すっかり定着した感のある東博の『博物館に初もうで』企画。特別展『北京故宮博物院200選』の混み具合の偵察を兼ねて、1/8(日)に見てきた。
■本館 特別1室・特別2室 東京国立博物館140周年特集陳列『天翔ける龍』(2012年1月2日~1月29日)
まずはお楽しみの干支企画。『十六羅漢像(第十四尊者)』(平安時代・11世紀)には、大口を開けて羅漢を仰ぎ見る龍が描かれているが、この龍、鼻が長い。ディズニーキャラのグーフィーみたいだ。別の『十六羅漢像(第十五尊者)』(南宋時代・12世紀)は、出現した龍に怯えて、小童が羅漢の衣に隠れようとしている。あ、よくあるパターンの原型になった図像か。キャプションに「金大受筆、南宋時代・12世紀」とあるので、落款を探したら、右上方に墨書らしきものがあったけど、読めなかった。この龍は、むしろちょっと受け口な感じがする。
今年のポスターは曽我直庵の『龍図』だが、私は、ぬっと顔を出した岩佐又兵衛の龍図が好きだ。ふくらませた鼻の穴に、憎めない愛嬌がある。もとは六曲一双(10図)の屏風で、東博は、水牛に乗る老子、龍、虎の3図を所蔵しているそうだ。
見上げるばかりの巨大な書「龍飛鳳舞」には「御筆」とあったので、何天皇?と思って近づいたら、清の康熙帝の筆だった。折り目正しく、しかも雄渾な楷書。やっぱり机の上で書いたのかな。一字書くごとに、両脇に控えた宦官が、うやうやしく料紙をずらしたりしたんだろうなあ…と想像してしまった。紙は薄手で、表面がつるつるしているように感じられた。ほか、自在置物の龍など。2室には磁器、工芸、考古ものなど。
■その他の総合文化展(平常展)
国宝室は雪舟の『秋冬山水図』2幅。また「新年特別公開」で、一般の展示室に国宝の『古今和歌集(元永本)』が出ていたりした。衝撃的によかったのは『日月山水図屏風』(室町時代・16世紀)。同じ名前で呼ばれる河内長野の金剛寺の屏風と、どっちが古いんだろう?と思ったら、後者は「15世紀半ばとする説から、16世紀後半とする意見も」(Wiki)あって定まらないらしい。今回、見ることのできた『日月山水図屏風』は、金剛寺の屏風ほど装飾的でないが、茫洋として、抽象絵画みたいなダイナミックな魅力がある。e国宝に図像あり。そうか、左右は、元来別の作品であったのか。
今期は「書」が贅沢。特別展のレポートでも触れたが、書の三蹟(三跡)、小野道風・藤原佐理・藤原行成の作品がまとめて見られるのは、めったにない機会で、興奮した。もしかして、特別展に出陳されている中国の書に対抗意識を燃やしている? 絵画も、2階に『太公望・文王図』や『長恨歌図屏風』があり、1階に横山大観筆『五柳先生』を出しているのは、特別展を見に来る中国系のお客さん(実際、多かった)を当て込んだかな?と思ったが、そんな配慮がなくても、もともと日本美術における中国の影響は圧倒的だな…。
■本館 特別5室 故宮VR『《紫禁城・天子の宮殿》-北京故宮博物院200選 特別版』(2012年1月2日~2月19日)
最後に、本館1階の奥の部屋で上映中のVR(バーチャルリアル)プログラム。以前、印刷博物館で故宮VRを見たことがあったので(記事)、それと同じかな?と思ったが、コンテンツが増えていて、より面白かった。印刷博物館バージョンは、太和殿の前庭と太和殿の中(玉座周辺)だけだったが、今回は、西太后が垂簾聴政をおこなった養心殿の東暖閣や、乾隆帝の書斎・西暖閣の三希堂などを覗くことができる。
ふだんは予約制のシアターで上映されるVRだが、今回のプログラムは流しっぱなしで、会場出入り自由。この形式のほうが見やすくていいんだけどな。
※最後に、久しぶりに東博の「特別展」情報を見たら、秋にまた『中国 王朝の至宝』展があるらしい。「歴代王朝の都ないし中心地域に焦点を当て」って、どのへんの時代と地域になるんだろう? 個人的には塞北と江南押しなんだが…。
