〇山種美術館 特別展『東山魁夷と四季の日本画』(2020年11月21日~2021年1月24日)
新型コロナの影響で会期が後ろ倒しになった展覧会だが、年末年始に開催されて、ちょうどよかったのではないかと思う。見どころのひとつは東山魁夷の連作「京洛四季」4点が、4年ぶりに一挙公開されたこと。
実は私も、深山の桜一本を描いた「春静」と雪の降り積む洛中の屋根「年暮る」は記憶にあったが、「緑潤う」と「秋彩」をまとめて見るのは初めてではないかと思った。ブルーグリーンの色調で豊かな水面と水際の樹々を描いた「緑潤う」は、宇治川?それとも嵐山?と考え込んだが、解説によれば修学院離宮の庭園だという。なるほど、まだ私が見たことない風景だ。「年暮る」は当時の京都ホテル、現在の京都ホテルオークラ(本能寺の近く)から見た風景だという。
あとは、東山魁夷『満ち来る潮』や上村松篁『日本の花・日本の鳥』など、格調高く国土の恵みを寿ぐ定番作品が並んでいて、正月気分にマッチしていた。
一方で、そんな祝祭気分をほんのり裏切られたように思ったのは、東山魁夷の『白い壁』。重く沈んだブルーの背景に白壁の蔵が建っている。深淵につながるような黒い小窓がちょっと怖い。奥田元宋の『松島暮色』は雪を頂いた小島を描いたもので、写生なのに幻想的。
初めて聞く画家の作品で印象的だった作品もある。加藤栄三の『流離の灯』は、海上の打ち上げ花火を浜辺から眺めたところ。山田申吾の『宙(おおぞら)』は、青空に浮かぶ、ボールのようにまんまるの、あるいは火の玉みたいに細長い雲の切れ端。真っ白なものもあり、ピンクに染まったものもある。川崎小虎は人物画のイメージが強かったので『草花絵巻』とか『金風(黍に雀)』がやや意外で、面白かった。