○京都国立博物館 特別展覧会『王朝文化の華-陽明文庫名宝展-』(2012年4月17日~5月27日)
京都市右京区宇多野にある陽明文庫には、五摂家の一つ、近衞家所伝の典籍・古文書が収められている。本展は、藤原道長自筆の『御堂関白記』や『大手鑑』など、国宝8件・重文60件を含む名品を展示する「これまでにない規模の特別展覧会」と紹介されている。
東博では、2008年に陽明文庫創立70周年記念特別展『宮廷のみやび-近衞家1000年の名宝』が開かれている。あれもかなり盛大な展覧会だった。全点数は、今回の京博展より多かったんじゃないだろうか。もちろん道長関連の文書や典籍も来ていたし、「伝世の品」セクションで『熊野懐紙』や『粘葉本和漢朗詠集』と対面したことも覚えている。だが、個人的にいちばん印象深かったのは、江戸中期の近衛家当主、予楽院・近衛家熙(いえひろ)の関連品だった。
それに比べると今回は、オーソドックスに近衛家の源流・藤原北家から始まるのだけど、冒頭の藤原鎌足像とか藤原高子願経(京博所蔵)とかが、陽明文庫/近衛家とどうつながるのか、あまり詳しい説明はなかったように思う。京都人には常識すぎて、そんな説明不要なんだろうか。
今回、『御堂関白記』は、自筆本14巻、古写本12巻を(前後期で)全巻展示。具注暦に書き込まれた自筆本と、記事のみを写した古写本を見比べることができたのが面白かった。中右記とか平範記とか、学生時代に翻刻でしか見たことのない資料がぞろぞろ…。でも、意外と漢文というのは、この時代の筆跡でも読めるものだ。むしろ和歌や消息など仮名資料は、読めそうで読めない。
だが、仮名は美しい。歴史資料としてまるごと伝えられてきたのだから、○○切という名前がついていないのは当たり前なのだが、名品と讃えられる古筆に劣らない美しい仮名が次々に現れ、垂涎ものである。
文書から一転、鎌倉時代の太刀を並べたセクションでは、造作の美しさに見入った。近世は、家熙よりも、むしろ信尹(のぶただ、1565-1614)押しの感じがした。「寛永の三筆」の一人である。このへんから、絵画、茶道具(金彩馬上杯を含む)、香道具、雛人形など、展示資料の幅が広がってくる。
最後の部屋は「近世・近代の絵画」という超予想外の展開。でも、これが面白かった。橋本雅邦、下村観山の作品は、これが初公開だという。なにしろ、陽明文庫の保管史料は約20万点に及ぶというから、まだ詳細調査の行き届いていないものや、近代に収蔵されて公開の機会がないものもたくさんあるのだろう。これらを東京で見られる機会はいつのことか、と思うと、京都まで見にいってよかった。
2時間くらい見て、17時頃に博物館を出た。早めの夕食は、以前入れなかった焼野菜の「五十家(ISOYA)」に行ってみたが、今回もすでに予約で満席。炭火串焼のお店「とりと」に連れていってもらう。やっぱり京都人は、地元ならではのお店を知っている。今後のためにリンクを貼っておこう。
京都市右京区宇多野にある陽明文庫には、五摂家の一つ、近衞家所伝の典籍・古文書が収められている。本展は、藤原道長自筆の『御堂関白記』や『大手鑑』など、国宝8件・重文60件を含む名品を展示する「これまでにない規模の特別展覧会」と紹介されている。
東博では、2008年に陽明文庫創立70周年記念特別展『宮廷のみやび-近衞家1000年の名宝』が開かれている。あれもかなり盛大な展覧会だった。全点数は、今回の京博展より多かったんじゃないだろうか。もちろん道長関連の文書や典籍も来ていたし、「伝世の品」セクションで『熊野懐紙』や『粘葉本和漢朗詠集』と対面したことも覚えている。だが、個人的にいちばん印象深かったのは、江戸中期の近衛家当主、予楽院・近衛家熙(いえひろ)の関連品だった。
それに比べると今回は、オーソドックスに近衛家の源流・藤原北家から始まるのだけど、冒頭の藤原鎌足像とか藤原高子願経(京博所蔵)とかが、陽明文庫/近衛家とどうつながるのか、あまり詳しい説明はなかったように思う。京都人には常識すぎて、そんな説明不要なんだろうか。
今回、『御堂関白記』は、自筆本14巻、古写本12巻を(前後期で)全巻展示。具注暦に書き込まれた自筆本と、記事のみを写した古写本を見比べることができたのが面白かった。中右記とか平範記とか、学生時代に翻刻でしか見たことのない資料がぞろぞろ…。でも、意外と漢文というのは、この時代の筆跡でも読めるものだ。むしろ和歌や消息など仮名資料は、読めそうで読めない。
だが、仮名は美しい。歴史資料としてまるごと伝えられてきたのだから、○○切という名前がついていないのは当たり前なのだが、名品と讃えられる古筆に劣らない美しい仮名が次々に現れ、垂涎ものである。
文書から一転、鎌倉時代の太刀を並べたセクションでは、造作の美しさに見入った。近世は、家熙よりも、むしろ信尹(のぶただ、1565-1614)押しの感じがした。「寛永の三筆」の一人である。このへんから、絵画、茶道具(金彩馬上杯を含む)、香道具、雛人形など、展示資料の幅が広がってくる。
最後の部屋は「近世・近代の絵画」という超予想外の展開。でも、これが面白かった。橋本雅邦、下村観山の作品は、これが初公開だという。なにしろ、陽明文庫の保管史料は約20万点に及ぶというから、まだ詳細調査の行き届いていないものや、近代に収蔵されて公開の機会がないものもたくさんあるのだろう。これらを東京で見られる機会はいつのことか、と思うと、京都まで見にいってよかった。
2時間くらい見て、17時頃に博物館を出た。早めの夕食は、以前入れなかった焼野菜の「五十家(ISOYA)」に行ってみたが、今回もすでに予約で満席。炭火串焼のお店「とりと」に連れていってもらう。やっぱり京都人は、地元ならではのお店を知っている。今後のためにリンクを貼っておこう。