付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「枢軸の絆」 内田弘樹

2018-07-11 | 戦記・戦史・軍事
 第二次世界大戦というと社会の教科書ではほんの1ページか2ページで端折られ、本当か嘘か「日本とアメリカが戦争していた」ことから知らない者がいると言われる時代。ミリタリーにちょっと興味がある程度の人間だと、知っていても日本とドイツとイタリアとその他数カ国が、アメリカやイギリスと戦っていた……くらいなんだろうけれど、痩せても枯れても世界大戦というくらいで世界中のさまざまな国や武装勢力が大なり小なり関わっていた戦いでした。
 そんな世界大戦を、米英ソなど世界の国の過半を占めた連合国と戦った、日本、ドイツ、イタリア以外の枢軸国陣営の諸勢力について語った美少女系ミリタリーマガジン『MC☆あくしず』の連載記事をまとめたもの。
 ヴィシー・フランスから南京政府、ロシア解放軍まで、枢軸国側の主義主張に殉じたというよりは、周囲の空気に流されてとか、事実上の占領下なので逆らえなくてとか、敵の敵は味方だからとか、そんな理由で参加してはたいていは酷い結末に陥った国々の、日和見と蛮勇と優柔不断と他人から理解しがたい正義の物語。

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「この世界の片隅に」 監督:片渕須直

2018-01-14 | 戦記・戦史・軍事
 クラウドファンディングで制作費を募集していたのは知っていたけれど、タイミングを逃して参加できず、「絶対に観に行かなきゃダメです!」と周囲に言われ、興味がありながらも劇場に足を運ばないままだった『この世界の片隅に』。Blu-rayが発売されたなあと思いつつ、これまた放置していたら、いつの間にかテレビの前に置いてあるではありませんか。「絶対に観なきゃダメです!」とのことで、布教者の方が置いていかれたそうです。

 視ました。

 良い話だよ。文句ないよ。妻も子供もいつの間にかテレビの前に座って、最後まで席を立たないくらい。
 でも、ダメなんだよ、おれ。こういう話は。ほら、感情移入しすぎるから、視てられないだよ。話に引きずられちゃうんだ。もう、最後のクラウドファンディングの協力者が流れるシーンで泣いちゃったもん。劇場じゃ観てられない。おうちで正解。
 うちの祖母の小さな庭にも焼夷弾が落ちてきたけど、ちょうど小さな金魚池に落っこちたので焼けずに済んだという話を聞いたのを思い出しました。

 しかし、昔はマンガ原作と言ってもキャラがマンガとアニメではまったく別物というのが普通にあったけれど、ほんと、よくここまで原作のテイストを残して動かしたもんです。

【この世界の片隅に】【片渕須直】【こうの史代】【MAPPA】【コトリンゴ】【のん】【細谷佳正】【稲葉菜月】【尾身美詞】【小野大輔】【潘めぐみ】【座敷童】【青葉】【大和】
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「図解ミリタリーアイテム」 大波篤司

2017-12-22 | 戦記・戦史・軍事
 ガスマスク装着のコツから弾薬の保管方法、果ては携帯コンロの使い方まで、軍服から水筒、ホルスターまで軍装品あれこれをその発展史から使い方まで網羅したマニアになるための入門書。ケッテンクラートに1項目費やしているような本です。
 枕元において、ぱらぱらと読んで面白い感じ。

【図解ミリタリーアイテム】【F-FILES No.25】【大波篤司】【新紀元社】
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「フューダル・ローヅ」 スターウェブ・ジャパン

2017-12-10 | 戦記・戦史・軍事
 フライングバッファロー社デザインで、日本版をスターウェブ・ジャパンが運営していた中世騎士の時代を舞台にした国盗りゲーム。
 自分がいちばんプレイしたのは「フューダル・ローヅ」。正確には「 FEUDAL LORDS and the Crown of England 」、「封建領主と英国王の王冠」。発音的には「フュードル ローズ」かもしれないけれど、スターウェブ・ジャパン的には「フューダル・ローヅ」。

