■京都国立博物館 特別展覧会 琳派誕生400年記念『琳派 京(みやこ)を彩る』(2015年10月10日~11月23日)
三連休に見てきた展覧会レポートをまとめて。琳派展は、めちゃくちゃ混んでいるに違いないので、入れなくても仕方ない、と思っていた。土曜日、京都に向かう新幹線の中でネットを見たら、朝一番の混雑が解消されたあとは「待ち時間なし」の情報が流れていた。半信半疑で美術館に向かうと、確かに入館待ちの列はない。これは、平成知新館(新館)が会場で、本館よりキャパが大きいため、どんどんお客を入れたためではないかと思う。会場内は大混雑だった。
順路の3階から見て行く。蒔絵・陶磁・色紙・歌巻など、わりと小物が多い。本阿弥家の家業にかかわる刀剣も。私は光悦の「俺様茶碗」(笑)シリーズをまとめて見ることができて満足。2階は絵画と屏風。宗達と伝宗達作品を集めた部屋はステキだった。伊勢物語図色紙って「芥川」以外に「河原の院」「渚の院の桜」なども残っているのだな。屏風は宗達と抱一の『風神雷神図屏風』を見ることができた。抱一筆『三十六歌仙図屏風』はプライスコレクションから。 大好きな光琳の『白楽天図屏風』は小西家伝来光琳関係資料に、素朴な模写(?)があって面白かった。1階は乾山、抱一、渡辺始興、芳中など。さまざまな美術館に分有されている資料をまとめて見る機会としては意義があったと思う。
なお、京博の特別展としては1976年の『日本国宝展』以来39年ぶりに来場者が30万人を突破したそうだ。すごいなあ。まあこういう企画で稼いだら、次は京博らしく儲からない企画をやってほしい。(※京都新聞2015/11/21)
■大津市歴史博物館 開館25周年記念企画展(第68回企画展)『比叡山-みほとけの山-』(2015年10月10日~11月23日)
琳派展からこちらに移動。無言だが熱心なお客さんが多くて、会場内に静かな熱気がじんわり満ちていた。同館が開館以来、比叡山とその周辺で行って来た調査を元に、優れた仏像や仏画、古文書などを紹介する展覧会。さりげなく「初公開」と記された仏像が多く、またその造形の素晴らしいことに感心した。展覧会のアイコンになっている延暦寺の千手観音立像(平安時代)は前にも見たことがあると思うが、あごが小さく横に広い顔、大きな黒目、厚い唇など異国風な趣き。延暦寺の四天王像(平安時代)も好きだ。袖の翻り方が装飾的で、踊っているように楽しそう。坂本本町・松禅院の観音菩薩立像など、ずいぐりした小像も多かった。めずらしいところでは、妙見菩薩(鎮宅霊符神)倚像(坂本・弘法寺、江戸時代)。足元に小さな玄武(亀の背中にとぐろを巻いた蛇)がちゃんといる。
文書資料、特に地図が大量に出ていたのも面白かった。坂本に「叡山文庫」というのがあるんだなあ。(※大津市歴史博物館:学芸員のブログ)
■国立歴史民族博物館(みんぱく)地域展示・通文化展示
最後にみんぱくに行ったのはいつだろう?と思ってブログを検索したら出てこない。ということは10年以上行っていないのだ。気になる展覧会はあるのだが、なかなか行くことができない。今回も直前の特別展(韓日食博)が終わってしまって、常設展(地域展示・通文化展示)しかやっていないことを承知で、久しぶりに訪ねた。一部閉室中であったにもかかわらず、面白くて2時間以上いてしまった。
ホームページによれば、同館は『展示基本構想2007』をもとに展示場を順次刷新中だという。2015年3月には南アジア展示と東南アジア展示が新しくなったばかり。この『基本構想2007』はホームページ上に公開されており(PDFファイル)読むと非常に興味深い。というか、今日、「民族」や「歴史」を掲げる博物館施設の悩みの深さを感じた。同構想は「地球規模の人・モノ・情報の交流の飛躍的な進展は、諸民族文化の劇的な変容を招くとともに、世界の諸民族のあいだに『自己の文化』や『自己の歴史』を注視する動きを加速させた」「その結果、一方的な民族誌記述や民族誌展示のあり方に対する、当の民族や文化の担い手からの異議申し立ては日増しに激しさを増している」という現状認識を踏まえ、「交流と越境と移動が常態となった現代の状況において、そうした状況に即した民族学博物館の展示の新たなありかたを求めるとすれば、それは双方向的・多方向的な交流の場、すなわち『フォーラム』として博物館を再編する以外ない」と結論づけている。
たとえば「日本」の展示に、さまざまなエスニック・グループの存在が取り上げられていたのは実践の一例かな。以前はこれほど明確なメッセージはなかったような気がする。韓国社会のキリスト教徒とか、アフリカに見られる欧米文化の影響とか、ヨーロッパも「ヨーロッパらしくない」土着的な民俗が取り上げられていたり、さまざまな固定イメージがくつがえる体験が面白かった。
