見もの・読みもの日記

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眩しいお色直し/国宝那智瀧図と自然の造形(根津美術館)

2009-10-12 18:02:40 | 行ったもの(美術館・見仏)
根津美術館 新創記念特別展 第1部『新・根津美術館展~国宝那智瀧図と自然の造形』(2009年10月7日~11月8日)

 新装開店、いや新創開館した根津美術館に行ってきた。休館前の最後の展覧会、2006年春の『燕子花図と藤花図』展の記事を読み返し、3年半は長かったなあ、としみじみ感じている。

 以前の建物も嫌いではなかった。表参道の駅から、ゆるやかな坂を下っていくと、交差点の向かい側に現れるのは古風な瓦の載った白塀(その上に覗く蔵の姿)で、美術館の入口は、少し右寄りの視界の外れにあった。新しい美術館では、ちょうど横断歩道の正面に入口がつくられた。公道と美術館の敷地を仕切るのは、塀ではなくて、細い竹の生垣。なんだか、とってもオープンになった感じがする。

 一歩入ると、大きな庇に覆われたアプローチが、建物まで続く。右には風にそよぐ生垣の竹の列、左には建材として壁を覆う竹の列(現在の公式サイトTOPの写真)。おお、なるほどね。この感じも、とてもいい。美術館本体は、壁面にガラスを多用し、明るい雰囲気。でも展示室は、ずいぶん暗くなったなあ。文化財保存の観点からは、このほうがいいんでしょうけど…。

 第1室で、国宝『那智瀧図』に向き合う。崖の上に姿を現しかけた日輪とか、多様な色彩で塗り分けられた紅葉は、高精彩の画像で見るほうがはっきりする。現物から、描かれた当時の美しさを想像することは、なかなか難しい。しかし、白々した瀧の姿を見ていると、那智大社に参詣したとき、山の中に響きわたっていた瀧の音が、耳によみがえるように思った。このほか、『吉野龍田図』のように、なつかしいものもあれば、鎌倉時代の『弁財天図』や伝狩野元信筆『四季花鳥図』など、全く記憶にない作品もあった。

 第2室は書跡。根津美術館の古筆切コレクションの素晴らしさは周知のこと。この新創開館展でも、平安時代(一部鎌倉)の名品をずらり掛け並べており、実は、第1室より、こっちのほうが圧巻という気がした。加えて、どの軸も表具が素晴らしくて、はっとするような斬新な感覚のものが多い。もしかして、一部は休館中に表装しなおした?と疑って、古い図録で確認しようと思ったが、表具込みで写っている写真がほとんどないので、確かめようがなかった。

 ホールと第3室は仏像、第4室は古代中国の青銅器。以前の美術館では2階の常設コーナーにあって、忘れられたような存在だったが、この日は多くのお客さんが訪れていた。特に、殷代の青銅器『双羊尊』は、各種グッズもつくられて、これからスターに育てていくつもりらしい。果たして世間に受け入れられるかな。私は気に入ったので、暖かく見守りたいけど。

 第5室は明清の漆工と陶磁。2階ホールには装飾時計。また、第6室は「青山荘」と名づけた三畳の茶室をしつらえ、根津嘉一郎がおこなった「初陣茶会」を再現している。若い頃から古美術品に関心を寄せていた嘉一郎だが、「満を持して」初の茶会を開催したのは59歳のときだという。ちょっとカッコいいな~。茶道具の展示ケースには畳が敷かれていたが、これは、以前の根津美術館でもよくやっていた展示方法。青畳だったのは、新調のあかし。これから、少しずつ古色が加わっていくだろう。

 最後に中庭に出てみると、不思議なもので、旧館の記憶がよみがえってきた。ああ、あの位置が玄関だった、ここに長い回廊が伸びていた、など。いま、ネットで検索してみると、新・根津美術館の写真は多数出てくるが、旧館に関するものはほとんどない。旧館の写真やデータを持っている人は、ぜひ、どこかに保存しておいてほしいと思う。

※参考:world-architects.blogspot.com(2009/10/5)「新・根津美術館」プレス内覧会」
設計者、隈研吾さんの写真も。
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