見もの・読みもの日記

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ブサイク好み/江戸の人物画(府中市美術館)

2011-04-01 23:27:41 | 行ったもの(美術館・見仏)
府中市美術館 企画展『江戸の人物画-姿の美、力、奇』(前期:2011年3月25日~4月17日)

 東北地方太平洋沖地震の影響で、首都圏の美術館・博物館も多くが休館を余儀なくされていたが、先週末あたりから少しずつ開き始めた。

 同展は、これまで「百花の絵」(→見ていない)「動物絵画」「山水に遊ぶ」と、テーマ別に江戸絵画を扱って来た同館が、今度は描かれた「人のかたち」に注目した展覧会。展示リストを見ると「個人蔵」が多くて、ああ、めずらしい作品を集めてくれたんだなあ、と嬉しい。

 冒頭は、春木南湖(よく知らない)の『項羽図』と円山応挙の『布袋図』で始まる。デカいなあ、と思ったけど、なぜ人は「等身大」の人の姿を描きたがるのか、という問題提起を読んで、あ、そうかと思った。デカくはないんだ。人間を人間のサイズで描こうとするのは、自然なことなのかもしれない、と。

 美人画では、司馬江漢描く鈴木春信ふうの『夏月・冬月図』に驚いた。よく見ると、着物の皺の影が立体的だけど。蘆雪の『唐美人図』は、細い肩の美人で、ちらりと見せた赤い靴先以外は、清楚を通り越し、無表情で取りつく島もなさそう。蘆雪って、おもしろいなあ、こういう女性が好きだったんだろうか。あとで出てくる『唐子睡眠図』の、あまりにも無防備にブサイクな顔をさらしているところも好きだ。椿椿山の『高久靄像』は、病に苦しむ薄汚い中年男の図で…どうも私は、美男美女図より、そうでない人物図に魅力を感じてしまうようだ。呉春の『松尾芭蕉図』も、ケレンのない、正面向きの爺さん顔が好きだし。

 いや、私の趣味ではなくて、主催者のせいだと思う。中国の聖賢、仙人、布袋さん、妖怪、西洋人、みんな癖のある、もとい、味のある表情をしている。京博の『舞踊図』は金地屏風に、思い思いのポーズを決めた6人の女性が描かれており、美人図の範疇に入るだろう。ただし、よく似たサントリー美術館の『舞踊図』に比べると、着物の柄や女性の顔立ちの田舎くさいところが、私はこっちのほうが好き。

 解説によれば、まさに3月11日、仙台市博物館および栃木県立博物館で展示品を借り受けた直後に、あの地震に遭遇したそうである。延期があったとはいえ、本展が開催になってよかった。後期(4/19~)は大幅展示替えなので、また来たい。展示品の一部(蕭白の蝦蟇仙人とガマとか)をアレンジにしたゴム印で、屏風をつくるコーナーが楽しかった。
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