見もの・読みもの日記

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バーミヤン大仏/横浜ユーラシア文化館

2006-04-06 23:41:57 | 行ったもの(美術館・見仏)
○横浜ユーラシア文化館 企画展『バーミヤン大仏-カメラがとらえた爆破直前の姿-』

http://www.eurasia.city.yokohama.jp/home.html

 2001年3月、イスラム原理主義勢力によるバーミヤン大仏破壊のニュースは衝撃的だった。貴重な古代遺産が失われたこと――と言うより、自分が観光客として、大仏を見に行く機会が永遠に失われたことを、私は残念がったのだ。

 それからしばらくして、『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない、恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』(現代企画室 2001.11)を読み、私は自分の無知と傲慢を恥じた。アフガニスタンでは、この四半世紀、戦乱と飢餓によって、多くの人々が苦しみ続けてきた。しかし、大仏の破壊は世界中の同情を集めても、百万のアフガン人の死に対しては、誰も注意を向けようとしない――いったい、大切なものは文化遺産なのか、人の生命なのか。そのように告発されて、私は、自分の中の「オリエンタリズム」と、初めて向き合うことになった。

 だから、この企画展のポスターを見たときも、文化遺産としてのバーミヤン大仏に心ひかれながら、一方で、そういう自分を自戒する気持ちが強く働いた。結局、迷いながら、見に行った。

 ひとりでパネルの写真を見ていると、スタッフの札を下げた、背の高い白髪のおじさんが近づいてきて、「ちょっとだけ説明しましょう」と言う。面倒臭いなあ、と思いながら、うなずいて耳だけ傾けていると、どうやら、この方は、実際にバーミヤンの写真を撮り続けてきた菅沼隆二さんという方らしい。

 タリバン勢力の中にも、信仰とは別に、バーミヤン大仏の重要性を理解している文化官僚がいて、かつては、大仏を守ろうというキャンペーンも行われていたこと。首都カブールの博物館は空襲でめちゃめちゃに破壊されたが、少しずつ復旧が進んでいることなど、アフガニスタンの過去・現在について、いろいろ教えていただいた。

 展示品の中に、2001年3月から始まるイスラム暦のカレンダーがあった。パキスタンで出回っていたもので、大仏に向けて飛んでいくミサイル弾と、破壊の瞬間の写真が掲載されてる。大仏の破壊は誇るべき壮挙であるという、イスラムの立場で作られたカレンダーだ。このカレンダー、9.11事件の前後からは、プッツリと姿を消したという(言論統制なのか、自粛なのか)。

 その後、移り気な我々の関心は、イラクや北朝鮮に移り、アフガニスタンという国は、再び忘れられようとしている。輝く大仏のよみがえる日は来るのだろうか。
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