いまさらだが、14日に行われた、第65期王位戦挑戦者決定リーグの最終戦を振り返ってみよう。
まず、4回戦までの星と、最終戦の相手を記してみる。
<紅組>
佐々木大地七段(3勝1敗)VS佐藤天彦九段(2勝2敗)
豊島将之九段(1勝3敗)VS石井健太郎七段(0勝4敗)
斎藤慎太郎八段(3勝1敗)VS藤本渚五段(3勝1敗)
<白組>
羽生善治九段(3勝1敗)VS飯島栄治八段(0勝4敗)
渡辺明九段(3勝1敗)VS木村一基九段(3勝1敗)
森内俊之九段(2勝2敗)VS西川和宏六段(1勝3敗)
それぞれ勝敗予想をすると、紅組の佐々木VS佐藤戦は、いい勝負。
豊島VS石井戦は、豊島九段が最近元気がないので、石井七段が勝つと思う。
斎藤VS藤本戦もいい勝負。ただ、今回は斎藤VS藤本の勝者が、そのまま挑戦者決定戦を指すことになる気がした。
白組は、羽生VS飯島戦は、羽生九段が勝つだろう。
渡辺VS木村戦はいい勝負。
森内VS西川戦は、森内九段が勝つだろう。
となれば羽生九段はプレーオフを指さなければならないが、渡辺九段と木村九段、どちらと指すにしても再び勝つと思った。
当日はABEMAで羽生VS飯島戦があるとの告知を見て、楽しみにしていた。
ところが対局開始時にABEMAを見ると、斎藤VS藤本戦をやっていた。??
……上述の通り、斎藤VS藤本戦は3勝同士の一戦だから注目度は高い。 しかし、マニア垂涎のカードは羽生VS飯島戦である。羽生九段のプレーオフ進出なるかという注目度はもちろん、ここまで全敗の飯島八段が、レジェンド相手にどんな将棋を指すか、興味があった。
ところがABEMAは、それを直前で?変更した。ABEMAはまだ、将棋ファンの観戦心理を心得てないなと思う。
もっとも主催者は、各カードを無料中継してくれていた。私は連盟の中継アプリに加入していないので、この措置はうれしかった。
さて6局の戦型をざっと書くと、紅組の佐々木VS佐藤戦は、佐藤九段の三間飛車に、佐々木七段の右四間飛車。豊島VS石井戦は、角換わり相早繰り銀。斎藤VS藤本戦は、矢倉VS雁木。
白組に移り、羽生VS飯島戦は、羽生九段の横歩取り。渡辺VS木村戦は急戦矢倉。森内VS西川戦は、西川六段の三間飛車に、森内九段が居飛車穴熊を採った。
将棋はどれもいい勝負だったが、やはりABEMA中継がある斎藤VS藤本戦を見てしまう。藤本五段は雁木なのに玉が5八で、先の竜王戦1組・VS佐藤康光九段戦のような布陣だ。
対して斎藤八段は菊水矢倉に組み、攻めと守りがキッチリしている。昨今は角を換わらなくても玉をガッチリ囲わないのがトレンドのようだが、昭和生まれの私としては、玉はしっかり囲ってほしいわけである。だから今回は、斎藤八段を応援することになった。
金銀3枚の守りに、攻めは飛角銀桂。どんなにAIが進化しようとも、この摂理は永遠に変わらないのではと思う。
藤本五段は9筋から端攻めに出たが、斎藤八段がうまくいなして優勢。斎藤八段は名人戦2年連続挑戦の記録を持っている。昨年度はそのA級から降級してしまったが、本局はじっくりと落ち着いていて、そのころの強さが戻った気がした。
佐々木VS佐藤戦は、対抗形らしい攻め合い。とうていAIの研究の及ぶところではなく、やはり将棋はこうでなくては面白くない。
それにしても佐藤九段は、振り飛車に転じてから将棋に元気が出てきたように思う(気のせい)。
