見もの・読みもの日記

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明清の絵画、そして江戸/静嘉堂文庫美術館

2005-10-24 00:09:46 | 行ったもの(美術館・見仏)
○静嘉堂文庫美術館 『明清の絵画と書跡展-中国五百年の筆墨と彩-』

http://www.seikado.or.jp/

 同館コレクションによる明清の絵画と書跡展。”明清”というけれど、あまり時代の新しいものはない。古雅で格調高い雰囲気が味わえる。

 はじめ、会場の入口に、明初の『竹林山水図』という作品があって、私はこれがいたく気に入った。水辺に一叢の竹が生えている。か細い幹の上に、伏せたコーン(逆三角)型の葉っぱが付いていて、あっちに向き、こっちに向きして、風にそよいでいる。描かれているのは、ただそれだけ。背景は、雨雲なのか、山があるとも岸があるとも分かちがたい。繊細で静謐な作品である。

 会場に入ると、李日華『牡丹図巻』が目に入る。薄墨をうまく使って、牡丹の花のぽってりした立体感を表現したものだ。これって「たらしこみ」の一種でしょうか。ちょっと宗達みたいだ。

 と思っていると、徐霖『菊花野兎図』は、太湖石のかたわらの、菊花とウサギを描いたもの。画面の右端を区切る青い太湖石が、色も形も抽象的に感じられるのに対し、菊花とウサギは写実的に描かれている。うーん。光琳のデザイン感覚に似ているかも。

 謝時臣の『四傑四景』は4幅構成。4人の英傑の苦難の時代を描いたものだそうだが、うち3幅は、要するに、妻に愛想を尽かされた男の悲惨な姿を画にしている。背景の山水には、俗世を捨てた隠士の姿が似合いそうなものを、どうして、こんな俗っぽい主題を描いたのか、笑ってしまった。でも、謝時臣の代表作だという。

 ほかに印象的だったのは、李士達『歳朝題詩図』。ちょっと農民画っぽい。沈銓の『老圃秋容図』は、神経質そうなネコの表情が、酒井抱一を思い出すなあ、と思っていたら、そういう影響関係(沈銓→抱一)が認められているらしい。余『百花図巻』は、四季のめぐりに従って花卉を配したもので、絵画というより、工芸デザインに近い。ピンクが効果的に使われている。

 なお、沈銓、余は、来舶画人(日本を訪れた中国画人)であるという。なるほど。近世日本の美術における、来舶画人の影響って、どのくらいあるのだろう。知りたい。
コメント
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