見もの・読みもの日記

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像内のタイムカプセル/仏像からのメッセージ(神奈川県立金沢文庫)

2012-01-30 23:21:12 | 行ったもの(美術館・見仏)
神奈川県立金沢文庫 特別展 興正菩薩叡尊鎌倉下向750周年記念2『仏像からのメッセージ-像内納入品の世界-』(2011年12月9日~2012年2月5日)

 仏舎利、文書、印仏、摺仏など、仏像の像内納入品を通して、中世の人々の精神世界に迫る展覧会。このところ「像内納入品」に着目した展覧会って、ちょっとブームのような感じがする。

 展示品は、運慶作の大威徳明王坐像(神奈川・光明院)など、金沢文庫では「おなじみ」の仏像のほかに、個人蔵・明~清時代の小ぶりな地蔵菩薩坐像。金属製の五臓(?)に糸くず、紐、端布、白い玉石(?)などが、内臓をあらわしているらしい。奈良・西大寺の大黒天立像(鎌倉時代)は、小さな大黒天坐像や弁財天の懸仏を、丁寧に曲物の容器に入れた上で、像内に収めている。大阪・大通寺の阿弥陀如来像(平安~鎌倉時代)には大量の文書。修復のため、頭部を外して、上から覗いたときの写真が添えてあって、肩までびっしり詰まった文書がシュール。文化庁所蔵の阿弥陀如来立像(文永7年)は、さらにシュールで、上半身を取り外すと、団子のように縦三連に積み上げた蓮華の蕾が現れる。ひとつずつ離すと、黒光りする手榴弾か、兵隊さんの水筒に見える。以上は、仏像+像内納入品がセットで展示されていたもの。

 像内納入品だけの展示は、嵯峨釈迦堂の釈迦如来立像の頭部に収められていた宝治2年(1248)の「賢任造像願文及び奉加帳」と錦(?)の袋が出ていた。あまり巧い筆跡でないところに、施主・発願者たちのリアリティを感じた。嵯峨の釈迦如来というと、五臓六腑ばかりが印象的だったけど、こんなものも収められていたのか。

 東京人には親しみ深い高幡不動の本尊(これは展示できないなー)には、大量の文書が収められているそうだ。大部分は山内経之という在地武士が妻子に送った書状で、書状にはびっしりと印仏が捺されている(大黒天の印仏が珍しい)のだが、読みにくい書状を律儀に翻刻してくれているのが嬉しい。「如何にしても酒が買ひたく」なんてあると、つい微笑まれる。

 称名寺の釈迦如来立像、奈良・西大寺の文殊菩薩坐像なども、展示は像内品のみで、パネルの写真と見比べながらしみじみ「本体」のお姿を思い描く。町田の国際版画美術館から摺仏がたくさん来ていた。2010年の企画展『救いのほとけ-観音と地蔵の美術-』で見たもので、あの展覧会は、地味な像内納入品に着目した比較的早い例だったのではないかと思う。

 奉加帳をICチップにして仏像に収めるとか…いまの技術でも十分できそうだけど、実際にやっていたりするのだろうか。でも、すぐに読めなくなるだろうなあ。こういう場合、紙と筆のアナログが最も強い。
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