見もの・読みもの日記

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図録で楽しむ/歌川国芳展(森アーツセンターギャラリー)

2012-01-22 00:56:26 | 行ったもの(美術館・見仏)
森アーツセンターギャラリー 『没後150年 歌川国芳展』(2011年12月17日~2012年2月12日)

 歌川国芳(1797-1861)の没後150年にあたる2011年を記念して開催される大規模展。大阪展(大阪市立美術館)、静岡展(静岡市美術館)を経て、ついに東京に乗り込んできた。東京展の会場が、六本木の森アーツセンターだと知ったときは、ええ~(客が入るのかな?)と思わないでもなかったが、江戸っ子国芳には似合いかもしれない、と思いなおした。

 それが、先週1/15(日)に行ってみたら、チケット売り場前で20分ほど並ばされた。エレベーターで52階に上がると、会場入口で、若干の入場規制。嫌な予感がしたが、会場に入ると、バーゲンセール会場みたいな大混雑だった。大画面の油絵や書画ならともかく、小さな浮世絵は、他人の肩越しでは鑑賞できない。残念だが、レビューを書く内容もないのだが、見に行ったことだけは記録に留めておこうと思う。

 公式サイトの展覧会趣旨には「代表作はもちろん、これまで未紹介であった傑作、新発見の優品の数々を含む約420点を展観」するとある。なるほど。買ってきた図録(これは秀作!)を眺めていると、長年の国芳ファンである私も初めて見る作品がけっこう入っている。その一方で、ん?アレがないぞ?と思う作品もある。後者は、たとえば『大物之浦海底之図』(平知盛と平氏の武将たちのもとに平家蟹が列をなして伺候する図)、『誠忠義士肖像 中村勘助正辰』(火鉢を投げつけられた赤穂義士のストップモーション)、『百人一首之内 崇徳院』(大河ドラマ『平清盛』で崇徳上皇を演じる俳優・井浦新さんが好きだという作品※記事。私も好き)等々。

 逆に、これは初見(かな?)と思った印象的な作品は『清盛入道布引滝遊覧 悪源太義平霊討難波次郎』。すげー。このめちゃくちゃな迫力。お客さんたちが、思わず画面(ガラス)に指を伸ばして、飛び散る稲妻の迫力をなぞるようにしながら、興奮して会話していた気持ちが分かるように思う。武者絵は、実に発色のよい、美麗な刷り上がりの作品を集めている。大蛇とか大トカゲとか、大猿、大イノシシなどの化け物と組み合っている武者絵が多い。二つ(以上)の肉体の絡みかたが複雑で、一瞬、両者を弁別できないくらいだ。それにしても国芳の描く武者は男前だなー。

 三枚続きの大作版画には、初見かな?と思うものがいくつかあった。あと、役者絵も、ほかのジャンルに比べると、あまり意識して見たことがなかったが、やっぱりいいなあ。役者の顔もいいが、衣装が、色も柄も、その合わせ方も、素晴らしくオシャレ(実際に舞台で使われていた通りなのだとしたら、江戸人のセンスってすごい!)。『五代目市川海老蔵』は肉筆で、顔の部分に紙を貼って描き直してあった。

 以上、図録は絶対のお買い得。でも、何枚かの拡大写真を見ると、実に細かく毛髪の流れやまつ毛、瞳の虹彩まで、色を変えて摺り分けていることが分かるので、それこそ「自炊」して、デジタル画像で心ゆくまで細部を楽しみたくなる。
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