〇円覚寺 洪鐘弁天大祭(2023年10月29日、9:30~12:00)
鎌倉で約60年ぶりの開催となった洪鐘(おおがね)祭を見てきた。「庚子の年に行われる」と書いてある資料も多いが、前回は1965年(乙巳)、その前は1901年(辛丑)だから厳密ではない。今回も2020年(庚子)に予定されていたようだが、新型コロナの影響もあり、2023年(癸卯)の今年、58年ぶりの開催となった。まあ、細かいことはいいのである。
東京は朝から雨が降ったり止んだりで、家を出る意欲を失いかけたのだが、絶対、次を見る機会はまわってこないと思って出かけた。9時過ぎに北鎌倉駅に着くと、まあまあの人出。円覚寺の反対側のバス通りに出ると「左右に分かれてお進みください~」と誘導される。貰ったリーフレットには、行列は9:30に建長寺を出発すると書いてあったので、建長寺方面に少し歩き、JRの踏切の手前あたりで待つことにした。
やがて先頭を切ってやってきたのは「八雲神社」の幕を張り、神職を載せたトラック。五色の旗や宝物(?)を載せたトラックがこれに続いた。
そして洪鐘(おおがね)。私は本物が巡行するのかと思ったら、これはハリボテだった。最上段の龍頭に照明が仕込んであって、龍の目が光るのがご愛敬。
円覚寺の管長さまだと思う。そのあとに白い狩衣の神職の方が続いていたのは、江島神社の宮司さんらしい。神仏習合形態のお祭りは、古さが感じられてよい。
お神輿は徒歩で来て、踏切を渡った先に待機していた担ぎ手が加わる。北鎌倉・山ノ内の八雲神社のお神輿で、毎年7月の第2土曜日から3日間、例大祭(鎌倉大町まつり)で「神輿ぶり」が行われているという。私は鎌倉の隣りの逗子市に住んだこともあるのだが、これは全く知らなかった。
そのあと、囃子方を載せたトラックが数台通過していったあとは何も来ない。え、これで終わり?と、周りの人たちも狐につままれた顔をしている。
質問を受けた警備員の方が説明しているのを聞くと、このあと、北鎌倉駅前を通過し、小袋谷交差点から折り返して来るときは、ほかのグループと合流して行列が大きくなるのだという。なるほど。半信半疑ながら、北鎌倉駅の西側(大船寄り)へ行ってみると、東側(建長寺寄り)よりも見物人が多い。沿道に隙間を見つけてなんとか潜り込む。
やがて11:00に小袋谷交差点を出発した行列が戻ってきた。ちなみにこのお祭りでは「パレード」と呼ぶのが公式の用語らしい。先頭は触れ太鼓。木遣りや纏いや五色の旗が続く。渋い。
江の島囃子。三味線やチャルメラなど珍しい楽器を使うお囃子で、前回の洪鐘祭には参加していないので、約120年ぶりとのこと。先頭のおじさん二人が右手にチャルメラを持っていたのだが、吹いてくれなかった。残念。
次いでやってきたのが面掛行列。私は坂ノ下の御霊神社の面掛行列かと思ったら、かつては山ノ内でも行われており、山ノ内八雲神社に天保年間作の行道面が伝わっている。伝来品のほうは、むかし神奈川歴博の特別展『鎌倉ゆかりの芸能と儀礼』で見ていた。
この行列で使われていたのは、新しく作られたものらしく、のっぺりして逆に怖かった。
最後は、稚児行列・お母さんやお父さんに抱かれた赤ちゃん行列(釣鐘型の毛糸の帽子がかわいい)・ちびっこ武者行列など、子供たちが多数登場。引かれていく洪鐘も心なしか、うれしそう。
この釣鐘型(?)ドレスもかわいかったー。
子供たちの心に楽しいお祭りの印象が残って、また60年後につながるといいなあ。