■本館 特別1室・特別2室 東京国立博物館140周年特集陳列『天翔ける龍』(2012年1月2日~1月29日)
まずはお楽しみの干支企画。『十六羅漢像(第十四尊者)』(平安時代・11世紀)には、大口を開けて羅漢を仰ぎ見る龍が描かれているが、この龍、鼻が長い。ディズニーキャラのグーフィーみたいだ。別の『十六羅漢像(第十五尊者)』(南宋時代・12世紀)は、出現した龍に怯えて、小童が羅漢の衣に隠れようとしている。あ、よくあるパターンの原型になった図像か。キャプションに「金大受筆、南宋時代・12世紀」とあるので、落款を探したら、右上方に墨書らしきものがあったけど、読めなかった。この龍は、むしろちょっと受け口な感じがする。
今年のポスターは曽我直庵の『龍図』だが、私は、ぬっと顔を出した岩佐又兵衛の龍図が好きだ。ふくらませた鼻の穴に、憎めない愛嬌がある。もとは六曲一双(10図)の屏風で、東博は、水牛に乗る老子、龍、虎の3図を所蔵しているそうだ。
見上げるばかりの巨大な書「龍飛鳳舞」には「御筆」とあったので、何天皇?と思って近づいたら、清の康熙帝の筆だった。折り目正しく、しかも雄渾な楷書。やっぱり机の上で書いたのかな。一字書くごとに、両脇に控えた宦官が、うやうやしく料紙をずらしたりしたんだろうなあ…と想像してしまった。紙は薄手で、表面がつるつるしているように感じられた。ほか、自在置物の龍など。2室には磁器、工芸、考古ものなど。
■その他の総合文化展(平常展)
国宝室は雪舟の『秋冬山水図』2幅。また「新年特別公開」で、一般の展示室に国宝の『古今和歌集(元永本)』が出ていたりした。衝撃的によかったのは『日月山水図屏風』(室町時代・16世紀)。同じ名前で呼ばれる河内長野の金剛寺の屏風と、どっちが古いんだろう?と思ったら、後者は「15世紀半ばとする説から、16世紀後半とする意見も」(Wiki)あって定まらないらしい。今回、見ることのできた『日月山水図屏風』は、金剛寺の屏風ほど装飾的でないが、茫洋として、抽象絵画みたいなダイナミックな魅力がある。e国宝に図像あり。そうか、左右は、元来別の作品であったのか。
今期は「書」が贅沢。特別展のレポートでも触れたが、書の三蹟(三跡)、小野道風・藤原佐理・藤原行成の作品がまとめて見られるのは、めったにない機会で、興奮した。もしかして、特別展に出陳されている中国の書に対抗意識を燃やしている? 絵画も、2階に『太公望・文王図』や『長恨歌図屏風』があり、1階に横山大観筆『五柳先生』を出しているのは、特別展を見に来る中国系のお客さん(実際、多かった)を当て込んだかな?と思ったが、そんな配慮がなくても、もともと日本美術における中国の影響は圧倒的だな…。
■本館 特別5室 故宮VR『《紫禁城・天子の宮殿》-北京故宮博物院200選 特別版』(2012年1月2日~2月19日)
最後に、本館1階の奥の部屋で上映中のVR(バーチャルリアル)プログラム。以前、印刷博物館で故宮VRを見たことがあったので(記事)、それと同じかな?と思ったが、コンテンツが増えていて、より面白かった。印刷博物館バージョンは、太和殿の前庭と太和殿の中(玉座周辺)だけだったが、今回は、西太后が垂簾聴政をおこなった養心殿の東暖閣や、乾隆帝の書斎・西暖閣の三希堂などを覗くことができる。
ふだんは予約制のシアターで上映されるVRだが、今回のプログラムは流しっぱなしで、会場出入り自由。この形式のほうが見やすくていいんだけどな。
※最後に、久しぶりに東博の「特別展」情報を見たら、秋にまた『中国 王朝の至宝』展があるらしい。「歴代王朝の都ないし中心地域に焦点を当て」って、どのへんの時代と地域になるんだろう? 個人的には塞北と江南押しなんだが…。