↓館内レストランでは『韓日食博展』特別メニューを期間延長中だったので、青(緑)と黒の食材を使った「青玄御膳」をいただく。
三連休に見てきた展覧会レポートをまとめて。琳派展は、めちゃくちゃ混んでいるに違いないので、入れなくても仕方ない、と思っていた。土曜日、京都に向かう新幹線の中でネットを見たら、朝一番の混雑が解消されたあとは「待ち時間なし」の情報が流れていた。半信半疑で美術館に向かうと、確かに入館待ちの列はない。これは、平成知新館(新館)が会場で、本館よりキャパが大きいため、どんどんお客を入れたためではないかと思う。会場内は大混雑だった。
順路の3階から見て行く。蒔絵・陶磁・色紙・歌巻など、わりと小物が多い。本阿弥家の家業にかかわる刀剣も。私は光悦の「俺様茶碗」(笑)シリーズをまとめて見ることができて満足。2階は絵画と屏風。宗達と伝宗達作品を集めた部屋はステキだった。伊勢物語図色紙って「芥川」以外に「河原の院」「渚の院の桜」なども残っているのだな。屏風は宗達と抱一の『風神雷神図屏風』を見ることができた。抱一筆『三十六歌仙図屏風』はプライスコレクションから。 大好きな光琳の『白楽天図屏風』は小西家伝来光琳関係資料に、素朴な模写(?)があって面白かった。1階は乾山、抱一、渡辺始興、芳中など。さまざまな美術館に分有されている資料をまとめて見る機会としては意義があったと思う。
なお、京博の特別展としては1976年の『日本国宝展』以来39年ぶりに来場者が30万人を突破したそうだ。すごいなあ。まあこういう企画で稼いだら、次は京博らしく儲からない企画をやってほしい。(※京都新聞2015/11/21)
■大津市歴史博物館 開館25周年記念企画展(第68回企画展)『比叡山-みほとけの山-』(2015年10月10日~11月23日)
琳派展からこちらに移動。無言だが熱心なお客さんが多くて、会場内に静かな熱気がじんわり満ちていた。同館が開館以来、比叡山とその周辺で行って来た調査を元に、優れた仏像や仏画、古文書などを紹介する展覧会。さりげなく「初公開」と記された仏像が多く、またその造形の素晴らしいことに感心した。展覧会のアイコンになっている延暦寺の千手観音立像(平安時代)は前にも見たことがあると思うが、あごが小さく横に広い顔、大きな黒目、厚い唇など異国風な趣き。延暦寺の四天王像(平安時代)も好きだ。袖の翻り方が装飾的で、踊っているように楽しそう。坂本本町・松禅院の観音菩薩立像など、ずいぐりした小像も多かった。めずらしいところでは、妙見菩薩(鎮宅霊符神)倚像(坂本・弘法寺、江戸時代)。足元に小さな玄武(亀の背中にとぐろを巻いた蛇)がちゃんといる。
文書資料、特に地図が大量に出ていたのも面白かった。坂本に「叡山文庫」というのがあるんだなあ。(※大津市歴史博物館:学芸員のブログ)
■国立歴史民族博物館(みんぱく)地域展示・通文化展示
最後にみんぱくに行ったのはいつだろう?と思ってブログを検索したら出てこない。ということは10年以上行っていないのだ。気になる展覧会はあるのだが、なかなか行くことができない。今回も直前の特別展(韓日食博)が終わってしまって、常設展(地域展示・通文化展示)しかやっていないことを承知で、久しぶりに訪ねた。一部閉室中であったにもかかわらず、面白くて2時間以上いてしまった。
ホームページによれば、同館は『展示基本構想2007』をもとに展示場を順次刷新中だという。2015年3月には南アジア展示と東南アジア展示が新しくなったばかり。この『基本構想2007』はホームページ上に公開されており(PDFファイル)読むと非常に興味深い。というか、今日、「民族」や「歴史」を掲げる博物館施設の悩みの深さを感じた。同構想は「地球規模の人・モノ・情報の交流の飛躍的な進展は、諸民族文化の劇的な変容を招くとともに、世界の諸民族のあいだに『自己の文化』や『自己の歴史』を注視する動きを加速させた」「その結果、一方的な民族誌記述や民族誌展示のあり方に対する、当の民族や文化の担い手からの異議申し立ては日増しに激しさを増している」という現状認識を踏まえ、「交流と越境と移動が常態となった現代の状況において、そうした状況に即した民族学博物館の展示の新たなありかたを求めるとすれば、それは双方向的・多方向的な交流の場、すなわち『フォーラム』として博物館を再編する以外ない」と結論づけている。
たとえば「日本」の展示に、さまざまなエスニック・グループの存在が取り上げられていたのは実践の一例かな。以前はこれほど明確なメッセージはなかったような気がする。韓国社会のキリスト教徒とか、アフリカに見られる欧米文化の影響とか、ヨーロッパも「ヨーロッパらしくない」土着的な民俗が取り上げられていたり、さまざまな固定イメージがくつがえる体験が面白かった。
↓館内レストランでは『韓日食博展』特別メニューを期間延長中だったので、青(緑)と黒の食材を使った「青玄御膳」をいただく。