 アーサー王の死後の9世紀イギリスを舞台にした戦国国盗りゲーム。プレイヤー15人で開始し、まずは、農民を増やして食料を増産し、その食料で軍を維持したり市民に売って軍資金としたり、家畜を飼育したりしてまずは国力アップ。農業基盤の経済なのだ。それ以外にも領地に山があれば鉱山がないか探査できるし、森があれば製材所を、海があれば漁村を設置したり船を建造して貿易に送り出したりできます。
 その領地経営ゲームの合間に、隣接する他の領地を時には攻め、時には攻められ、あるいは戦うことなく外交で他領の貴族を主君に抱いたり、臣下に持つことで自派の勢力を拡大していく、戦争と外交のゲームでもあります……っていうか、こちらが本分。そして最終的にPCとNPC合わせて23人以上の臣下を得た者が国王となってゲーム勝利というもの。

 こんなことをしながら勢力拡大していくわけですが、その間に税率上げすぎて商人が領地から逃げていったり、外国から放浪の騎士団が合流してきたりといろいろイベントが発生するわけです。
 雇用している騎士の中の1人はチャンピオン(英雄)と呼ばれ、戦争のない年(ターン)にはあちらこちら放浪して武者修行して勝手にレベル上げする奴でして、どこかで盗賊の財宝を手に入れて国庫を潤したかと思うと、ドラゴンに戦いを挑んで死んだりして、それを見守っているのも楽しかったし、交易に送り出した貿易船が莫大な財宝を運んできたかと思えば遭難したりの一喜一憂もあったね。
 でも、これらリアクションはすべて英文のアウトプット。しかも「Thy Marshal reporteth the following military activity:(爵が元帥、以下の如く軍事につき報ぜり)」と古英語を多用します。「日本語にもできますが、よりリアルに、そして英語力にプラスになるよう英語で出力します」と要らない親切。「thin」とか「thou」とか使わねーよ!(T_T)
 ゲームって、勉強なんですよ。

【フューダル・ローヅ】【スターウェブ・ジャパン】【フライングバッファロー】【PBM】
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「鴉よ 闇へ翔べ」 ケン・フォレット

2017-10-21 | 戦記・戦史・軍事
 Dデイ前夜、作戦決行時にドイツ軍の通信網を分断する必要があった。しかし、電話交換施設の警戒は厳重でレジスタンスは壊滅状態。
 ここでMIは破壊工作のために、女性ばかり6名の秘密工作部隊を送り込むことにした。女性ならば男性では潜り込めない場所に入り込める可能性がある。
 かくして、看護婦部隊や死刑囚などあちらこちらから呼び集められたメンバーが、暗号名「鴉(ジャックドウズ)」としてドーバー海峡を越えて送り込まれたのだが……。

「たぶん、モードのような人は愛されることが好きなのよ。だから、そういう人たちは、愛してくれる相手が男でも女でもうれしいんじゃないかしら」

 同性愛とゲシュタポがてんこもり。

【鴉よ 闇へ翔べ】【ケン・フォレット】【生頼範義】【小学館】【戦争スパイアクション】【予防措置】【初体験】
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「ダンケルク」  監督:クリストファー・ノーラン

2017-09-20 | 戦記・戦史・軍事
 ほとんど何の説明もなく始まったけれど、第二次世界大戦序盤のダンケルク大撤退が描かれた映画。日本人には馴染みがないけれど、ここで撤退に失敗していたら後の反抗のための戦力が不足していただろうという、架空戦記におけるターニングポイントの1つ。
 大陸に展開していた40万人の英仏軍はドイツ軍によって港町ダンケルクに包囲され、全滅する前に1人でも多くの兵を英国本土に撤退させたいけれど、立ちふさがるのは狭くて広いドーバー海峡。この撤退戦を、包囲された英仏軍の1週間と、撤退のために徴用された民間船(遊覧船)の1日と、上空援護のために飛び立った空軍の1時間を同時並行して描くことで語ろうというもの。
 戦争映画というより、観客をダンケルクという世界に叩き込むための映像。だから、高揚感も、ストーリーらしいストーリーもなく、ただ銃声と爆音が轟く海岸体験……に近いかな。いや、狭い船倉に流れ込む濁流もか。

