見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

週末関西旅行2日目(2):大和文華館

2006-04-29 23:28:03 | 行ったもの(美術館・見仏)
○大和文華館 『日本絵画名品展-信仰の美・世俗の美-』

http://www.kintetsu.jp/kouhou/yamato/index.html

 これも先週の日曜日の話。奈良博のあとは大和文華館に向かった。時間節約のため、お昼は学園前駅のスタバで済ませ、会場に入ったのがお昼過ぎ。見通しのいい入口に立つと、遠目にも、『婦女遊楽図屏風(松浦屏風)』の大ぶりな図様が目に飛び込んでくるが、騒ぐ胸を抑えて、順路に従って見ていくことにする。

 今季は同館所蔵品による名品展なのだが、そのラインナップは本当にすごい。まず、最初に用意されているのが、佐竹本三十六歌仙の『小大君像』。先日、出光美術館の『歌仙の饗宴』展で、周囲の人の列を気にしながら見ていたものである。今日は広い会場に、私のほかに数人が散らばっているだけなので、飽きるまで、独り占め状態が可能! 濃赤と緑に細い金の描線を交えた、クリスマスみたいな重ねの色目を目に焼き付ける。

 それから、うわー、雪村の『呂洞賓』だ! 龍のアタマを踏みつけて、天に昇る神仙・呂洞賓の図。袖や髭が着物の裾が、四方八方に跳ね上がり、「風の向きの不合理な表現」であると解説はいうが、私には高速で回転しているように見える。まるでマンガ。心なしか龍もうれしそうだ。私は、雪村という画家を、この1枚で最初に覚えたので、愛着のある作品である。

 しばらくして、ふと周囲を見ると、いつの間にか、私以外の観客は誰もいなくなってしまった。信じられない! 日曜日の昼下がりというのに。警備員のおじさんも受付で話し込んでいる様子で現れない。これでは、まるで、私のプライベート・ギャラリー状態である。あまりの贅沢に、頭がくらくらするような気分だった。

 国宝『一字蓮台法華経』がある。辻が花染の小袖を着た『婦人像』がある。伝宗達の『伊勢物語図色紙・芥河』がある(昔男が女を背負って盗み出す図、可憐)。光琳筆の扇面図を貼り混ぜた『扇面貼交手筥』がある。これは、貼り混ぜたのは光琳自身ではなく「作品を所蔵していた数寄者」と見られているそうだ。素人の工作っぽいところが、とても楽しい。

 そして、とうとう、『婦女遊楽図屏風』の前へ。記憶をたどる限り、初見だと思う。大きい。屏風が、ではなく、描かれている人物が。等身大の人物による群像というのは他に例がないそうだ。描かれているのは全て女性ということだが、カップルみたいに寄り添っているのもいて、あやしい。年齢は童女から、やや年配まで。風俗を仔細に見ていくと、お歯黒をして、眉を剃っているものとそうでないものがいる(単に結んだ唇を黒い線で表しているのはお歯黒ではないのかしら)。

 髪は、耳元だけを切り落とした下げ髪と、束ねてUPにしたものがいるが、目立つ髪飾りは誰も付けていない。髪のほつれ具合の描き方がいずれも丹念で、作者は女性の髪フェチに違いない、と思った。髪型や化粧(アイラインの強調など)が現代の風俗に近いせいもあるけれど、身体(膝を立てたり、胡坐をかいたり)や顔の表情が自由で、ゆったりした衣装も、それを隠そうとしないところが、描かれた女性たちを、身近に感じさせるのだと思う。この屏風、九州平戸の大名家、松浦家に所蔵されていたことから、松浦屏風と呼ばれる。2004年に訪ねた平戸の町を、懐かしく思い出した。

 ところで、あれ?大和文華館の「コレクション」に上がっている画像(前掲)と、今回の展示では、屏風の左隻右隻が逆になっているやに思える。私の記憶違いか、それとも何か理由があるのかしら。興味は尽きない。
コメント (2)
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