一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

余市→小樽→札幌市中央区北三条

2009-09-26 23:48:45 | 旅行記・北海道編
23日はススキノのビジネスホテルに投宿し、翌24日(木)はホテルで優雅に朝食を摂り、札幌駅前のネットカフェに入ってブログを更新。その後10時44分札幌発の上り函館本線に乗り、小樽で乗り換え、余市で下車した。
下りの函館本線は長万部から山中を走るが、その堂々たる路線名のとおり、かつては優等列車(特急)も走る幹線だった。しかし昭和61年のダイヤ改正で特急列車が廃止され、長万部-小樽間は、一ローカル線に転落した。現在は1両の鈍行列車が数本走るだけの、さびしい路線となっている。
それはともかく、いくら旅行といっても、毎日観光ばかりでは飽きがくる。今日はちょっと趣を変え、余市駅前にあるニッカウヰスキーで、ウイスキーの勉強をしようというわけである。
ニッカウヰスキー発祥の地である北海道工場余市蒸溜所は、無料で工場見学ができ、1日に数回、案内係による工場案内もある。
受付で名前を記入し、敷地内をぶらぶら歩く。石造りの建物と、木々の緑が見事に調和している。遠くの山々が碧い。あたりは静寂が支配し、空気がおいしい。
余市原酒直売所に入ると、ロマンスグレーの紳士(スタッフ)がいる。カウンターの前には5年物から25年物までのウイスキーが置かれてあり、香りの違いを体験することができる。20年物→10年物→5年物と香りを嗅ぐと違いが分かりにくいが、5年物から20年物を較べてみると、その違いが明瞭に分かる。やはり年月を重ねたほうが、香りがまろやかだ。
紳士氏の説明を拝聴したあと、売店に入って唸っていると、もう午後1時が近い。前述したとおり、ニッカウヰスキーでは、無料で工場案内をしてくれるが、午後は1時から開始なのである。
なにごとにおいても「無料」という言葉はトクした気分になる魔力があって、酒を嗜まない私も、ちょっと聞いてみようかという気になる。
チェック柄のジャケットに黒のスカート、つば広の黒い帽子という、バスガイドさんのような格好の女性スタッフが姿を見せる。美人だ。このあと、ベテランのオッサンが工場案内をするんだろうと思いきや、その女性がそのまま案内をするという。これはいいぞと、心の中で相好を崩す。
しかしこの美人、どこかで見たような…小学生のとき転校してきた女の子に、目が似ている。だが決め手には欠ける。
午後一番手ということもあって、見学者は15人ほどいた。いよいよ「大人の社会科見学」の始まりである。ガイドさんは、大きく明瞭な声で、私にも分かるように易しく説明をしてくれる。その合間ににこっと笑う。なんてかわいいんだろう。……あっ、安めぐみだ!! あの笑顔は、タレントの安めぐみちゃんそっくりである。そうか、あのモヤモヤの正体は、彼女だったのか…。そう考えてみると、骨格が似ているのか、声も似ている気がする。
「何か質問はありますか?」と言ってくれるが、聞く質問がないのがつらい。…あっ、矢口真理だ!! この角度から見ると、元モー娘。の矢口真理ちゃんにも似ている。とにかく彼女は、かわいい、ということだ。
40分ほどの工場見学が終わると、ニッカ会館の2階で、ウイスキーの試飲をして、終わりとなる。クルマを運転する人や下戸の人はジュースも用意されているが、私もウイスキーをチョイスする。
10年物のウイスキーを口に含む。香りが高く、優雅な気持ちになる。先ほどのガイドさんが、見学者のひとりひとりに、「ありがとうございます」と御礼を言ってまわっている。まずい…こちらが御礼を言いたいくらいなのに、安めぐみちゃんにそう言われたら、私は飲みもしないウイスキーを買ってしまいそうである。
こそこそとニッカ会館を出る。そのまま工場を出ようとしたが、ピタッと足が止まる。安めぐみちゃんの笑顔が脳裏に浮かぶ。
このまま工場を出ていいのか? あんなに丁寧に説明をしてくれたのに。それでいいのか?
「チッ、バカだな…」
私はそうつぶやくと、踵を返し、売店へ向かうのだった。

