「神の手間かずをはぶくために科学というものは存在するのです」
バルチック艦隊旗艦スワロフの航海長、ゾトフ大佐の言葉。
素人の考えには専門家では気づかない視点があるという説もある一方では、何も知らない素人の上司やクライアントが無理難題を現場に押しつけてくるという話も聞きます。前者は主にフィクションで、後者はリアルでよく聞く話ですが……。
児玉源太郎は怒っていた。
前線の事情を自分の目で確認することもなく、無為無策に兵の屍を何万と積み上げながら、いまだ旅順要塞陥落の手立てを見つけられぬ乃木の参謀陣に。
野砲の専門家が無理だ危険だというのを無視し、児玉は旅順周辺に展開していた大砲を24時間以内にすべて集めて二〇三高地に向けろと命じた。味方の上に砲弾が落ちることを覚悟で、重砲の援護射撃で歩兵突撃を成功させようというのである……。
この巻と『皇国の守護者』と『遙か凍土のカナン』を並行して読んでいたので、脳内記憶がとんでもないことになりましたが、今回は旅順陥落からバルチック艦隊の苦難の航海の途中経過を報告しつつ黒溝台の戦いが勃発するまで。
果たして旅順攻略に児玉大将がどれだけ影響を及ぼしたかは不明です。司馬遼太郎は歴史家ではなく、あくまで歴史小説家なので、見てきたかのように嘘を書くのも仕事です。どれだけ盛っているのか、どこまで史料に基づいているのか、気にしてはいけないのでしょうが、とにかく面白いですね。
指揮系統を無視するか否かぎりぎりの線での介入で、帝国陸軍はかろうじて旅順攻略を果たし、港に停泊していたロシア艦隊を壊滅することに成功します。当時の火砲運用の常識には外れていたかもしれませんが、戦力を集中運用するという戦争本来の原理原則には則った話でした。
そして、だんだんバルチック艦隊が気の毒になって来るのでした……。
【坂の上の雲5】【司馬遼太郎】【文春文庫】【黒溝台会戦】【二〇三高地】【ロジェストウェンスキー航海】【水師営】【七段構えの戦法】【マダガスカル】【長谷川挺身隊】【長距離斥候】
バルチック艦隊旗艦スワロフの航海長、ゾトフ大佐の言葉。
素人の考えには専門家では気づかない視点があるという説もある一方では、何も知らない素人の上司やクライアントが無理難題を現場に押しつけてくるという話も聞きます。前者は主にフィクションで、後者はリアルでよく聞く話ですが……。
児玉源太郎は怒っていた。
前線の事情を自分の目で確認することもなく、無為無策に兵の屍を何万と積み上げながら、いまだ旅順要塞陥落の手立てを見つけられぬ乃木の参謀陣に。
野砲の専門家が無理だ危険だというのを無視し、児玉は旅順周辺に展開していた大砲を24時間以内にすべて集めて二〇三高地に向けろと命じた。味方の上に砲弾が落ちることを覚悟で、重砲の援護射撃で歩兵突撃を成功させようというのである……。
この巻と『皇国の守護者』と『遙か凍土のカナン』を並行して読んでいたので、脳内記憶がとんでもないことになりましたが、今回は旅順陥落からバルチック艦隊の苦難の航海の途中経過を報告しつつ黒溝台の戦いが勃発するまで。
果たして旅順攻略に児玉大将がどれだけ影響を及ぼしたかは不明です。司馬遼太郎は歴史家ではなく、あくまで歴史小説家なので、見てきたかのように嘘を書くのも仕事です。どれだけ盛っているのか、どこまで史料に基づいているのか、気にしてはいけないのでしょうが、とにかく面白いですね。
指揮系統を無視するか否かぎりぎりの線での介入で、帝国陸軍はかろうじて旅順攻略を果たし、港に停泊していたロシア艦隊を壊滅することに成功します。当時の火砲運用の常識には外れていたかもしれませんが、戦力を集中運用するという戦争本来の原理原則には則った話でした。
そして、だんだんバルチック艦隊が気の毒になって来るのでした……。
【坂の上の雲5】【司馬遼太郎】【文春文庫】【黒溝台会戦】【二〇三高地】【ロジェストウェンスキー航海】【水師営】【七段構えの戦法】【マダガスカル】【長谷川挺身隊】【長距離斥候】