早春見仏記(4)京の冬の旅編:金閣寺、龍安寺、天龍寺(弘源寺、宝厳院)
京都には、いつも立ち寄りたい場所がたくさんあるのだが、今回は「京の冬の旅」の文化財特別公開スポットにしぼることにした。
■JR東海「京の冬の旅」文化財特別公開
http://kyoto.jr-central.co.jp/kyoto.nsf/saijiki/sj7DFCE748FA1810B749256F5C0003BD2D
金閣寺、龍安寺を訪ねるのは久しぶりである。いつも混んでいる(ような気がする)ので避けてしまうが、定番スポットには定番なりのよさがある。
金閣は素直に見て美しいと思った。決してけばけばしくはない。そばに「赤」がないからだろうか。「青」と「緑」の中に置かれた「金」は、むしろ透きとおって静謐な感じがする。三層のうち、最下層を木造のままにして、上の二層にだけ金を貼ったことが、まるで中空に金の楼閣が浮かんだような軽快感をかもし出している。やや幅広で扁平な楼閣の造りを、屋根のかすかな反りが救っている。
広い境内を歩きまわり、さまざまな角度から金閣を眺めることができるので、人の多さはあまり気にならない。しかし、みんな、観賞のペースが早いなあ。もう少し立ち止まってじっくり眺める価値がありそうなものなのに。
龍安寺の石庭は、残念だが、人が多いとどうにもならない。縁側に腰を下ろすのさえ、順番待ちの状態だった。ところで、この石庭には大小15個の石が配置されているのだが、「どこから見ても14個しか見えない」「15個全部見えるポイントが1ヶ所だけある」という話を聞いた。「竜安寺」(←龍安寺でなく)「15個」「14個」で検索すると、同類の「話」がヒットする。私が修学旅行生のときはなかったなあ...比較的あたらしい都市伝説ではあるまいか。
天龍寺の塔頭、弘源寺には、重要文化財の毘沙門天がいらっしゃるらしい。東京地区の「京の冬の旅」キャンペーンポスターには、この毘沙門天の写真が使われていた。「どこだ」「どこだ」と忍者(?)が奥座敷に忍び込んで、「非公開」の文字をスパッと縦斬りにするというポスターである。この毘沙門天だけはぜひとも見て帰りたいと思っていた。
弘源寺の小さな門をくぐると、表玄関につながる参道の脇にお堂がある。ふと見ると「毘沙門堂」という札がかかっていて、三歳児ほどの背丈の毘沙門天像の姿が見えている。「これじゃない?」「これか」とちょっと拍子抜けしてしまった。しかし、大きく腰をひねったポーズは力強い。写真を見て、大人の等身大に近いくらいかと錯覚してしまったのは、確かな造型力のなさるわざである。そのあと、いちおう座敷にもあがって、竹内栖鳳ゆかりの品々を拝見させていただいた。
「京の冬の旅」の特別拝観は午後4時までなので、もうほとんど時間切れだったが、「もしや」と思って宝厳院に向かう。学生ガイドさんたちが、ちょうど門扉を閉めようというところであったが、もう一組、関西弁の女性2人連れも一緒になって「あらぁ残念だわあ、もう駄目?」「あっちの門で、まだいけるって言われたのよ」とゴネてくれた甲斐があり(?)再び門を開けて入れてもらった。見ものは枯山水の名園ということだが、むしろ庭を観賞するためにつくられた書院がおもしろかった。大正時代の建築で、細部に、そこはかとなくモダニズムの香りがする。
〆めは京都駅の近鉄名店街で、私の好きな「ハマムラ」のラーメン。冷えた体を胃袋から温めて、帰路についた。
次の旅行は道成寺の千手観音ご開帳(3/26~4/27)をねらっている。