豊島VS石井戦は、石井七段が単騎の桂跳ねをしたが、これに豊島九段が桂を生け捕るべく銀を引いたのが序盤の勝負手。石井七段は攻め続けるよりなくなったが、このシャニムニ攻めが存外うるさく、そのまま攻め倒しそうな勢いである。
白組に目を転じると、羽生VS飯島戦は、羽生九段が順調にリードを拡げている感じ。
渡辺VS木村戦は、双方の銀が前線に進出して、駅馬車定跡を思い起こさせる。いまは後手の渡辺九段が先攻して、指しやすいか。
森内VS西川戦は、森内九段が盤石の指し回しで、優勢。全盛時の強さが戻ってきたかのようだ。
6局ともすべて面白く、河口俊彦八段が対局日誌の取材をしていたら、どんな切り口にしただろう。いまは河口八段の代わりになる人がいない。残念である。
王位戦は持ち時間が4時間なので、そろそろ決着がつく。
19時10分、まず石井七段が勝ち名乗り。攻めが綺麗に決まったあと守りに入る緩急自在の指し回しで、豊島九段が戦意を喪失して投了した。豊島九段、名人戦第4局を前に、光明が見えない。
その2分後、佐藤九段が勝ち。これで紅組は、斎藤VS藤本の勝者が挑戦者決定戦に進出することになった。
19時21分、渡辺九段が勝ち名乗り。終始うまく攻めて、快勝だった。
その11分後、森内九段勝ち。完璧な指し回しで、西川六段の攻めを切らした。
さらにその2分後、藤本五段が投了。斎藤八段の紅組優勝が決まった。
さあ、残るは羽生VS飯島戦である。形勢は相変わらず羽生九段がよく、現在はザッと銀得である。しかし飯島八段も馬を2枚作って粘っている。
羽生九段、飛を捨てて飯島玉に必至を掛けた。でもなんだか無理やり寄せに行ったようで、もう少し安全な寄せ方はなかったのかと思う。いやむろん、これで羽生玉が詰まなければよい。だけど、本当に詰まないのか?
飯島八段、天王山から飛車打ちの王手。飛車は敵陣から打つものと思っていたから、驚いた。
だがこの飛車を取れば詰むようで、羽生九段は玉を逃げる。と、飯島八段はさらに金捨て。20時33分、ここで羽生九段が投了したから驚いた。即詰みなのだ。
すなわち、この金は玉で取るよりないが、続いて竜で王手されたとき、合駒が悪い。持駒の金、桂、どれを合いしても、綺麗に詰んでしまう。それには2七の歩が一役買っていて、まさかこの歩が詰みに働いてくるとは思わなんだ。まさに勝ち将棋鬼のごとしである。
いやはや、飯島八段、劣勢の将棋を逆転勝ち。これで羽生九段との対戦成績は3勝3敗になったそうで、とんだハブキラーがいたものだ。飯島八段は、強いんだか弱いんだか、分からない。
ということで、最終的な結果は
<紅組>
優勝=斎藤慎太郎八段 4勝1敗
残留=佐々木大地七段 3勝2敗
佐藤天彦九段 3勝2敗
藤本渚五段 3勝2敗
豊島将之九段 1勝4敗
石井健太郎七段 1勝4敗
<白組>
優勝=渡辺明九段 4勝1敗
残留=羽生善治九段 3勝2敗
木村一基九段 3勝2敗
森内俊之九段 3勝2敗
飯島栄治八段 1勝4敗
西川和宏六段 1勝4敗
となった。紅白とも、まさかのプレーオフなしで、スンナリ決着した。これはやっぱり、羽生九段が負けたことが大きい。羽生九段のあんな逆転負けは、初めて見た気がする。これを加齢からくる衰えと見るべきなのか、会長職による疲れと見るべきなのか。今後の推移を見守りたいところである。
