おはようございます。新宿区神楽坂で研修&カウンセリングの事業を営む ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
2月1日付けの 体罰の心理的弊害(1) に続いての第2回目です。
本来は、心理的弊害に入るはずですが、よくありがちな脱線をします。
私は、体罰に関して「自己証明は証明に非ず」という、大学時代に会計監査の授業で教わった言葉を思い出しました。
テレビや新聞では、「告発15選手、全柔連幹部の辞任など要求」(一例:デイリースポーツ 2月4日配信)として次の報道がなされていました。
ロンドン五輪柔道代表を含む女子のトップ選手15人が、暴力行為とパワーハラスメントを受けたと告発した問題で、選手側の代理人である大阪弁護士会の辻口信良、岡村英祐両弁護士が4日、大阪市内で会見した。
冒頭、「公益法人全日本柔道連盟女子ナショナルチーム国際強化選手15名」と綴られた「皆様へ」で始まるA4のファクスが配布された。
文面には「前強化委員会委員長をはじめとする強化体制や、その他連盟の組織体制の問題点が明らかにされないまま、ひとり前監督の責任という形を以て、今回の問題解決が図られることは、決して私たちの真意ではありません」などと書かれており、園田隆二前監督の辞任だけではない、全日本柔道連盟幹部の辞任を含めた要求をしている。
辻口弁護士は「園田さんだけが一身に背負って幕引きできればいいとなると、まったくの勘違い。選手たちが体験したことや思ったことを、きちんと聞き取ってもらいたい」と話した。
全日本柔道連盟女子柔道は、園田監督の辞任で1つの幕を下ろそうとしましたが、まだまだ問題が山積しています。
過日の新聞では、15人の告発まで事態を把握できなかった全日本柔道連盟の危機管理能力の欠如が指摘されています(讀賣新聞2月1日社説)。
15人の選手は、全日本柔道連盟でなく、日本オリンピック委員会(JOC)に告発したのです。全日本柔道連盟に対する不信感の表れです。
そもそもは、昨年の9月にオリンピック強化選手1名に暴力を振るったという情報が全日本柔道連盟に入り、監督が事実を認め、選手に謝罪したことで問題が決着済みと認識し、リオデジャネイロ・オリンピックアで園田監督を続投させようとした方針が選手たちの反感を買うことになりました。
ここでのポイントは、問題を全日本柔道連盟内部で処理しようとしたことです。
学校のいじめや体罰の事件でも見られる傾向ですが、内部だけで当事者に確認し問題がなかった、と報告し、幕引きをしようとすることは、自己証明に他ならず、身内に甘くなりがちの上、論理性・説得力に欠けるのです。
ここで、連想したのは、横田めぐみさんの遺骨DNA鑑定問題です(参考:[朝鮮新報 2007.12.5] 横田めぐみさんの遺骨DNA鑑定問題 経緯と経過 -1- ) 。
横田めぐみさんの遺骨は2004年11月14日、日朝政府間実務接触に参加するために平壌入りした日本政府代表団団長である藪中三十二外務省アジア大洋州局長(当時)にめぐみさんの夫から直接手渡されました。
日本政府は持ち帰った遺骨を刑事訴訟法等に基づき鑑定依頼書を出し、科学警察研究所、帝京大学、東京歯科大学にそれぞれDNA鑑定を行うように要請しました。
鑑定にあたった帝京大学の吉井富夫元講師らは「横田めぐみさんのものとは異なる二種類のDNAを検出した」と発表しました。
このことで、日本政府は、横田めぐみさんの遺骨を偽物だと各方面に発表しました。
私は、このことを「自己証明」の落とし穴だと今でも思っています。
もし、科学的な手続きに基づき、世界の関心を引きつけようとするならば、アメリカ、イギリス、ロシア、中国などの第三国にも遺骨のDNA鑑定を依頼し、その鑑定結果に基づき偽物であることを証明すれば、ずっと説得力があり、世界の関心を集めたはずです。
話を全日本柔道連盟女子柔道の体罰問題に話を戻せば、もうこうなったら、第三者機関に徹底調査を依頼し、男子柔道を含めて体罰問題を洗い出すしかないのです。
たとえ、東京オリンピック招致の可能性が遠のくとしても、膿を出し尽くすのが百年の計と言うべきでしょう。
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