見もの・読みもの日記

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東国の古社/香取神宮(千葉県立美術館)

2016-01-18 22:36:54 | 行ったもの(美術館・見仏)
千葉県立美術館 特別展・千葉県文化財保護条例制定60周年記念『香取神宮-神に奉げた美-』(2015年11月17日~2016年1月17日)

 2ヶ月前に始まった展覧会なのに、気づいたら最終週になっていた。慌てて行き方を調べて、おや、この美術館は行ったことがないぞ、と思った。京葉線の「千葉みなと」という初めての駅に下りて、海側に少し歩いたところにある。

 展覧会のタイトルである香取神宮(千葉県香取市)は、鹿島神宮と並んで関東を代表する古社、と会場の説明パネルにあった。この展覧会に来てしまってから言うのも何だが、私は鹿島神宮は行ったことがあるが、香取神宮はない。どこにあるんだろう?と最後までよく分からなかった。さっき調べて、利根川の南岸、ほとんど茨城県に接する位置にあることを把握した。

 展覧会は、まず香取神宮が『日本書紀』や『延喜式』に登場する古社であることを示し、神宮や神職の家に伝わる文書などを展示する。絵図や地誌なども。『総州真景図藁』という油彩のようにはっきりした色彩の絵があって、思わぬことに亜欧堂田善の作品だった。

 次は「香取神宮神幸祭絵巻」の大特集。神幸祭(じんこうさい)は、祭神・経津主大神(ふつぬしのおおかみ)が東国を平定した様子を模したものと言われ、絵巻には人馬の華やかな行列が端から端まで描かれている。現存する6点+1点(水戸彰考館本は焼失、写真アルバムのみ残る)の現物が全て(開いているのは一部だが)展示されており、さらに全体像の写真が会場の壁等に展示されている。すごい!楽しい!

 現存6点の特徴を簡単に記録しておこう。(1)国学院大学本:絹本で地色は暗い。造型はきっちりして生真面目な印象。 (2)大禰宜家本:色彩が薄めでさわやか。比較的きっちりしている。(3)権検非違使家本:色塗りは丁寧だが、建物を写すのが苦手らしくパースが狂いっぱなし。まっすぐな線が引けていない。(4)日本民藝館本:全体が粉を吹いたように白っぽく、クレパスで描いたように見える。(5)多田家本(現香取神宮所蔵):少しまとも。すっきりして水彩っぽい。(6)成田山仏教図書館本:異色。折り返した列が1枚の料紙を上下2段に通っている。いちばん面白かったのは、神宮寺本殿の床下に列柱と礎石が見えるのだが、(3)本では柱が多すぎて、ムカデのようになってしまっている。(4)本もこれを引き継いでおり、もぞもぞ動き出しそう。また顔を隠して馬に乗った「物忌」という存在が気になって調べてみたら、斎宮のようなものらしい。木曜時代劇『塚原卜伝』に出て来たらしいことも分かってしまった。

 次に「神を彩る名宝」の数々。中央に大きな木造十一面観音立像(関東最大で最古とも。頭上面は全て散逸)が据えられていたが、明治の廃仏毀釈の際に香取神宮を出され、現在は同じ香取市の荘厳寺に安置されている。銅造の掛け仏四体も、同様に別のお寺の保有となっていた。香取神宮には多数の銅鏡が伝わっているが、最大の見ものは、国宝『海獣葡萄鏡』。さまざまな動物の姿が躍動的で、見れば見るほど面白い。隣りにあった1対の『古瀬戸黄釉狛犬』は可愛かったなー。机に置きたいようなフィギュアサイズ。近代美術の奉納品もあわせて展示されていた。

 たいへん面白かった展覧会だが、残念だったのは図録が売り切れだったこと。「いつ売り切れたんですか?」と聞いたら「先週の金曜くらい」とおっしゃっていた。ううむ、やっぱり年末に来ておくべきだったか。ミュージアムショップで展覧会オリジナルの絵馬を売っていたので、今年の願い事を記入して奉納。美術館のロビーに吊るしておくと、あとでお焚き上げしてくれるのだそうだ。



 東国に住んでいるうちに、香取神宮と鹿島神宮は、一度行っておかねばならないな。

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