそうな本を加えて紹介します。というのも読書量が減って1か月1冊程度のペースでは、何冊か読んでその中で勧めたい本を紹介するなんて出来ないからだ。ということで、この3か月で読んだ本が4冊、20年前に読んだ2冊の本と関連し新しい映画を1本紹介します。
最初にお勧めしたいのは、ウーバー(Uber)やエアビーアンドビー(Airbnb)等の最近の新しい消費スタイルの世界的な動向を、その考え方と仕組みを多くの具体例をあげて紹介した「Share(シェア)」(ボッツマン 2016)だ。この手の全く新しいコンセプトのビジネスが生まれ大きく育つ米国の環境が、自国では絶対受け入れられそうもない我が国と比べ私にはとても興味深かった。
もう一冊は東日本大震災が発生直後の官邸の混乱の極みを描いた「官邸の100時間」(木村英昭 2012)だ。著者は朝日新聞記者だと言うが、本書は中立的な内容で同社の反原発の主張は感じない。官邸で何が起こっていたかを丹念に追った内容で、それだけに当時の我が国のトップリーダーがどう振る舞ったかを知る、ある意味一級の信頼に足る書だと思う。だからこそ、当時の原発関連の人材が力不足だったのはがっかりする。
(2.0+)2 無縁社会の正体 橘木俊昭 2011 PHP研究所 孤独死の増加は人口減の直接的原因で、そこから少子高齢化の要因を辿っていく。結婚しない草食系男子と出生率低下、人と人との結びつきである血縁・地縁・社縁が作る共同体が緩くなり、核となる家族の絆の低下等が無縁社会を生んだと説き、その対策として著者は「やや大きい政府」を勧める。最後の結論は当たり前すぎる感じがする、名案などないのかもしれない。
(2.5)新 SHARE(シェア) Rボッツマン/Rロジャース 2016 NHK出版 個人が買って所有し必要な時だけ使用する従来型消費から、使わない時あるルールに基づいて他人が利用する協働型消費への世界的な動きをその基本になる考え(他者への信頼)と仕組み(ITベース)を多くの例をあげて紹介する注目の書。同じような例を繰り返し説明されるのでいささかうんざりしたが、昨今のトレンドを知る価値ある本だ。
(2.5-)2 官邸の100時間 木村英昭 2012 岩波書店 福島原発が津波で冷却能力が失わた危機の中、官邸に情報を上げ意思決定を支える官僚や東電が機能せず、菅首相はじめ国家権力の中枢が混乱して的確な判断が出来ない様子を生々しく描いている。当時マスコミが報じたニュースでは見えてこなかった絵が浮かんできた。
(0.5)2 原発ホワイトアウト 若杉冽 2013 講談社 てっきり福島原発事故に関わるNFだと誤解して読み始めたが、我が国の政治風土からありそうな話に仕上げた架空の物語で私には読むに値しなかった。
今回はAmazon.comのプライム会員ならタダで見られる映画「Elevest」を見た。一つの事象を反対の立場から書いた2冊の本を読んで、その後に作られたこの映画を鑑賞されることを勧めたい。ただし、2冊の本は英語で読んだので2冊とも邦訳本があるのか分からない。
1996年のエベレスト大量遭難を描いた映画「Elevest」を見た。NZの著名な登山家が企画した商業登山が嵐に巻き込まれ遭難した顛末を淡々と描いた映画だ。これには思い出がある。というのは隊員としてベストセラー作家Jクラカワが参加し、生還した彼が書いた「Into Thin Air」(1996 Anchor Books)が評判になったからだ。彼の出世作「Into the Wild」を読んで感銘し、他の本も読みたくなりこの本を見つけて即購入した。
ところが当時シアトルに住んでいた私が飛行機内で読んでいると、隣の席の男がクラカワとは違うストーリの本が出てる、是非読めと勧めてくれた。機中で知らない人に本を勧められたのは初めてで、出張から戻ると直ぐに本屋に行き手に入れた。プロ登山家アナトリ・ブークリフ著の「The Climb」(1997 ST.MARTIN'S)だった。遭難事故で救助を放棄したとアナトリを非難したクラカワに反論した書で、プロがアマチアの無知を指摘するような対照的な内容だった。
映画はこの二つの本に描かれた具体的な出来事が出て来るが、全体としては淡々と事実を追ってストーリが進み誰も直接的に非難しないので、より事実に沿った内容のように私には感じる。映画はクラカワのやや情緒的な描き方がなくなり、彼自身が無能なアマチア登山家のように描かれている。逆説的に言うと、この2冊を読まずに映画を見ると、多分面白くないのではないだろうか。■