挑戦者決定戦は30日。どちらが挑戦者になってもよい。
まず、4回戦までの星と、最終戦の相手を記してみる。
<紅組>
佐々木大地七段(3勝1敗)VS佐藤天彦九段(2勝2敗)
豊島将之九段(1勝3敗)VS石井健太郎七段(0勝4敗)
斎藤慎太郎八段(3勝1敗)VS藤本渚五段(3勝1敗)
<白組>
羽生善治九段(3勝1敗)VS飯島栄治八段(0勝4敗)
渡辺明九段(3勝1敗)VS木村一基九段(3勝1敗)
森内俊之九段(2勝2敗)VS西川和宏六段(1勝3敗)
それぞれ勝敗予想をすると、紅組の佐々木VS佐藤戦は、いい勝負。
豊島VS石井戦は、豊島九段が最近元気がないので、石井七段が勝つと思う。
斎藤VS藤本戦もいい勝負。ただ、今回は斎藤VS藤本の勝者が、そのまま挑戦者決定戦を指すことになる気がした。
白組は、羽生VS飯島戦は、羽生九段が勝つだろう。
渡辺VS木村戦はいい勝負。
森内VS西川戦は、森内九段が勝つだろう。
となれば羽生九段はプレーオフを指さなければならないが、渡辺九段と木村九段、どちらと指すにしても再び勝つと思った。
当日はABEMAで羽生VS飯島戦があるとの告知を見て、楽しみにしていた。
ところが対局開始時にABEMAを見ると、斎藤VS藤本戦をやっていた。??
……上述の通り、斎藤VS藤本戦は3勝同士の一戦だから注目度は高い。 しかし、マニア垂涎のカードは羽生VS飯島戦である。羽生九段のプレーオフ進出なるかという注目度はもちろん、ここまで全敗の飯島八段が、レジェンド相手にどんな将棋を指すか、興味があった。
ところがABEMAは、それを直前で?変更した。ABEMAはまだ、将棋ファンの観戦心理を心得てないなと思う。
もっとも主催者は、各カードを無料中継してくれていた。私は連盟の中継アプリに加入していないので、この措置はうれしかった。
さて6局の戦型をざっと書くと、紅組の佐々木VS佐藤戦は、佐藤九段の三間飛車に、佐々木七段の右四間飛車。豊島VS石井戦は、角換わり相早繰り銀。斎藤VS藤本戦は、矢倉VS雁木。
白組に移り、羽生VS飯島戦は、羽生九段の横歩取り。渡辺VS木村戦は急戦矢倉。森内VS西川戦は、西川六段の三間飛車に、森内九段が居飛車穴熊を採った。
将棋はどれもいい勝負だったが、やはりABEMA中継がある斎藤VS藤本戦を見てしまう。藤本五段は雁木なのに玉が5八で、先の竜王戦1組・VS佐藤康光九段戦のような布陣だ。
対して斎藤八段は菊水矢倉に組み、攻めと守りがキッチリしている。昨今は角を換わらなくても玉をガッチリ囲わないのがトレンドのようだが、昭和生まれの私としては、玉はしっかり囲ってほしいわけである。だから今回は、斎藤八段を応援することになった。
金銀3枚の守りに、攻めは飛角銀桂。どんなにAIが進化しようとも、この摂理は永遠に変わらないのではと思う。
藤本五段は9筋から端攻めに出たが、斎藤八段がうまくいなして優勢。斎藤八段は名人戦2年連続挑戦の記録を持っている。昨年度はそのA級から降級してしまったが、本局はじっくりと落ち着いていて、そのころの強さが戻った気がした。
佐々木VS佐藤戦は、対抗形らしい攻め合い。とうていAIの研究の及ぶところではなく、やはり将棋はこうでなくては面白くない。
それにしても佐藤九段は、振り飛車に転じてから将棋に元気が出てきたように思う(気のせい)。
