かぶれの世界(新)

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二重基準でも筋を通せ

2021-05-02 16:30:51 | 国際・政治
バイデン大統領が就任100日を迎え、就任後初の施政方針演説を行ったと大々的に報じられた。価値観を同じくする同盟国と連携して専制主義国に対抗し、国際的な課題に取り組む姿勢を明確に打ち出した。主要メディアは100日間の大統領は概ね国内外で支持を受けていると報じた。

私の目にもトランプ大統領時代とは景色が変わったように見える。だが、2022年の中間選挙は必ずしも民主党が優勢かというとそうでもないという。米国の人口増が停滞する中で、民主党票田の加州等から南部テキサス州等に人口移動が起こり、共和党が優勢な見通しが出ているという。

バイデン大統領のコロナ対策などを支持する声が高いが、一方共和党の支持は殆ど減少してないらしい。トランプ大統領支持者の主張するハチャメチャな根拠だけではない。「大きな政府」に対する反発に加え、日経(4/30)オピニオン欄の記事を見て米国分断の深刻さを実感させられた。

例によって私なりに記事を要約する。英ファイナンシャルタイムズ(FT)ガネシュ記者はフロリダ州知事の主張を引用して、最近の大企業がジョージア州等で有権者の投票権を制限する動きを非難したが、一方で選挙をもっと制限する中国やキューバには何も言わないと大企業の二重基準を痛烈に攻撃した。

更に企業の二重基準の典型として、経営者がリベラルな声を上げる対象は人種差別と選挙などの市民権に関するものだけで、それが業績に関わる税金や賃金・労組の権利となると黙して語らずと指摘した。あの衝撃的な連邦議会占拠事件後も共和党への企業献金は減ってないのだそうだ。

共和党と米大企業は互いに対立しているように見せた方が双方に都合が良い、大企業は倫理を重視する消費者の支持を得たいだけだという。バイデン大統領は企業と社会の価値観を縮めた新時代を築いたのではない、企業は時の政権の倫理観にすり寄っただけで歴史が変わった訳ではない、と。

この記事は私には衝撃的だった。バイデン大統領はトランプ時代に傾いた民主主義に基づく米国の力と世界の信頼を回復させる、「米国の復元力」の表れと評価していた私には、記者が事実を示しながら米企業の倫理重視は一時的と言われ、しかも反論が難しい説得力のある主張に困惑した。

正しいと信じて努力する行動でも、こんなに皮肉っぽく反対する論理を単純に否定できない。それが現実である可能性は十分あると思う。似たような事例は幾らでもある。例えば巨大IT企業の個人情報の独占的利用と税金逃れ等の規制は必要だが、厳しい規制が現実に施行されると最後に生き残るのは優秀なスタッフを抱えたGAFAのみ、といった狙いとは逆の結果になる恐れが十分ある。

だが、それでも私は新時代が必要とする新しい企業倫理を重視して動くべきだと信じる。ガネシュ記者の指摘するような企業とか社会になれば、いつか世界は堕落して人類は滅亡の道を辿る。価値観を軽視してはいけない。人は間違う、歴史上間違った政治家を選ぶことも何度もあった。

上記の記事は、ジョージア州等の共和党が黒人などの投票権を制限する州法を成立させたのに対し、大企業が批判の声を上げ他企業も追随する動きに対して冷や水をかけるものだった。だが、米国に限ったものではない。中国やミャンマーなどの人権侵害を避けるために日本や世界企業は動き、地球温暖化についても先進的な動きが始まった。株主の声を無視できないのだ。

人類は何度も転覆しそうになり戦争や大恐慌を経験して、大きな犠牲を払いながら復元して新しい時代を生き抜いてきた。私の70年余の直接目にし学び経験した人生に近いこの100年は、何度となく間違いながら最後に米国の復元力が人類を助けたと思う。次の100年はそれほど簡単ではないが、上記FT記者のような英国的(?)な皮肉な見方が現実にならないよう祈りたい。■
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