イエス、少なくとも報道では。日本では犠牲をになった邦人家族や一部の人達を除き、9.11は米国や一部欧州の問題のように報じられている。新聞は米国での追悼式と、アフガンやイラクの治安悪化状況を伝え、オバマ大統領のアフガン重視戦略が早くも試練に立たされていると報じている。
事実だろうが、日本には関係の無い他人事という報道姿勢が見え見えだ。しかし、9.11では多くの日本人が犠牲になり、彼らを命懸けで救助しようとしたニューヨーク市の消防員や警察官の中にも、数百人もの犠牲者が出たことを忘れていいのだろうか。何故、これほど冷淡でいられるのか。
一方、北朝鮮に拉致された日本人の救助については、拉致家族が米国大統領と面会し支援を要請した。独善的と評判が良くなかった「ならず者国家」の指定をいざ北朝鮮から外す動きがあると、拉致事件解決に後退させると米国の指定解除に反対し、その決定の不純な背景を解説する。
「ならず者国家」は9.11と密接に結びついているのに、何故9.11を他人事で済ませられるのか分からない。ここ数日の報道を見た限りでは、NHKが9.11後8周年の状況を伝える特番(らしきもの)を組んだが、気がついた限り民放は9.11追悼を普通のニュース枠で手短に報じ関連の映画を2本流しただけだ。実は、その映画を見ながら、今、この記事を書いている。
9.11は日本人犠牲者が多数出たにも関らずそれも報じないのは、海外オンチの日本のメディアだとしても腑に落ちない。9.11後、ブッシュ大統領が強引に進めたアフガン・イラク戦争と、自衛隊出動やインド洋給油などで、政治問題で立場があやふやになるのを嫌がってのことかもしれない。
総選挙で大勝した鳩山新政権は、9.11は日本も密接に関係する深刻な世界的問題で、その解決のため我国も当事者として積極的に取り組まなければならない、日本はそういう立場にあることあることを肝に銘じて欲しい。必ずしも現政権の決定通りにする必要はないが、世界が理解できるシナリオは必要だ。
考え方や対応に差があってもいいが、9.11の惨劇について米国民と共有するものが無くて、拉致事件やテポドンで支援を期待するのは虫がいいと思われても仕方が無い。現在までの民主党の発言にはブレは感じられない。だが、連立政権維持は手段であって、日本にとって何を優先すべきか、今後とも勘違いすることの無い様祈りたい。
最も懸念するのはもと来た道を辿ることだ。9.11報道(しないこと)が世論に影響するとすれば、結果として戦後長らく続いた安全保障政策と世論のズレが外交・政策の不透明性を助長したと同じことが起こる可能性があると懸念する。民主党政権が現実に直面した時何が起こるか。だが、恐れるべきではない、民度は当時に比べ格段に成熟している、はずだ。■