見もの・読みもの日記

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イスラムの美術/世田谷美術館

2005-10-11 00:38:52 | 行ったもの(美術館・見仏)
○世田谷美術館『宮殿とモスクの至宝―V&A美術館所蔵イスラム美術展』

http://www.setagayaartmuseum.or.jp/

 ロンドンにあるヴィクトリア・アンド・アルバート美術館のイスラム美術ギャラリーが所蔵する名品展である。タイル、絨毯、陶磁器、金工、木彫、ガラス、絵画、写本など、さまざまなジャンルの逸品を見ることができる。

 写本類は、独特のイスラム書道に加えて、手彩色の挿絵、革装の造本も見どころ。アストロラーベと呼ばれる携帯用の星座盤、反りの鋭い、美しい剣もあった。時代は(もっと古いものもあるが)13~14世紀から19世紀に至るものが多い。イスラム史は不案内なのだけど、だいたい、近世と呼んでいいのかしら?

 イスラム美術と聞くと、偶像崇拝が厳しく禁止されたため、文字や幾何学文様、植物文様ばかりのようなイメージがあるのだが、それは宗教的空間においてのこと。宮殿など、世俗的な空間には、動物や人物による装飾も、それなりに使われていたようだ。本展で見たイスラムの人物画は、中国の人物画に比べてずっと肉感的である。だが、インド美術のように肌の露わな裸体を描くことはしない。禁欲的な衣装に、量感のある肉体を包んでいる。

 しかし、神像のような、純粋に「見られる(拝まれる)」ための造形がない分、生活の中の装飾品が多く、その水準が高いように感じた。

 なんといっても魅力は色彩。そうして、色彩の魅力が最もよく感じ取れるのは、陶磁器ではないか。中国や日本の染付(青花)に似たものもあるけど、絶対にないものもある。そのひとつが、濡れたように輝くラスター彩。銀や銅などの酸化物を混ぜた顔料を低火度で焼き付け、表面に薄い金属皮膜を作り出す工芸技法だそうだ。ペルシア色絵のことは「ミナイ手」って言うのね!(伊万里の、金襴手とか青手と同様)

 15世紀、オスマン帝国のメフメト2世は、中国の磁器に対抗すべく、宮廷の資金をつぎ込んで、トルコ産陶器(イズニク窯)の改良に取り組んだ。その結果、濃紺やトルコ青と対象をなす、鮮やかな赤色(珊瑚赤とかトマト赤と呼ばれる)の開発に成功する。このへん、仕入れてきたばかりの知識なので、間違いがあったらご容赦。

 彫刻とか絵画にも、もちろん、東西文化の交流や影響関係が見て取れるわけだが、陶磁器ってやつは、基本が”商品”であっただけ、その影響関係が露骨で、分かってくると非常に面白い。
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