失業率悪化も株価が上昇、大丈夫?
米国の10月の失業率は市場予測を上回る10.2%になったと昨夜ニュース速報が流れた。26年ぶりの高水準という。失業者数は1570万人にもなる深刻な状況である。
予測を超える失業率の悪化のため、株式市場は大幅な落ち込みを予想したが、今朝起きてネットを除くとダウ平均は17ドル余り上昇し10,000ドルを維持したのを見て、軽い驚きを感じた。
株価は一般に半年先の業績を予測して売買される、景気回復を示唆する「先行指数」である。長短金利差も同じような傾向を示すといわれている。
一方、実際に景気回復し需要が増えても、企業は残業等で対応する。需要増が一時的なものではなく持続性があると判断して、初めて社員の採用を始めるので景気の「遅行指数」となる。
従って、景気回復の局面では、GDP成長率のプラスが株価を上昇させる一方で、失業率が悪化する状況は寧ろ論理的であると言える。では、半年待てば雇用は回復し始めるだろうか。
雇用回復が大幅に遅れる3つの理由
私は半年待っても雇用は回復しない可能性が高いと予測する。待っても、待っても、高失業率が続く恐れがある。その理由は私が今まで投稿してきた記事のように、3つの要因がある。
第一に、世界同時不況によって、日欧米の大多数はエコ志向を含め合理的な消費にパラダイム変換した。その結果生縮小した市場は、不景気というより新たな「普通の市場」で持続性のあるものである。つまり、売り上げ高だけを見ると需要は中々増えない。
第二に、企業は雇用や設備投資を見直して操業コスト(燃費)を減らし、この縮小した「普通の景気」にマッチした供給力に調整した。言い換えると、今の状況で利益が出る体質に転換した。つまり、雇用は悪化したままで、企業は利益が出始めた。
第三に、グローバリゼーションによって市場がこれまでに無く一体化したことである。合理的な消費者の新たな需要は新興国で賄われ、国内の雇用環境を悪化させた。新世代商品は、国境を越え世界の最適地で生産、最適な流通を経て、棚に並ぶ。先進国の労働力を使う必要はない。
各国固有の事情
米企業は他国に比べ思い切った人員削減をする傾向が強く、今回は特にその傾向が出たとビジネスウィーク(10/25)は伝えている。結果として雇用不安が不況をより深刻化させ、米国企業の収益性改善を早めたと分析されている。
日本企業も同様に素早く設備投資を凍結し、雇用を見直した。日米企業の素早い動きを私は「過剰適応」とよんだ。それは日本のメディアのポピュリズム的な報道と、新政権が報道を利用した政権運営をし、結果として日本企業の適応を抑制すると予測したからだ。
総合すると、先行指数と遅行指数は今まで以上に乖離して関連性を失う、つまり雇用回復が遅々として進まないと予測される。その中でも、日本の景気回復は米国に輪をかけて遅れそうだ。景気及び雇用回復の遅れは、年が明けると新政権の危機になる恐れを否定できない。■
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