○根津美術館 特別展『KORIN展 国宝「燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」』(2012年4月21日~5月20日)
これを見に行ったのが、大型連休最終日(5/6)。最後は琳派で肩の力を抜いて、連休明けに備えて英気を養おうと思った。最初の展示室に入ると、もうすぐそこ(向かい側の長い壁)に根津美術館蔵の『燕子花図屏風』六曲一双。その隣り(左)に、さらに六曲一双のメトロポリタン美術館蔵『八橋図屏風』。まあ、なんと贅沢な空間だこと。
はじめは、やっぱり色彩の美しさに目を奪われる。カキツバタの青(藍?紺?群青?…なんて形容するのが正しいのだろう)。さわやかな緑。かがやく黄金色。根津の『燕子花図』のほうが、色がはっきりしている。花を花として描かず、記号として描いている感じ。メトロポリタンの『八橋図』のカキツバタは、もう少し写実的で、細部の形態にこだわっている分、色の印象は弱い。どうやら木橋の表面は濡れており(雨上がりなのかも)、そこに葉の緑が、かすかに滲んだように映っている。
しかし、光琳の屏風の本当の面白さは、色彩よりも周到に計算された「構成」だと思う。ほぼ同じ背丈のカキツバタの株が、高く低く、厚く薄く、配置された平面が、前後に折り曲げられ、立ち上がることで、おそろしく変化に富んだ空間が現れる。私は、右へ左へ、うろうろしながら(邪魔だったかなあ)屏風の表情の変化を楽しんだ。『八橋図』の画面を幾何学的に横切る橋の存在は、表情の変化を分かりやすくしているが、少し「ネタバレ」の感もある。根津の『燕子花図』のほうが、表情の変化に予測がつかないので、おもしろい。
ああ、でもこれって、水墨画の山水図屏風の愉しみに似ている、と思った。そうしたら、急にカキツバタの株が、山水画の松の木や岩山に見えてきた。光琳は、山水図の立体的な「構成」の面白さを、草花図で実現しようとしたのではないかしら…。
展示室2に進むと、私の大好きな『白楽天図屏風』があった。これも立体的な「構成」の意図が強く感じられる作品。平面で見ると、空間がねじれたような奇妙な感覚があるが、屏風を立てた状態だと、ダイナミックでこそあれ、特に違和感はない。抱一筆『青楓朱楓図屏風』は初めて見た。『光琳百図』に図があることから、光琳作品があり、それを抱一が模写したものと考えられるのだそうだ。赤-緑-金-紺という、強烈な色彩の対比を用いながら、品を失わない。ホントに天才だなあ、光琳。
最後になるが、もらった展示目録リーフレット(PDFファイル)を読んでいたら、「KORIN」展のロゴは、『燕子花図屏風』の光琳の署名「法橋光琳」の漢字パーツを分解し、調整を加えてデザインしたものだという。たとえば「K」は「橋」の木へんを逆さにしたもの。こういうお遊びは大好きだ。
展示室5は螺鈿。展示室6は「初夏の茶」で、サッパリしたデザインの釜や水指が涼しげだった。今年こそ庭園のカキツバタを見ていこうと思っていたのに、にわかに掻き曇っての土砂降り。幸い、展示を見ている間に、雨があがったので、長居をせずに帰ることにした。
これを見に行ったのが、大型連休最終日(5/6)。最後は琳派で肩の力を抜いて、連休明けに備えて英気を養おうと思った。最初の展示室に入ると、もうすぐそこ(向かい側の長い壁)に根津美術館蔵の『燕子花図屏風』六曲一双。その隣り(左)に、さらに六曲一双のメトロポリタン美術館蔵『八橋図屏風』。まあ、なんと贅沢な空間だこと。
はじめは、やっぱり色彩の美しさに目を奪われる。カキツバタの青(藍?紺?群青?…なんて形容するのが正しいのだろう)。さわやかな緑。かがやく黄金色。根津の『燕子花図』のほうが、色がはっきりしている。花を花として描かず、記号として描いている感じ。メトロポリタンの『八橋図』のカキツバタは、もう少し写実的で、細部の形態にこだわっている分、色の印象は弱い。どうやら木橋の表面は濡れており(雨上がりなのかも)、そこに葉の緑が、かすかに滲んだように映っている。
しかし、光琳の屏風の本当の面白さは、色彩よりも周到に計算された「構成」だと思う。ほぼ同じ背丈のカキツバタの株が、高く低く、厚く薄く、配置された平面が、前後に折り曲げられ、立ち上がることで、おそろしく変化に富んだ空間が現れる。私は、右へ左へ、うろうろしながら(邪魔だったかなあ)屏風の表情の変化を楽しんだ。『八橋図』の画面を幾何学的に横切る橋の存在は、表情の変化を分かりやすくしているが、少し「ネタバレ」の感もある。根津の『燕子花図』のほうが、表情の変化に予測がつかないので、おもしろい。
ああ、でもこれって、水墨画の山水図屏風の愉しみに似ている、と思った。そうしたら、急にカキツバタの株が、山水画の松の木や岩山に見えてきた。光琳は、山水図の立体的な「構成」の面白さを、草花図で実現しようとしたのではないかしら…。
展示室2に進むと、私の大好きな『白楽天図屏風』があった。これも立体的な「構成」の意図が強く感じられる作品。平面で見ると、空間がねじれたような奇妙な感覚があるが、屏風を立てた状態だと、ダイナミックでこそあれ、特に違和感はない。抱一筆『青楓朱楓図屏風』は初めて見た。『光琳百図』に図があることから、光琳作品があり、それを抱一が模写したものと考えられるのだそうだ。赤-緑-金-紺という、強烈な色彩の対比を用いながら、品を失わない。ホントに天才だなあ、光琳。
最後になるが、もらった展示目録リーフレット(PDFファイル)を読んでいたら、「KORIN」展のロゴは、『燕子花図屏風』の光琳の署名「法橋光琳」の漢字パーツを分解し、調整を加えてデザインしたものだという。たとえば「K」は「橋」の木へんを逆さにしたもの。こういうお遊びは大好きだ。
展示室5は螺鈿。展示室6は「初夏の茶」で、サッパリしたデザインの釜や水指が涼しげだった。今年こそ庭園のカキツバタを見ていこうと思っていたのに、にわかに掻き曇っての土砂降り。幸い、展示を見ている間に、雨があがったので、長居をせずに帰ることにした。