見もの・読みもの日記

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秋の関西旅行(2):道教の美術(大阪市立美術館)

2009-10-06 22:57:08 | 行ったもの(美術館・見仏)
大阪市立美術館 『道教の美術 TAOISM ART』(2009年9月15日~10月25日)

 東京で2回も行った『道教の美術』を見るために、性懲りもなく、大阪まで出かけてしまった。行ってよかったと思う。ほとんど別の展覧会を見たような気分である。

 最初の展示室で、仙台藩の藩校である養賢堂の障壁画『河図図』『洛書図』(東東洋筆)を見て、おお~やっぱり来てよかった、と思った。黄河から現れた龍馬の背中の文様、洛水から現れた亀の甲羅の文様から、八卦の図が生まれたことを視覚化したもの。あ、八卦だから道教なのか。孔子の「鳳鳥、至らず。河は図を出さず」を思い浮べると、儒教の美術のような気がする。『金立神社縁起図』は徐福の日本渡来伝説に基づく最古の絵画作品。と言っても、桃山~江戸だから、比較的新しいのだな。佐賀県に徐福を祀る神社があることには、びっくり。

 こんな感じで、東京では見られなかった作品がずらずら並ぶ。まとまったコレクションとしては、淑徳大学書学文化センター所蔵の拓本が目立った。淑徳って、私の地元・埼玉なのに…。中でも『瘞鶴銘(えいかくめい)』の拓本には興奮!! 書の名品として名高い、中国六朝時代の碑文である。江蘇省鎮江市の焦山を訪ねたとき、展示室が閉まっていて見せてもらえなかったという、悲しい思い出があるのだ。

 書画では、三たび『北斗九星図』に巡り会う。解説に、垂髪に白衣の7人は女性だと書いてあったけど、そうなのかなあ。東京では見られなかった『鎮宅霊符神像(玄天上帝)』が複数見られて、とっても満足。このおじさん、好きだ。1件は東京の静嘉堂文庫所蔵だったりする。雪村の『呂洞賓図』と『琴高・群仙図』が並ぶ贅沢に喝采。残念ながら、東京でも大阪でも縁がなかったのは、関帝(関羽)の図。6件くらい出品されているはずなのに。

 彫刻は、露出展示が多くて面白かった。童形の妙見菩薩(読売新聞社蔵)は、ひときわ高い位置に据えられていて、照明のせいか、いたずらっ子みたいに見えた。宇治の万福寺の華光菩薩は、大きいが、整った威容である。関連イベントで、二階堂善弘先生は、この彫刻についてもお話をなさるだろうか(→二階堂先生のサイト)。

 初見ではないけど「やっぱり好き」なのは、岡山県立博物館の「鼻毛の老子」。近代ものでは山本芳翠の油彩『浦島図』。細部に見どころがたくさんある。徳川美術館の黄金の『伏羲像』は、海洋堂、作ってくれないかな。地味な文献類も、じっくり鑑賞させてもらった。

 東京と大阪では、どことなく客層が異なるのも面白かった。東京は、日本橋という場所柄、おめかししたおばさまや、いかにもアート好きの若者が多かったように思うが、大阪は、商店街にいるような普段着のおじさん・おばさんが、ずいぶん熱心に見入っていた。

 ショップには、一見、2種類の展示図録が並んでいた。内容は同じだが、表紙に東京共通版と大阪限定版(黒表紙)があるということだ。さて、どっちが売れているんだろう? それから、大阪会場でもらった展示替えリストを、東京で買った図録の巻末リストと照らし合わせてみたら、図録では大阪「非出品」なのに出品されているものや、逆に大阪「出品」とあるのに出ていないものもある(辟邪絵)。予定が変わったのかな。

 東京・大阪・長崎の3会場を比較すると、大阪がいちばん規模が大きくて「大阪のみ出品」が100点以上ある。しかも展示替えは少なくて、前後期の2回行けば、ほぼ見尽くせる。やっぱり、こういうとき、大きいハコはいいなあと思う。

※公式サイト『道教の美術』
http://taoism-art.main.jp/
○(窓)と□(扉)のTOPページが斬新でカッコいい。

※関西大学・文学部・二階堂研究室:中国の民間信仰と道教
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~nikaido/
二階堂先生、「新つぶやきコーナー」によれば、今日(10/6)は大阪市立美術館にいらしたようである。
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