「これでよかったんだ。これでよかったんだ…」
とひとりごち、余市駅へ戻る。14時58分の下り列車までまだ時間があるので、駅構内の売店に入る。
あっ…!! なんと、190mlの瓶コカコーラの自動販売機があるではないか!!
なんだこれ、いま北海道では、瓶コーラが普及しているのか?? 掲げられているコピーも、「懐かしい瓶ビールの味をお楽しみください」とか書いてある。
また私は船戸陽子女流二段を思い出し、まるで儀式のように、瓶コーラを買う。しかしさすがに今度はドキドキせず、コーラを飲みほした。
小樽に行き、市内をぶらぶら歩く。寿司屋通り沿いに銭湯(温泉)があったので、迷わず暖簾をくぐる。今日は札幌のネットカフェで最後の夜を過ごす予定だ。ならばのんびりと風呂を満喫するチャンスは、もうここしかない。
日本人のほとんどが働いているであろう平日に入る温泉は、休日のそれより優越感に浸れ、大いに気分がよい。
風呂から上がり番台横に出ると、ここでもいつもの儀式がある。
牛乳を買うのだ。
「白牛乳 腰に手を当て イッキ飲み」
とはよく言ったものだ。これをやらないと、銭湯に入った気分になれない。

北一硝子や小樽運河を瞥見して、札幌に行く。
ネットカフェのナイトパックは午後7時から翌朝7時までの中の最長9時間だから、店にいる時間は午後10時~午前7時にしたい。
それまでどうやって時間をつぶすか。おいしいコーヒーとケーキを味わえる喫茶店を開拓したいが、札幌はビジネス街で、なかなかこれといった雰囲気の店がない。
あてもなく夜のサッポロを歩いていると、時計台が見えてくる。その対角に聳えるビルは北海道新聞社だ。壁に朝刊が張り出されており、スポーツ欄は巨人の優勝を伝えている。将棋欄は今日から王位戦第4局が掲載されている。ベテラン原田史郎氏の観戦記だ。
時計台対面の見晴台を兼ねた喫茶店は、女性向けで、入る気が起きない。そのままぶらぶらしていると、「将棋サロン&カフェ みずなら」の案内板が目に入る。そこの2階に居を構えているらしい。もう夜の8時半だから店が開いているとは思えぬが、ビルのドアが開いたので、上ってみる。
と、廊下の奥がこうこうと光っており、覗いてみると、白髪の紳士が
「いらっしゃい」
と言った。
いっしょにいた女性が、すぐに出ていく。
「ここは…」
「はい、将棋道場です」
私はフラッと入ったのだが、客と思われたようだ。私が東京から来て旅行中だと言うと、それは分かるとして、なぜ旅行中に将棋を指すのか、なぜこの時間に入って来たのか、いまひとつ合点がいかぬようだった。
しかし私は旅先で将棋を指すことはよくある。ただ、道場に入ったのは初めてである。それにしても、北海道最後の夜で、思わぬ展開になった。石垣島では「どうぶつしょうぎ」を指し、札幌ではとうとう「本将棋」を指す。我ながら将棋バカだと思う。
席料を払って、とりあえず1局指すことにする。棋力を聞かれたので、
「アマ三段ぐらいだと思います」
とミエを張っておく。
将棋のほうは、アマ四段・紳士氏が当然ながら後手番になり、紳士氏のゴキゲン中飛車に対して、私の採った玉の囲いが中途半端で、存分に捌かれて完敗した。
「将棋サロン&カフェ みずなら」は、昨年10月25日に開席。白髪の紳士氏は田中美昭さんという普及指導員で、ここの席主である。食事の営業もしており、ランチは500円で提供している。もちろん食事だけの利用も可能だ。夜は11時まで開けているという。北海道の将棋熱は高い。しかし
「いまの時期、将棋道場を開くのは冒険だったでしょう」
と言うと、
「みんなからそう言われましたよ」
と笑う。中原誠16世名人の、40代のころに風貌がよく似ている。
開席から9ヵ月になるが、会員(登録者)は340名に上ったという。ただ、一度訪れたきりの棋客もおり、今後いかにリピーターを増やすかが課題だという。ちなみに道場名かつ店名の「みずなら」とは、「ドングリの木」のことらしい。軽食喫茶の机も、「みずなら」を使っているという。
時間があるので、もう1局指す。今度も当然、私の先手番。4手目、田中氏が☖5四歩と指しかけて☖8四歩と指したので、横歩取り対中座飛車になった。
この将棋は、田中氏の序盤での一失を咎めた私が快勝した。いま思うと、1局目で私があまりにも不甲斐ない負け方をしたので、緩めてくれたのかもしれない。
夜もだいぶ更けたが、客がくる。カレーライスのセットを食している。彼-Y氏はこの店の常連で、近くに勤務先があることから昼食はここで摂り、独り暮らしなので夕食もここで摂るという。
将棋は高校のスポーツ部に在籍していたときから指してはいたが、最近になって将棋熱に目覚めたという。
私とも1局(私の二枚落ち)指したが、序盤のスキをY氏が咎めきれず、そのまま私の勝勢となった。しかしそこからのY氏の粘りがすごく、最後は私が力づくで詰ましたという将棋だった。
午後11時すぎ。私は温かい気持ちになって、道場を出、駅前のネットカフェに向かった。しかしこの中途半端な時間が、翌日の私を疲弊させることになった。
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