 戦争全体で言えば序盤も序盤なので、戦争映画を見に行ったつもりだと消化不良。
 ここは、起承転結を抑えたくなります。

 まずは、ドイツ軍の猛攻と捲土重来を期する英国を描いた『ダンケルク』が「起」。
 映画の中でも「空軍は何をしていた!」と罵られていた英国空軍の辛抱強い戦いを描いた『空軍大戦略』を「承」。
 そして、ついに反抗だ!これから大逆転だ!の『史上最大の作戦』を「転」。
 そうすると、「結」を何にするかという話ですが、素直に行くなら、これで戦争も(欧州戦線は)終わりだ!ということで『ヒトラー ~最期の12日間』でしょうが、「結」がオチだというなら、このまま一気呵成にドイツ軍をやっつけるぞ!と勢い込んだあげくにコケちゃう『遠すぎた橋』あたりがお勧め。『ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です! 』でも良かろうという意見も。

【ダンケルク】【クリストファー・ノーラン】【第二次世界大戦】【ハンス・ジマー】【フィン・ホワイトヘッド】【トム・グリン=カーニー】【ジャック・ロウデン】【ハリー・スタイルズ】【アナイリン・バーナード】【ジェームズ・ダーシー】【バリー・コーガン】【ケネス・ブラナー】【キリアン・マーフィー】【マーク・ライランス】【トム・ハーディ】【雷跡】【ジャム付きパン】【紅茶】【カエル喰い】【ロールスロイスのエンジン音】【ハイネック・セーター】
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「砲艦ワグテイル」 ダグラス・リーマン

2017-08-08 | 戦記・戦史・軍事
「わたしにとって、戦わない人間は、わたしと戦う人間より危険なのだ!」
 将軍は徹底抗戦を主張した。

 第二次大戦終結後、北緯30度線。中共領海のすぐ外側、舟山列島の西30マイルのところにサンツ島という小さな島があった。
 今まで見逃されていたサンツ島に中共軍の侵攻が迫るとの報に、英国海軍は植民していた民間人救出のために1隻の砲艦を送り込んだ。現役艦艇の中でも最高齢、1924年竣工の河川砲艦ワグテイルである。
 スクラップ直前のオンボロ艦だが、あえて中国を刺激しないための選択であった……。

 1979年刊行で、ダグラス・リーマンの翻訳としては最初の1冊なんだそうな。
 共産主義の宣伝工作や赤化工作、そして実際の共産主義者たちの言動。対して、中国人を下等な者として扱う植民者や元国民党軍人らの狼藉が入り乱れ、あっちもこっちもぐちゃぐちゃの海域に、出世コースから外れた艦長や訳ありの乗員たち、そして中国人船員たちを乗せたガラクタ砲艦が送り込まれ、帰りたくない、戦うぞ、いや共産主義バンザイな連中の回収に向かう海洋冒険譚。

【砲艦ワグテイル】【ダグラス・リーマン】【生頼範義】【パシフィカ】【共産主義】【スパイ】【女医】
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「ドイツ・アメリカ連合作戦」 スティーヴン・ハーディング

2017-06-16 | 戦記・戦史・軍事
 第二次世界大戦末期、ナチス武装親衛隊が設置していたイッター城収容所で戦闘が発生した。
 この収容所に捕らえられていたのは、フランス元首相や大臣など連合国側の重鎮やその家族たち。敗戦間際の混乱で守備隊が逃亡していく中、ヒトラーを見限ったドイツ国防軍将兵や元武装親衛隊将校らがフランス人たちと呼応して蜂起。奪回を試みる武装親衛隊と交戦状態になったのだ。
 救援要請を受けたアメリカ軍の第783戦車大隊のシャーマン戦車がイッター城へと向かうが、これに対して管区が違う越権行為だと同じアメリカ軍から制止が入り……。

