〇『大江大河』第2部:全39集(東陽正午陽光影視、2021年)
2019-2020年に放映された第1部の続編。登場人物と俳優は全て前作を受け継いでいる(よかった)。第1部は1978年から1988年頃までの物語で、中国南方の農村に育った青年・宋運輝は、都会の大学に進学し、卒業後、金州市の化学工場の技師として次第に頭角を現す。宋運輝の姉・萍萍と結婚した雷東宝は、故郷の小雷家村を豊かにするため、人々を励まし、指導し、奔走する。宋運輝を兄と慕う少年・楊巡は商売人を志し、金州市で小さな日用品市場を経営するに至る。第1部は、知識人で技術者の宋運輝、農民の雷東宝、商売人の楊巡という、異なる生き方を選んだ三人をめぐって物語が進行する。
第2部では、新たな任務を与えられ、沿海部の東海市に派遣された宋運輝の苦闘が物語の中心となる。東海化工の設立にあたり、宋運輝は最高水準の設備を海外企業から購入しようとするが、突然の輸入禁止措置により挫折。ドラマの中では描かれないが、1989年の天安門事件と、その余波としての国際関係の緊張が理由であることは、中国人なら分かるのだろう。その後、1992年の南巡講話に始まる開放政策を追い風に(この点はドラマで言及あり)、宋運輝は東海化工の第2期整備においてアメリカの洛達(ローダー)社との提携を目論む。ローダー社の交渉代表としてやって来たのは、かつて宋運輝の生徒だった、アメリカ育ちのバリキャリの美少女・梁思申。宋運輝と梁思申は、厳しい交渉を繰り返しながら、祖国の発展を願う気持ちを共有する。
しかし宋運輝の妻・程開顔は、仕事一筋な夫に不安を感じ始め、そんな娘を心配する程工場長(いまは退職)は、頑固な娘婿に愛想を尽かし、宋運輝と梁思申が怪しからぬ関係にあるという申立て書を党に提出してしまう。宋運輝は田舎の工場に左遷されることになり、妻の開顔とは離婚。
怒る梁思申は、事実が明らかになるまで業務提携の交渉を停止すると主張。宋運輝は、そんな梁思申を自分の生まれ故郷に連れていき、中国の大半の農村がまだまだ貧しく、教育を受けられない若者が多数いること、個人の名誉よりも祖国の発展が重要であることを語る。説き伏せられた梁思申が交渉の席に戻ることで第2部は終わる。
一方、雷東宝は韋春紅と再婚し、新たな幸せを手に入れたかに見えたが、小雷家村の事業が大きくなればなるほど、資金繰りが綱渡りとなる。県の役人に見返りの便宜を図ったことから収賄罪で投獄されてしまい、東宝を失った小雷家村は、迷走・停滞する。第2部の最終話でようやく出獄した東宝は小雷家村の人々の気持ちをまとめて再起を誓う。
楊巡は、自転車操業で乏しい資金をまわしながら、東海市に大きな批発市場(卸売市場)を開設する。偶然、梁思申と知り合って、上海の高級ホテルやアメリカの超級市場の話を聞き、さらなる事業拡張の夢を抱くが、実母が癌の末期患者であることを知り、心折れる。楊巡については、あまりにも中途半端な第2部の結末で、第3部をつくってくれないと納得できない。あと、かつては宋運輝のルームメイトで、その後、楊巡の相棒(年上の親友)となった尋健祥(大尋)も。このドラマでは、祖国の発展と個人の(さまざまな意味での)ステップアップが、ほぼ無条件に「善」とされている中で、進歩や変化に関心のない大尋の存在が、一種のバランサーになっている感じがする。彼にも相応の幸せな結末を与えてほしいものだ。
また、宋運輝の両親が、息子の離婚と左遷を知って、深い悲しみに暮れながら、せめて自分たちは息子の負担にならないように、気強くいようと決心するシーンにも泣けた。この二人は、たぶん抗日戦争、大躍進、文革など、ドラマの外で数々の辛酸を舐めてきた世代のはずである。せめて最後は落ち着いた老後を得てほしい。続編が待たれる。