見もの・読みもの日記

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近江巡礼と若冲の旅(1):観音正寺、長命寺

2009-10-18 23:31:39 | 行ったもの(美術館・見仏)
 西国三十三所結縁御開帳もいよいよ佳境! 急遽思い立って、10月2度目の関西行きとなった。

■西国第三十二番 繖山観音正寺(滋賀県蒲生郡)

 観音正寺は、標高433メートルの繖山(きぬがさやま)の山上にあり、かなりの難所。距離は短いが急な石段の表参道から登るか、だらだらと山道の続く裏参道から登るか、札所めぐり仲間の間では議論があったが、結局、私は、以前にも登ったことのある裏参道を選ぶ。

 同寺は、平成5年(1993)に旧本尊を焼失、平成16年(2004)に本堂の落慶法要とともに、総白檀造り千手千眼観世音菩薩坐像の開眼法要が行われたという。私の前回訪問は、2003年の秋だったと思うが、大きな千手観音坐像を間近に拝観した覚えがある。あれは開眼法要前の仮ご開帳だったのかな?

 ご本尊は秘仏ではないので、いつ行っても拝めるが、今回の特別拝観では、ご本尊の裏側にまわって、小さな胎内仏(旧本尊の写真を参考に新刻したもの)や寺宝の仏画を拝見することができる。手首に結縁の糸(赤に黄を縒り合わせたもの)を結んでくれたり、和紙の散華でご本尊の「おみぬぐい」をさせてくれたり、フレンドリーな特別拝観だった。本尊の脇侍(これも新刻)は、婆藪仙人(ばすせんにん)と功徳天(吉祥天)。めずらしい取り合わせだと思ったが、たまにあるのだそうだ。帰路は表参道の1200段の石段を下って、長命寺行きの臨時バスをつかまえる。

■西国第三十一番 姨綺耶山(いきやさん)長命寺(滋賀県近江八幡市)

 長命寺も2度目の来訪。808段といわれる長い石段を見上げて、そうだ、前回来たのは平日で、地元の中学生が、この石段でトレーニングしてたっけなあ、と思い出す。この秋は、長命寺~観音正寺間に臨時バスが運行しているおかげで、両寺を一気にまわれるのはありがたいが、丈夫な足腰が必須条件である。

 同寺の本尊は”千手十一面聖観世音菩薩三尊一体”だというので、ものすごくグロテスクな仏像を想像していたら、何のことはない、横に広い、舞台のようなお厨子の中には、中央に千手観音。右側に、童子のように小柄な十一面観音(水瓶を持つ)。左側に、千手と十一面の間くらいの背丈で、大きな宝冠を付け、未敷蓮華を手にした聖観音が、仲良く並んで立っていらした。三体の微妙な距離感と、微妙な個性の違いが面白くて、いい感じである。芝居錦絵で、主役3人が並んで見得を切っているみたい。

 お厨子の右手には、ふだんは御前立ちの千手観音、左手には単独のお厨子に入った小さい千手観音がいらして、「長命寺を代表してよそに出かけるのは、この観音さん」だそうだ。また、見にくいが奥の暗がりには、毘沙門天と不動明王がいらっしゃる。あっ懐中電灯で照らしたりしたら叱られるでしょ、と思ったら、参拝客ではなくて、お坊さんが自らライトで照らして説明してくださるので、ありがたかった。

 さらに本堂には、多数の仏像や寺宝が並べられている。特に目を引くのは、桃山時代の『長命寺参詣曼荼羅』。奈良博の『西国三十三所』展の図録を見たら、同展にも出品されている。私は、失礼ながら、この参詣曼荼羅を見て、ええ~熊野じゃないの?と疑ってしまった。だって、滝と三重塔が描かれているし…。しかし、あらためて『西国三十三所』展の図録で、各所の参詣曼荼羅を比べてみると、塔や石段など、パーツの描き方は流用しながら、それぞれの寺社の特色(地形や伽藍)を描き分けていることが分かった。

※参考:各地に現存する参詣曼荼羅図の例(世界遺産熊野絵解き図制作委員会)
http://kumano-etoki.jp/other_mandara.html

 この日、朝から岩間寺に向かった友人から、「混雑のため臨時便が出ている」旨の現地情報が携帯メールに届く。別の友人は、葛井寺の拝観を終えて岩間寺に向かうというので、私も、次の札所、岩間寺行きバスの出る石山駅に急ぐ(明日に続く)。
コメント (1)
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