 イッター村の歴史から城がいかに収容所となって名誉囚人を受け入れるようになった過程からその終焉と、そこに居合わせた人々の戦後まで。
 フィクションには本来敵対しているはずのものたちが、協力して敵と戦うことになるという話があります。特撮ヒーローやアニメには「ここは一時共闘だ」みたいな話がちょくちょくありますが、戦争ものにはあまりないようです。パッと思いつくのは宇宙人と戦ったり銀行吹き飛ばしたりするくらいかな。
 ところが事実は小説よりも奇なりで、第二次大戦中、本当にあったアメリカ・ドイツ連合作戦。マクリーンかヒギンズあたりが書いていそうです。似たような話があったよね?
 最大の障害がお役所的縄張り争いだったり、共に幽閉されていた政敵同士フランス人が最後までいがみ合い、戦後は回想録で互いを非難し合うというダメダメさ加減も、こりゃフィクションじゃないなと思わせるものでした。これがリアリティじゃなくてリアルというやつですね。

「そうだな、ありゃあ、とんでもないことだった」

【ドイツ・アメリカ連合作戦】【第二次世界大戦の「奇跡」といわれた捕虜収容所奪還作戦】【スティーヴン・ハーディング】【原書房】【イッター城特別囚人収容所】【タバコの害悪と戦うドイツ同盟】【酔いどれジェニー】
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「戦略大作戦」 監督:ブライアン・G・ハットン

2016-09-12 | 戦記・戦史・軍事
「……橋はちゃんとある!(ひゅーん どばばばばーんっ)……今はもう無いっ!」
 悲観的な言葉は予言となって災いをもたらす?

 第二次大戦末期。いつも貧乏くじばかり引かされていたビッグ・ジョーの部隊に幸運が舞い降りた。ケリー軍曹が捕虜にしたドイツの情報将校は、ドイツ軍の金塊輸送を担当していたのだ。ただし、金塊が輸送を待っているのは敵陣後方50キロの街の銀行の中。
 役に立たない上官はパリで買い物。それに比べて自分たちは周囲には酒場もなければ女もおらず、3日後にはまた前線に送り込まれて死ぬことになるかもしれない身。ならば一攫千金を狙ってもいいんじゃないかと、ケリーたちは武器をかき集めて敵陣の奥深くへと潜入していくが、いつの間にか金の匂いを嗅ぎつけた欲の亡者たちが集まってきて、司令部の意図しない一大攻勢になっていた……。

 今まで何度もビデオやレーザーディスクやDVDやブルーレイが発売されていながら、すべて字幕版。あのフジテレビの「ゴールデン洋画劇場」で、山田康雄や宍戸錠が吹き替えていた吹き替え版が観たいとさんざん思っていたら、ついに「吹替の力」シリーズとして発売。テレビ放映後、ほぼ40年目の快挙です。もしかしてガルパン効果か?
 ただ、テレビの尺の関係で単に吹き替えがなかったおよそ45分以外にも、オッドポールがベラミーに電話した「おまえ、また頭おかしくなったんじゃねえだろうな!?」のくだりがいきなり無音、日本語字幕に。ああ、言葉狩りは完全にかわせなかったか……。
 何度観ても面白いし、(たぶんT-34改造の)タイガー戦車も格好良いのだけれど、やはり2時間半にするほどの映画じゃないよね。90分のテレビ版のスピーディーさくらいが丁度良いかと思います。まあカットされた部分にも「戦線に軍楽隊でも通れるくらいの穴がある」とか後半の伏線になる部分もたくさんあるので、決してムダじゃないんですけど。

【戦略大作戦】【KELLY'S HEROES】【吹替の力】【ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント】【クリント・イーストウッド】【テリー・サバラス】【ドナルド・サザーランド】【マカロニ・ウェスタン】【墓堀り】【軍楽隊】【キルロイ】
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「約束の国III」 カルロ・ゼン

