見もの・読みもの日記

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秋の関西旅行(3):熊野三山の至宝(和歌山県立博物館)

2009-10-08 00:32:18 | 行ったもの(美術館・見仏)
和歌山県立博物館『熊野三山の至宝-熊野信仰の祈りのかたち-』(2009年9月8日~10月18日)

 和歌山県立博物館には、初訪問。会場に入って、最初に私の心を捉えたのは、文化財ではなくて、大きな写真パネルだった。熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)の現地を、はるか上空から俯瞰的に撮影したもの。ええ~これ、どこから撮ったのだろう、と驚いた。那智大社は、今年3月、青岸渡寺のご開帳のときに行ったばかりで記憶に新しいが、本宮と速玉大社に行ったのは、かれこれ15年くらい前のこと。まだ大斎原に大鳥居(平成12年竣工)なんかなかったはずで、びっくりした。

 最初の展示室の見どころは、もちろん熊野熊野速玉大社の神像4体。熊野速玉大神(くまのはやたまのおおかみ)、夫須美大神(ふすみのおおかみ)、家津美御子大神(けつみみこのおおかみ)(以上が熊野三所権現)、そして国常立命(くにのとこたちのみこと)である。背景は黒。照明は、暗すぎず、明るすぎず、落ち着いて見られた。東京で見たときよりも、神像の表情が生き生きしているように感じた。国常立命坐像は、いいなあ。頭頂部と、体部の前面が無残にえぐり取られ、彫刻としては、わずかに顔面を残すだけなのだが、荒々しい野性を感じさせる自然の木肌と、顔面の人工美の対比が、まるで計算しつくされた現代彫刻みたいだと思った。

 室中央のガラスケースには、三所権現の本地仏とされた、阿弥陀・薬師・千手の小ぶりな掛け仏が並んでいて、ケースの正面に立つと、背後に3体の神像が重なって、”本地垂迹”の思想を実感できる構成になっている。これは楽しい会場デザインの妙。

 青岸渡寺の、愛らしい銅造観音菩薩像2体は、あ、奈良博の『西国三十三所展』で見たものだ、とすぐに分かった。「埋められた仏像」だったんですね、彼らは。「沙門行誉埋納の曼荼羅壇」も面白かった。像高15センチくらいの仏像(光背・蓮華座つき)による立体曼荼羅セットなのである。仏像以外に、剣や鈷杵や法輪が載った蓮華座もある。実際にこれらを並べてみた曼荼羅壇の復元写真に私は興味津々!

 この展覧会、実物の文化財だけではなくて、写真パネルやバナー(幕)や映写映像が、豊富に取り入れられていた。檀王法林寺の『熊野権現影向図』は、参考の写真展示だけだったが、強烈なインパクトだった(コメント「熊野権現があらわれた!」ってw)。京都のお寺さんなのか。ホンモノ見たいなあ。

 それから、熊野古神宝類がたっぷり見られたのは全くの想定外。えっ、これも出てたの!?という感じ。ポスターや博物館のHPでは、あまり押していなかったように思う。特に挿頭華(かざしのはな)は、私の長年の憧れだったので、とても嬉しかった(2005年の世田谷美術館でも見られなかったのである)。

 牛馬童子像(複製)も懐かしかった。かつて、乏しい道標だけをたよりに、湯の峯王子から牛馬童子まで歩いたことがあって(観光客の少ない冬の日で、すれ違ったハイカーは1組だけ)最後に、木立の陰に愛らしい石像を見つけたときの、驚きと喜びがよみがえるように思った。熊野には、そんなに何度も来たことがあるわけではないのだが、「土地の記憶」はとても鮮明である。
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