付け焼き刃の覚え書き

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「北辰群盗録」 佐々木譲

2009-02-12 | 時代・歴史・武侠小説
「あの妄想は危険すぎる。根絶せねばならぬ」

 五稜郭の戦いから5年。榎本武揚の共和国に参加しながら破れ、東京でその日暮らしをしている矢島従太郎は、陸軍省の隅倉という男に傭われ、再び北海道の大地に足を降ろす。
 開拓が進む北海道で、共和国旗兵隊を名乗る盗賊団が跋扈しており、その首魁が兵藤俊作、かつて五稜郭で共に戦った男だ。その群盗の討伐に加わるのが、矢島に与えられた仕事だった……。

 舞台を北海道の原野に移したウェスタン小説。ハードボイルドといってもいいよね。馬を駆って広大な原野を走り抜ける男たち。駅馬車襲撃。原住民の協力者。酒場での大喧嘩。追撃戦。罠。裏切り。そして、最後は銃による決闘。そんな男たちの物語が、北海道で繰り広げられます。足りないのは酒場の美女役のヒロインくらいかな。この作品のヒロインは、主人公たちの帰りを待つのではなく、遙か先を突っ走っています。
 どちらかというと空回りばかりしている夢想家の兵藤ですが、冷静で現実的な追跡者となる矢島をして「あの妄想は危険すぎる」と言わしめます。無理無茶無謀無策と判っていても、つい惹かれてしまいそうになるんでしょうね。確かに危険です。

【北辰群盗録】【佐々木譲】【北海道ウェスタン】【五稜郭】【速水螺旋人】
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