見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

対談・日本美術の愉しみ(山下裕二・赤瀬川原平)

2005-10-04 12:43:08 | 行ったもの(美術館・見仏)
○紀伊国屋マンスリーセミナー書物復権 第6回『日本美術の愉しみ』

 10月2日(日)に紀伊国屋ホールで行われたセミナーを聴きにいった。講師は、日本美術応援団団長の山下裕二氏と、同団員1号の赤瀬川原平氏。団員2号の南伸坊氏の顔が見られないのは、ちょっと残念である。

 冒頭で「もう100回以上対談している」とおっしゃっていたが、私もおふたりの公開ゼミを聴くのは4回目である。最初は、朝日カルチャーの山下先生の講座に、赤瀬川さんが招かれての対談だった。このとき、「来年、京博で大規模な伊藤若冲展をやる」という耳寄り情報を初めて掴んだと記憶しているので、たぶん1999年のことだろう。その後は、青山ブックセンターのイベントで2回。どちらも南伸坊氏が参加して、絶妙の合いの手を入れていた。

 おふたりの対談は、毎回、大量のスライドを見せてくれる。これが時間を忘れるほど楽しい。雑誌や画集の引用もあるけれど、だいたい、ホンモノの写しであるところがいい。ホンモノの作品の前で、山下先生はご満悦で寝転んでいたりする。

 最近は、雑誌「オール読物」に「日本美術応援団がいく実業美術館」という記事を連載中だそうで、この夏、見てきたばかりの「博物館網走監獄」の紹介から始まった。いや~すごいよ、この博物館! 公式サイトを見つけたのでリンクを張っておくが、このホームページでは、とてもとても、山下・赤瀬川両氏の談話が伝えた魅力の半分も盛り込まれていない。

 日本美術応援団は、結成以来、まもなく10年になるそうで、対談の後半では、これまで取り上げたモノや場所を振り返った。鳥取県三朝(みささ)の投入堂は、何度見ても迫力があるなあ~。日本民藝館が所蔵する『築嶋物語絵巻』は、ええと『日本美術観光団』(2004.5)に載っていたものだったかしら。驚天動地の下手ウマ絵巻なのであるが、同書では図版が小さいので、凄さがイマイチ伝わらない。今回、大写しになったスライドを見て、会場は大盛り上がりだった。

 この10年、日本美術に対する風向きは、ずいぶん変わってきたのではないか、という話も出た。2000年の若冲展あたりが契機で、若い人たちが、ネットや口コミで、いいもの・おもしろいものを知らせ合ううちに、日本美術に興味を持つ層が確実に広がっているという。確かにそんな気はする。でも、『築嶋物語絵巻』から網走監獄まで、隠れた名品を掘り出して、そっと教えてくれる先達として、両氏には、まだまだご活躍いただきたいと思う。
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