付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「アフリカにょろり旅」 青山潤

2009-02-15 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「ウナギは、新月の夜、マリアナの海山で産卵する」

 確認されている世界のウナギは全部で18種類。しかし、東京大学海洋研究所にはそのうちの17種類しか標本が存在していない。なんとか、18番目のラビアータ種を採取して完璧なコレクションとしなくてはならないと、ウナギグループの研究員たちは空路アフリカへ!
 限られた予算、ろくに通じない言葉、50度超の気温、水無トイレ、住血吸虫だらけの真水、撤去されない地雷原、そしてウナギを知らない漁師たち……。
 過酷な環境のもと、次第に身体は衰弱し、心が折れていく研究者たち。果たして熱帯ウナギ捕獲は成功するのか!?

 単なる学術調査なのに、第三者から見れば命がけの探検記にして冒険記。実際、誰か死んでしまっていたら、のんきに笑って読んでもいられません。自然相手のフィールドワークは国内でもかなり過酷。それがインフラも整っていないアフリカとなったらなおさらのこと。単なる学術調査もサバイバルとなります。
 ところが、これがマイペースで旅してるだけとなると一転してしまうらしく、やっとの思いでたどり着いた先に、普通のバックパッカーや白人観光客がにこにこと歩いていたりして、そりゃあ、もう笑うしかないよなあ。秘境は挑む者の心の中にあるのです。

 普通の日本人にとってウナギなんてものは土用の日に食べるものだとか、名古屋はひつまぶしが名物らしいとか、中国産もあるらしいよとか、その程度の理解なんだろうと思います。
 では、ニホンウナギの産卵場をほぼ特定したといっても、それに何の意味があるのか。「特定した」と「ほぼ特定した」の間にある越えがたい溝。そのあたり、学問の意義とか意味ってものも考えさせられる話としても読めます。

【アフリカにょろり旅】【青山潤】【ジンバブエ】【エッグカレー】【フィールドワーク】
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