見もの・読みもの日記

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模型を楽しむ/日本のたてもの(東京国立博物館)

2021-01-13 23:10:47 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京国立博物館・ 表慶館 特別展『日本のたてもの-自然素材を活かす伝統の技と知恵』(2020年12月24日~2021年2月21日)

 建築模型が見どころらしいとは聞いていたが、まさか建築模型ばかりが20件近く集合しているとは知らなかった。文化庁が「模造事業」として製作を行ってきた国宝・重要文化財の木造建造物の模型で、実物の10分の1が基本形。ほとんどが東博か歴博の所蔵である。

 会場に入るとすぐ、一乗寺三重塔、法隆寺五重塔、石山寺多宝塔が並ぶ。一乗寺は「加西市」とあるのを見て、西国第二十六番札所の法華山一乗寺であることを確かめる。しかし現在の三重塔は黒ずんで落ち着いた趣きのはずだが、模型は梁(はり)や柱の丹塗りの色が鮮やか。展示された建築模型の多くは、創建当時の姿で作られているようだった。法隆寺五重塔、石山寺多宝塔は、独特の形から、すぐそれと分かったが、やっぱり黒い瓦(石山寺多宝塔は檜皮葺)・白壁・丹塗りの柱・緑の連子窓で、現在の姿とは、ずいぶん印象が異なる。

 建築模型としての見どころは、やはり屋根を支える垂木や蟇股の構造だろう。現場では簡単に覗き込めない位置の構造も、つぶさに眺めることができる。一方で気になってしまうのは実物への似せ方で、石山寺多宝塔の内部の柱に仏画が描かれていたり、法隆寺五重塔は四方に仏様がいらっしゃったりすると嬉しくなってしまう。

 大徳寺大仙院本堂の模型は、手入れされた植え込みや石庭が添えられ、室内には見覚えのある、狩野元信(?)の襖絵も見える。慈照寺(銀閣寺)東求堂には、違い棚や付書院(窓際の作り付けの机)を備えた四畳半「同仁斎」があり、特別拝観で中に入ったときを思い出す。

 建築模型は約20件だが、他にパネルで紹介されている建築もあった。神社仏閣は、だいたい行ったことのあるものが多くて、東大寺鐘楼や長寿寺本堂(滋賀、湖南三山だ!)など、記憶をたどりながら懐かしく眺めた。春日神社本社本殿は、現在見られるのは丹塗りの社だが、模型は素木のままだった。

 変わり種は、明治天皇即位時の大嘗宮(明治4年造営)の模型(宮内庁所蔵、これだけは撮影禁止だった)。昨年、一般公開された令和の大嘗宮を思い出しながら見た。基本的な構造が変わらないのは当たり前だが、経年劣化のせいか、模型はだいぶ黒ずんで見えた。

 最後に首里城正殿だけは平成館に展示されていて、誰でも見ることができる。首里城正殿も素木作りなので、ずいぶん印象が違う。解説によれば、昭和2~7年に解体修理が行われ、大正14年国宝指定、昭和20年戦災により焼失。展示の模型は解体修理に参加した知念朝栄が昭和28年(1953)に製作したものだという。まわりのパネルには、深紅の壁に黄金の龍が映える、南国の王宮らしい絢爛豪華な首里殿の写真が掲げられていた。これは1992年に再建され、2019年に焼失した、そして私が実際に訪ねた記憶にあるもの。なかなか複雑な歴史があることをあらためて感じた。

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