2015-06-25 | 戦記・戦史・軍事
「どの道を歩こうが、最終的に到着できるのであればどの道を歩くかは重要ではない」
 共産党書記局付党中央委員会中央規律委員会所属、ダーヴィド・エルンネストの言葉。
 昔、我が家が転居して菩提寺から遠くなり、近くに同じ宗派のお寺がないので地元のお寺に相談したときに、老住職が同じことをおっしゃった。このときは教えの細部は違っても、仏門として目指すところは同じだから宗派云々は気にしなくて良いよ……という意味だったけれど、ここではつまり「目的のためには手段は問わない」と同義なのが怖いところです。

 西側の情報筋がスーパーインフレ突入による近い将来の経済崩壊を予想していたように、ヒルトリアは政治的にも経済的にも限界を迎えていた。
 そんな中、危険分子の洗い出しを進めていた連邦軍のソコルジー少将が暗殺された。
 既に時間は無い。
 クーデターを画策し、ヒルトリア掌握のために動き出しているのは連邦軍か、民族主義者か、超連邦主義者か……。

 政治的に正しい、社会主義的英雄転生譚の3冊目。

【約束の国3】【カルロ・ゼン】【巖本英利】【星海社FICTIONS】【共産主義英雄譚】【人生やり直し】【クーデター】【暗殺】
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「ビルマの星空」 伊藤正之

2015-03-16 | 戦記・戦史・軍事
「辻参謀は、別名を青竹参謀とか鬼参謀とか云った陰口は、ビルマ当時からよく聞いていたが、何事も割り切って、武人の本領を発揮される参謀だ」

 名古屋生まれの青年が工兵として南方戦線に送られ、ビルマ侵攻作戦に参加したものの、やがて連合軍の反抗によって白骨街道を撤退、敗戦、抑留を経て復員するまでの体験談……というより病院はどんな様子だったとか、現地の人々との日常会話はどうだったとか、牛を殺す時はどうしたとか、洗濯やトイレはどうしていたとか、備忘録の自費出版本。
 牛の解体話で、舌は真っ先に切って捨てたとあり、やはり牛タンは戦後のものなんだなあと確認。
 
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「フィンランド空軍戦闘機隊」 イルマリ・ユーティライネン

2014-11-21 | 戦記・戦史・軍事
 借りて読んだ『雪中の奇跡』で冬戦争に興味がわいた頃に古書店で見つけたのが本書。

 第二次大戦中、ソ連から二度にわたる侵攻を受け、多くの領土を失いながらも最後まで独立を保った小国フィンランド。そのフィンランドで空軍パイロットとして活躍したエース、イルマリ・ユーティライネン准尉の回想録。
 他にモデルグラフィック誌に掲載された、生き残りエースたちへのインタビュー記事やフィンランド空軍小史、トップエース一覧なども収録。

「飛んでいる鳥を撃つのも、飛行機を撃つのも同じことだ」
 相手も撃ってくるところが猟とは違うけれどとニルス・エドワルド・カタヤイネン。

 空を飛ぶことより、撃墜されて落ちることより、さらに落下傘が開かないまま高度800mから落ちたことより、木に登ることの方が怖かったと何人もが言うあたり、木登りと飛行機は違うと理解。

【フィンランド空軍戦闘機隊】【イルマリ・ユーティライネン】【大日本絵画】【冬戦争】【フォッカーD21】【ブルースター・バッファロー】【メッサーシュミットMe109G】

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「坂の上の雲(8)」 司馬遼太郎

2014-09-30 | 戦記・戦史・軍事
「天気晴朗ナレドモ浪高シ」
 秋山真之は日本海海戦の開戦を本国に伝える電文に、手元の天気報告にあった一言を付け加えさせた。
 これによって単なる作戦用の報告文に文学的な香りが加わったが、その本意は天気晴朗ゆえに敵を見逃し逃がすことはなく、浪高いゆえに練度の高い日本艦隊が優位であることを示唆することにあった。

 国運を賭けた戦いに「日本でいちばん運の良い提督」として司令官に選ばれたという東郷平八郎の艦隊が、ついにバルチック艦隊の姿をとらえた……。

 作者の乃木無能、東郷無謬説を強調する最終巻です。日本海海戦の勝敗は、ロジェストウェンスキー提督の無能に帰するともいえますが、なによりもロシアに負けて欲しい英国の報道スタンスによって無理矢理に勝ちをもぎ取ったと言えなくもなさそうです。
 文庫版には単行本6冊分のあとがきをまとめて収録。 