最初にお勧めしたいのは、ウーバー(Uber)やエアビーアンドビー(Airbnb)等の最近の新しい消費スタイルの世界的な動向を、その考え方と仕組みを多くの具体例をあげて紹介した「Share(シェア)」(ボッツマン 2016)だ。この手の全く新しいコンセプトのビジネスが生まれ大きく育つ米国の環境が、自国では絶対受け入れられそうもない我が国と比べ私にはとても興味深かった。
もう一冊は東日本大震災が発生直後の官邸の混乱の極みを描いた「官邸の100時間」(木村英昭 2012)だ。著者は朝日新聞記者だと言うが、本書は中立的な内容で同社の反原発の主張は感じない。官邸で何が起こっていたかを丹念に追った内容で、それだけに当時の我が国のトップリーダーがどう振る舞ったかを知る、ある意味一級の信頼に足る書だと思う。だからこそ、当時の原発関連の人材が力不足だったのはがっかりする。
(2.0+)2 無縁社会の正体 橘木俊昭 2011 PHP研究所 孤独死の増加は人口減の直接的原因で、そこから少子高齢化の要因を辿っていく。結婚しない草食系男子と出生率低下、人と人との結びつきである血縁・地縁・社縁が作る共同体が緩くなり、核となる家族の絆の低下等が無縁社会を生んだと説き、その対策として著者は「やや大きい政府」を勧める。最後の結論は当たり前すぎる感じがする、名案などないのかもしれない。
(2.5)新 SHARE(シェア) Rボッツマン/Rロジャース 2016 NHK出版 個人が買って所有し必要な時だけ使用する従来型消費から、使わない時あるルールに基づいて他人が利用する協働型消費への世界的な動きをその基本になる考え(他者への信頼)と仕組み(ITベース)を多くの例をあげて紹介する注目の書。同じような例を繰り返し説明されるのでいささかうんざりしたが、昨今のトレンドを知る価値ある本だ。
(2.5-)2 官邸の100時間 木村英昭 2012 岩波書店 福島原発が津波で冷却能力が失わた危機の中、官邸に情報を上げ意思決定を支える官僚や東電が機能せず、菅首相はじめ国家権力の中枢が混乱して的確な判断が出来ない様子を生々しく描いている。当時マスコミが報じたニュースでは見えてこなかった絵が浮かんできた。
(0.5)2 原発ホワイトアウト 若杉冽 2013 講談社 てっきり福島原発事故に関わるNFだと誤解して読み始めたが、我が国の政治風土からありそうな話に仕上げた架空の物語で私には読むに値しなかった。
今回はAmazon.comのプライム会員ならタダで見られる映画「Elevest」を見た。一つの事象を反対の立場から書いた2冊の本を読んで、その後に作られたこの映画を鑑賞されることを勧めたい。ただし、2冊の本は英語で読んだので2冊とも邦訳本があるのか分からない。
1996年のエベレスト大量遭難を描いた映画「Elevest」を見た。NZの著名な登山家が企画した商業登山が嵐に巻き込まれ遭難した顛末を淡々と描いた映画だ。これには思い出がある。というのは隊員としてベストセラー作家Jクラカワが参加し、生還した彼が書いた「Into Thin Air」(1996 Anchor Books)が評判になったからだ。彼の出世作「Into the Wild」を読んで感銘し、他の本も読みたくなりこの本を見つけて即購入した。
ところが当時シアトルに住んでいた私が飛行機内で読んでいると、隣の席の男がクラカワとは違うストーリの本が出てる、是非読めと勧めてくれた。機中で知らない人に本を勧められたのは初めてで、出張から戻ると直ぐに本屋に行き手に入れた。プロ登山家アナトリ・ブークリフ著の「The Climb」(1997 ST.MARTIN'S)だった。遭難事故で救助を放棄したとアナトリを非難したクラカワに反論した書で、プロがアマチアの無知を指摘するような対照的な内容だった。
映画はこの二つの本に描かれた具体的な出来事が出て来るが、全体としては淡々と事実を追ってストーリが進み誰も直接的に非難しないので、より事実に沿った内容のように私には感じる。映画はクラカワのやや情緒的な描き方がなくなり、彼自身が無能なアマチア登山家のように描かれている。逆説的に言うと、この2冊を読まずに映画を見ると、多分面白くないのではないだろうか。■