豊島VS石井戦は、石井七段が単騎の桂跳ねをしたが、これに豊島九段が桂を生け捕るべく銀を引いたのが序盤の勝負手。石井七段は攻め続けるよりなくなったが、このシャニムニ攻めが存外うるさく、そのまま攻め倒しそうな勢いである。
白組に目を転じると、羽生VS飯島戦は、羽生九段が順調にリードを拡げている感じ。
渡辺VS木村戦は、双方の銀が前線に進出して、駅馬車定跡を思い起こさせる。いまは後手の渡辺九段が先攻して、指しやすいか。
森内VS西川戦は、森内九段が盤石の指し回しで、優勢。全盛時の強さが戻ってきたかのようだ。
6局ともすべて面白く、河口俊彦八段が対局日誌の取材をしていたら、どんな切り口にしただろう。いまは河口八段の代わりになる人がいない。残念である。
王位戦は持ち時間が4時間なので、そろそろ決着がつく。
19時10分、まず石井七段が勝ち名乗り。攻めが綺麗に決まったあと守りに入る緩急自在の指し回しで、豊島九段が戦意を喪失して投了した。豊島九段、名人戦第4局を前に、光明が見えない。
その2分後、佐藤九段が勝ち。これで紅組は、斎藤VS藤本の勝者が挑戦者決定戦に進出することになった。
19時21分、渡辺九段が勝ち名乗り。終始うまく攻めて、快勝だった。
その11分後、森内九段勝ち。完璧な指し回しで、西川六段の攻めを切らした。
さらにその2分後、藤本五段が投了。斎藤八段の紅組優勝が決まった。
さあ、残るは羽生VS飯島戦である。形勢は相変わらず羽生九段がよく、現在はザッと銀得である。しかし飯島八段も馬を2枚作って粘っている。
羽生九段、飛を捨てて飯島玉に必至を掛けた。でもなんだか無理やり寄せに行ったようで、もう少し安全な寄せ方はなかったのかと思う。いやむろん、これで羽生玉が詰まなければよい。だけど、本当に詰まないのか?
飯島八段、天王山から飛車打ちの王手。飛車は敵陣から打つものと思っていたから、驚いた。
だがこの飛車を取れば詰むようで、羽生九段は玉を逃げる。と、飯島八段はさらに金捨て。20時33分、ここで羽生九段が投了したから驚いた。即詰みなのだ。
すなわち、この金は玉で取るよりないが、続いて竜で王手されたとき、合駒が悪い。持駒の金、桂、どれを合いしても、綺麗に詰んでしまう。それには2七の歩が一役買っていて、まさかこの歩が詰みに働いてくるとは思わなんだ。まさに勝ち将棋鬼のごとしである。
いやはや、飯島八段、劣勢の将棋を逆転勝ち。これで羽生九段との対戦成績は3勝3敗になったそうで、とんだハブキラーがいたものだ。飯島八段は、強いんだか弱いんだか、分からない。
ということで、最終的な結果は
<紅組>
優勝=斎藤慎太郎八段 4勝1敗
残留=佐々木大地七段 3勝2敗
佐藤天彦九段 3勝2敗
藤本渚五段 3勝2敗
豊島将之九段 1勝4敗
石井健太郎七段 1勝4敗
<白組>
優勝=渡辺明九段 4勝1敗
残留=羽生善治九段 3勝2敗
木村一基九段 3勝2敗
森内俊之九段 3勝2敗
飯島栄治八段 1勝4敗
西川和宏六段 1勝4敗
となった。紅白とも、まさかのプレーオフなしで、スンナリ決着した。これはやっぱり、羽生九段が負けたことが大きい。羽生九段のあんな逆転負けは、初めて見た気がする。これを加齢からくる衰えと見るべきなのか、会長職による疲れと見るべきなのか。今後の推移を見守りたいところである。
挑戦者決定戦は30日。どちらが挑戦者になってもよい。