かぶれの世界(新)

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民主主義・資本主義の危機(前)

2016-09-03 15:25:21 | 国際・政治
米大統領選や英国のEU離脱、中ロに続きトルコや東欧政権の強権化、イスラム過激派のテロ多発など昨年からの世界情勢と識者の分析を見聞きして、私なりに考えを纏めてみたので紹介したい。世界は容易ならぬ方向に向かっている、大袈裟なタイトルだが「民主主義・資本主義は危機に向かっている」というのが今の私の思いだ。先ずは現状認識について。

暗転したアラブの春
5年前にチュニジアから始まったアラブの春がアフリカの他の国に波及し始めた時、私は遂に民主主義がここまで来たという感慨を持った。ITによってアフリカの人達は力を与えられ、ようやく地球上のあらゆる国に民主主義が広まっていく兆しを感じた。だが、それは見事に打ち破られた、淡い希望でしかなかった。

今日、アラブ世界は寧ろ暴力によって支配される国が増えた。中国・ロシアは言論が制限された独裁政治下にあり、トルコや東欧の権力者に中ロを追う姿勢が見られる。一方で、かつて民主主義を世界に広める群を抜く力を持っていた米欧が相対的に力を失った。経済的力の前に民主的主義主張は力を失ったように見える。

グローバリゼーションの鬼子
冷戦を戦ったロシアは米国の圧倒的経済力に無残に敗れた。ソ連は解体され東欧諸国は雪崩を打ってEU民主主義に加盟した。今となれば、それは民主主義の勝利というより、資本主義の勝利だったと私は感じる。だが、その後政治的独裁を保ちながら資本主義のいいとこ取りをした中国の国家資本主義が、リーマンショック後回復に手間取る民主主義・資本主義国を追い越す勢いで急成長し事情は変わった。

この変化のベースとなったのはグローバリゼーションだったと思う。国内では夫々に法規制があり法の下に物事は動く。しかし国際間では基本的には各国の振る舞いを規定する法はない。国家資本主義は国内活動とグローバリゼーション下で国際取引を切り分けて、極めて都合の良い仕組みで実行できた。

世界は理想より経済
今、私の目に映るのは国益という名で民主主義の理想より経済を優先する方向に世界の多くの国は舵を切ったのように見える(舵は元々経済優先に向いていたかもしれない)。或いはその綱引きがかつての冷戦とは違う形で起こっていると感じる。各国メディアも内外で論理が異なるのを見かけるのは興味深い。

そのよい例が、中国が主導するAIIBにビジネス機会を求め英国が加盟後EU諸国が雪崩を打って参加した。昨日米国と密接な関係にあるカナダまで参加したと伝えられた。英国は半年前からチベットなど中国の人権問題に全く触れなくなった。何が優先度が高いか明らかである。中国が札びらを切れば新興国どころか英国も尻尾を振った。彼等はもう人権だとか言論の自由など恥ずかしくて言えなくなるのを承知してやった。

より深刻な米国
最大の問題は米大統領選で明らかになった様に、民主主義国の旗手である米国民が民主主義・資本主義に対する疑いを持ち始めた事にあると思う。英国はありえても米国は違うと私は思っていた。しかし、大統領選で示された民意は資本主義(ウォールストリート)に対する決定的な不信だ。それがねじ曲がって奇妙奇天烈な主張を繰り返すトランプ氏を大統領候補にした。従来ならあり得ない事だった。

経営者は国際間のビジネス・ネットワークで知恵を絞り利益を得るが、税金になって国民には戻らない。その手法が何年にもわたり磨かれて来た。最近話題のアップルの国際間の節税(私に言わせれば脱税)は、明確な国際規制はない状況で起こった。企業レベルで同じことをやったと言える。企業は国際間取引で税金を減らす一方で、国民は税金を国内規則通りに払うしか手段を持たない。国民が怒るのも無理のないことだ。

機能しなくなった資本主義
不満のタネは資本主義が国民に富をもたらさなくなった、機能しなくなったからだ。そうなると政権周辺に巨額の富が集まる中ロとの違いは何だということになる。90年代に私が米国に赴任した頃は既にアウトソーシングで米国の労働者は職を失う一方で、会社は利益を得る経営判断が始まっていた。そのトレンドは急激に進化した。決定的だったのはリーマンショック時に破産寸前の会社を税金で救済した一方で、多くの労働者は職を失った。

オバマ政権になり雇用は改善したがこの仕組みは改善されてない。変わってないのだ。それが私に言わせればウォールストリート寄りのヒラリーが苦戦する唯一の原因だ。英国を含むEUでも同じ傾向にある。今日の日本経済新聞では日本の労働分配率は66%の低水準に低下した一方、企業の内部留保は4年連続で過去最高の377兆円になったと報じた。各国で資本主義が正しく機能していないと疑われているのだ。■
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