見もの・読みもの日記

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浦沢直樹のPLUTO(1)

2004-10-01 00:42:52 | 読んだもの(書籍)
○浦沢直樹・手塚治虫『PLUTO(プルートゥ)』第1巻 小学館 2004.11 

http://www2.ocn.ne.jp/~azuma1/p-top.htm

 「YAWARA」「MASTER KEATON」で知られるマンガ家・浦沢直樹が、手塚治虫「鉄腕アトム」の1エピソード「地上最大のロボット」のリメイクに挑んだ作品。雑誌「ビッグコミック・オリジナル」に2003年9月から隔週で連載されている(らしい)。電車の吊り広告でその存在は知っていたが、実際に読んだのはこれが始めてである。

 私は1960年生まれで浦沢直樹氏と同い年だ。物心ついた頃から、家にあった「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」を、繰り返し繰り返し読んで育った記憶がある。たぶんマンガ「鉄腕アトム」(アニメではなく)のファンとしては、私も浦沢直樹氏もやや早熟な世代に属すると思う。家にあった「鉄腕アトム」は光文社のカッパコミックスのシリーズだった。

http://ja-f.tezuka.co.jp/manga/backlist/te19/index.html

 が、たぶん、親が気まぐれに買ってきたものだったので、全巻は揃っていなかった。だから私は、名作の誉れ高い「地上最大のロボット」を、残念ながら幼少時に読んでいない。ずっと後年、1970年代に朝日ソノラマ社のサンコミックス版で読んだのが最初だと思う。そのため、原作の印象が薄く、浦沢「PLUTO」の噂を聞いても思い出せなかった。今日、初めて「PLUTO」を読み、少しずつ、手塚作品の記憶が蘇ってくるのを感じた。

 世界最強の七体のロボットが、次々と何者かに襲われ、不慮の「死」を遂げる。やがて魔の手はアトムを襲う。その正体は、他の強敵ロボットを倒すためだけに造られた「地上最大のロボット」PLUTOだった。まあ、簡単にはこんなストーリーである。

 浦沢「PLUTO」では、今のところ、七強ロボットの1人である、ロボット刑事のゲジヒト(ドイツ)を主人公に話が進んでいる。この点は浦沢のオリジナルのようだ。

 別の七強ロボットの1人、ノース2号の物語は、どこまでが手塚の原作で、どこからが浦沢の創作なのか、私には判然としなかったが、いいエピソードで泣けた。根本の精神はいかにも手塚っぽいけど、浦沢の達者な絵が華を添えていて、とてもいい。

 それから、物語の早い段階で、ブラウ1589というロボットが出てくる。これはどう考えても原作にはないものだと思ったが、下記のサイトの「謎解き」が非常に興味深い。

http://someiyoshino.cool.ne.jp/NowOrNever/non2/archives/000174.html

 なるほど「青騎士」ね。このキャラクターの投入からすると、浦沢作品は、単に「地上最大のロボット」1エピソードの「リメイク」を狙っているのではなく、手塚の「鉄腕アトム」全体――とりわけ、そこに繰り返し現れる基調低音のようなテーマ「悪い心を持たないロボットは完全ではない」に対して、彼なりのオマージュを捧げようと志しているのではないか。そんな予感も感じられる。

 追記。奥付は「2004年11月1日発行」だが、実際は昨日9/30の発売だった。いいのか、こういうの?

コメント (1)
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