○本館16室 シリーズ「歴史を伝える」特集陳列『世界と日本』(2009年8月18日~10月12日)
『皇室の名宝』のあとは、本館の平常展に流れる。16室(歴史資料)では、江戸時代を中心とした国際交流に関する資料が紹介されている。今回は文献資料が多くて、書誌好きには嬉しかった。注目は、嶺田楓江著『海外新話』。アヘン戦争の顛末を庶民向けに記したもの。挿絵多数。今も中国の民族英雄と称えられる陳化成が、イギリス軍の砲撃を浴びて討死する図とか、屈辱にも「逆賊義律」を饗応する図とか。義律は、調べたら、ジョージ(?)・エリオットのことらしい。この本、幕府によって刊行停止を命じられている。
仮名垣魯文の『万国航海西洋道中膝栗毛』の挿絵は歌川(落合)芳幾だったのか。北八・弥次郎兵衛は、当たり前だが海路でヨーロッパに向かうので、シンガポールやスエズにも立ち寄っているんだなあ。『韓客人相筆話』は明和年間、日本を訪れた朝鮮通信使との筆談集だという。刊本で出版されたということは、これを読みたいという一定の需要が、日本の知識人の間にあったのだろう。
『尊海渡海日記屏風』は、高麗版大蔵経を求めて朝鮮に渡った(その目的は果たせず)尊海が、瀟湘八景図屏風のウラに記した紀行文。その歴史的価値ゆえに「重文」指定を受けているのだが、私は、以前、大和文華館の『崇高なる山水』で、オモテの瀟湘八景図を拝見している。今回も展示ケースの横から覗き込むと、オモテの水墨画がちょっとだけ見える。
気になったのは、湯島聖堂旧蔵の天体儀。孔子を祭る釈奠(せきてん)の儀器として伝わったそうだ。ええ? 儒教と道教の区別も怪しいものだなあ。
このほかのお奨めは、特別1・2室で開催中の特集陳列『中国書画精華』(前期:2009年9月15日~10月12日)。久しぶりに梁楷の『出山釈迦図』ほか三幅対が見られる。詳細はこちら(2006年公開時の記事)で。
3室(仏教の美術)の『文覚上人像』(京都・神護寺蔵)は、たぶん神護寺三像と同じくらいの大きさ。この春、私は神護寺の「虫払い」で見てるのかなあ。記憶にない。ちょうどその正面に、文覚自筆の『書状案断簡』も展示されている。11室(彫刻)には、島根・赤穴八幡宮蔵の八幡三神坐像。初めてかと思ったら、2003年、2006年、2008年と、東博で展示されているらしい。単に私の神像に対する関心が、これまで薄かったということか。衣冠束帯の男神像がよかった。
また、3室(宮廷の美術)では、来週から東京都美術館で始まる『王朝の和歌守(うたもり)』展にあわせて(?)俊成・定家・為家・為氏ら、冷泉家の歌人たちの書跡を展示。この時期は、平常展示も多面的に見ごたえがある。
『皇室の名宝』のあとは、本館の平常展に流れる。16室(歴史資料)では、江戸時代を中心とした国際交流に関する資料が紹介されている。今回は文献資料が多くて、書誌好きには嬉しかった。注目は、嶺田楓江著『海外新話』。アヘン戦争の顛末を庶民向けに記したもの。挿絵多数。今も中国の民族英雄と称えられる陳化成が、イギリス軍の砲撃を浴びて討死する図とか、屈辱にも「逆賊義律」を饗応する図とか。義律は、調べたら、ジョージ(?)・エリオットのことらしい。この本、幕府によって刊行停止を命じられている。
仮名垣魯文の『万国航海西洋道中膝栗毛』の挿絵は歌川(落合)芳幾だったのか。北八・弥次郎兵衛は、当たり前だが海路でヨーロッパに向かうので、シンガポールやスエズにも立ち寄っているんだなあ。『韓客人相筆話』は明和年間、日本を訪れた朝鮮通信使との筆談集だという。刊本で出版されたということは、これを読みたいという一定の需要が、日本の知識人の間にあったのだろう。
『尊海渡海日記屏風』は、高麗版大蔵経を求めて朝鮮に渡った(その目的は果たせず)尊海が、瀟湘八景図屏風のウラに記した紀行文。その歴史的価値ゆえに「重文」指定を受けているのだが、私は、以前、大和文華館の『崇高なる山水』で、オモテの瀟湘八景図を拝見している。今回も展示ケースの横から覗き込むと、オモテの水墨画がちょっとだけ見える。
気になったのは、湯島聖堂旧蔵の天体儀。孔子を祭る釈奠(せきてん)の儀器として伝わったそうだ。ええ? 儒教と道教の区別も怪しいものだなあ。
このほかのお奨めは、特別1・2室で開催中の特集陳列『中国書画精華』(前期:2009年9月15日~10月12日)。久しぶりに梁楷の『出山釈迦図』ほか三幅対が見られる。詳細はこちら(2006年公開時の記事)で。
3室(仏教の美術)の『文覚上人像』(京都・神護寺蔵)は、たぶん神護寺三像と同じくらいの大きさ。この春、私は神護寺の「虫払い」で見てるのかなあ。記憶にない。ちょうどその正面に、文覚自筆の『書状案断簡』も展示されている。11室(彫刻)には、島根・赤穴八幡宮蔵の八幡三神坐像。初めてかと思ったら、2003年、2006年、2008年と、東博で展示されているらしい。単に私の神像に対する関心が、これまで薄かったということか。衣冠束帯の男神像がよかった。
また、3室(宮廷の美術)では、来週から東京都美術館で始まる『王朝の和歌守(うたもり)』展にあわせて(?)俊成・定家・為家・為氏ら、冷泉家の歌人たちの書跡を展示。この時期は、平常展示も多面的に見ごたえがある。