【坂の上の雲8】【司馬遼太郎】【文春文庫】【日本海海戦】【敵前回頭】【徹甲弾】【鍛鋼弾】【】
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「坂の上の雲(7)」 司馬遼太郎

2014-09-13 | 戦記・戦史・軍事
「ああ、かの愛すべきペトローウィッチ、かれの艦隊はいまどこにいるのでしょう」
 ロシア海軍の大本営参謀ヒョードル・ワシリェーウィッチ・ドーバソフ少将が、フランス外相デルカッセらへ尋ねた言葉。
 バルティック艦隊はいまだ日本海へ到達していないばかりか、ロシア本国からも忘れ去られたかのようであった。

 奉天会戦は兵力・火力共にロシア軍の方が日本軍より格段の差で優位に有り、兵の質でも旅順で疲弊して老兵の補充兵ばかりになった日本軍ではロシアに及ばなかった。
 だが、ロシア軍は敗れた。徹頭徹尾、作戦で敗れた。すべての敗因はクロパトキンにあった……。

 ところが海軍の方も司令長官がもともと心許なかったむけど、もしかしたら極上のどアホではないか……という疑念を残しつつ次巻、日本海海戦へ続きます。

【坂の上の雲7】【司馬遼太郎】【文春文庫】【ロシア軍の後退】【奉天会戦】【カムラン湾】【指揮者のいない軍隊】
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「坂の上の雲(6)」 司馬遼太郎

2014-09-10 | 戦記・戦史・軍事
 ほとんどロシア側の自責点のような形で黒構台の戦いはしのいだ日本だが、まだ戦争に終わりは見えない。
 その頃、英国の圧力で寄港地で石炭補給もままならないバルチック艦隊は、まだ日本に向かう途上にあり、マダガスカルで2ヶ月足止めを食らっていた……。

 この巻では、黒構台会戦、バルチック艦隊の苦難の旅、欧州における陸軍大佐・明石元二郎の活躍が描かれます。
 黒構台会戦といえば、まさに『遙か凍土のカナン』の冒頭で繰り広げられた激戦です。この司馬史観では、「司令部が無能なので前線や海外から敵が動く報告を受けていながら、援軍を送っていなかった戦い」とされていますが、カナンでは「分かっちゃいたけど、そもそも送る戦力が無いので、日本軍は戦力が底をついていると外国にバレて国債の引き受けが滞るより、無能の落胤がついた方がマシ」とされていて、この視点による解釈の違いがわかるのも、あれこれ読む楽しみの1つです。
 一方、バルチック艦隊は全然進んでいません。日英同盟が異常なまでに効果的に効いていたというか、ロシアがそれほど嫌われ恐れられていたというか、港に寄港するのもままならず、あちらこちらで補給が滞り、その間に合流するはずの旅順艦隊は壊滅し、黒構台は撤退となり、モラルががんがん低下していきます。
 そして、明石大佐の対ロ工作はもはや幕末の坂本龍馬かといわんばかりの描き方です。あちらこちらに飛び込み、ロシア内部を混乱させるべく、独立運動家やら共産主義者に資金援助しつつネットワークを構築していきます。龍馬と違うのは少なくとも現在の価値で何百億円という軍資金を与えられていたということでしょうか。

「この戦争に勝てば世間は軍人をもてはやすでしょう。しかし世間というものはすぐ忘れます」
 それで有頂天になるには自分は年を取り過ぎたと第1軍司令官、黒木為。
 そして新聞各社は海外の状態について無知で、なぜ戦争に勝てたか分からぬまま騒ぎ立てた。新聞は民度と国力の反映なのだ。

【坂の上の雲6】【司馬遼太郎】【文春文庫】【沈旦堡会戦】【マキシム機関砲】【軍艦行進曲】【無線電信機】【奉天会戦】
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