見もの・読みもの日記

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ショック、再び/蕭白ショック!!(千葉市美術館)

2012-05-15 23:37:35 | 行ったもの(美術館・見仏)
千葉市美術館 『蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち』(2012年4月10日~5月20日)

 前期・後期という表現は使っていないが、5/2以降、ほとんどの作品が入れ替わったので、再び「蕭白ショック」の電撃に撃たれてきた。導入の「蕭白前史」は、ふむふむ、なるほど、蕭白の画風に似ている、などと訳知り顔で見ているのだが、やっぱり本物の蕭白(後期は『李白酔臥図屏風』)がどーんと現れると、全て木端微塵に吹っ飛んでしまう。

 『草子洗小町』(和様の人物)『鷹図押絵貼屏風』(細密)『鳥獣人物図押絵貼屏風』(略画)『唐人物図』(中国の人物)と、蕭白の多面性を見せたあと、『牧童群牛図』で、右隻のデカイ黒牛に驚く。禅の十牛図?と思わせておいて、左隻では、闘牛をしているのに笑ってしまった。『群童遊戯図』は、図録に収録されている写真よりも、背景の銀箔をずっと暗く感じる。高価な銀地屏風に、こんなハナ垂れの悪童どもを描いてよかったのかな。人気のあった作品らしいけれど。

 次室が、第一の山場。三重・朝田寺の『唐獅子図』。これもデカイ。そして、何度見ても愛嬌があって、かわいい。しかし、目はすでに正面の『群仙図屏風』に吸いつけられている。キャプションに云う、「これが蕭白ショック!!だ」。いや、分かるねえ、納得。かつて私は、この作品、気持ち悪くて正視できなかったのだ。2005年、京博の蕭白展を、わざわざ東京から見に行ったときでさえ、まだ及び腰だった。しかし、歳月は人に耐性をつける。今回、私は、ガラスに顔をすり寄せて、この作品を、舐めるように隅から隅まで楽しんだ。

 描かれた八人は、図録の解説によると、右隻は右から、董奉(医術に長けた仙人。中国の武侠ドラマに登場しそうなキモカッコよさがある)、蕭史(笙の名手)、李鉄拐(足が不自由で鉄の杖をつく。全身が、こわれかけのテレビ画像みたいにブレている)、呂洞賓(龍の角にまたがって、颶風とともに出現)。細い線の執拗な繰り返しで描かれた水の描写が、椎茸の軸みたいだ。

 左隻は、福禄寿の福星(無邪気な子どもたちに懐かれているが、絶対、抱き上げたガキを食う気だろう)、寿星(鯉の頭をつかんで盥で洗っている)、劉海蟾(赤い唇)、西王母(年齢不詳の麗人)。仙人たち以上に魅力的なのが、動物たち。蒼ざめたトラ、王者の風格の鳳凰、黄色い鶴(本当にいるの?)と白い鶴。メレンゲでできたような白いガマ。人面アルマジロみたいな珍獣…。最初の生理的拒絶反応が薄れると、しびれたような酩酊感が湧いてきて、いつしかファンになっている。個人的体験でいうと、諸星大二郎のマンガに抱く感じと少し似ている。

 階下へ。三重県立美術館所蔵の旧永島家襖も『竹林七賢図』を除いて、全て入れ替わっていた。鷹に怯えて身を隠すサルとか、呵々大笑するタヌキとか、小動物の描写がかわいい。いよいよクライマックス「蕭白円熟」。『松に孔雀図襖』に驚く。なんだ、この超絶した気品と美しさは。この作品に先に出会って、『群仙図』みたいな作品を後から見たら、ショックだろうなあ。

 〆めは山水図。久しぶりに京博の『山水図押絵貼屏風』を見て、いつも名品が見放題だった京博の常設展示館(工事閉館中)をなつかしく思い出した。同様に、近江神宮蔵『楼閣山水図(月夜山水図)屏風』を見ると、私は琵琶湖文化館(休館中)の、旧式の細長い展示室を思い出す。でもこの『楼閣山水図』、月の光に照らされた静謐な光景だと思っていたが、よく見ると湖上にも陸上にもたくさん人の姿があって、意外とにぎやかな山水図だと気づいた。

 若冲ブームは2000年の京博から始まったと言われているけど、それに匹敵する蕭白ブーム、くるかな? 観客は、前期より後期のほうが多かったように思う。なんとなくオジサンの姿が目立った。うむ、女性より男性に好かれる画家かもしれない、蕭白って。

※前期レポートは、こちら
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