付け焼き刃の覚え書き

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「こわれたせかいのむこうがわ~少女たちのディストピア生存術~」 陸道烈夏

2020-06-04 | 破滅SF・侵略・新世界
「これでまた私は昨日の私より賢くなれる」
 知識は命にもなり金にもなると、ラジオの電池を交換したサクマ・フウ。
 貧しい底辺の人間は教育も受けられない。ただ、録音された戦前の教育番組を流し続けるラジオだけが知識の源だ。

 チオウ第五管轄区に住む少女フウは天涯孤独の身となった。教育を受けずに育ったフウは、病気の母親には「こーせーぶっしつ」よりもまずは水と塩が必要だということを知らなかったのだ。
 大昔の戦争でこの国以外はすべて「みさいる」とかで消えてしまい、周囲には危険な生き物が棲息する砂漠ばかり。街の中ですら、噛まれると水を恐れながら死んでしまう呪いを持った野犬が群れている。そんな世界で1人生きていくフウは、ある時、ジャンク屋で古いラジオを手に入れた。
 誰かが酔狂にも録音データを流し続ける大戦前の教育番組は、最初は砂漠を何時間も歩いている間の暇つぶしであったが、やがてそれが《生きる知識》を教えてくれるものだということに気づくのだが……。

 かろうじて高度な文明を維持してはいるけれど、機械兵士なんてものが犯罪取り締まりの第一線に投入されている一方で、満足な医療や教育を受けられないままどん底を這い回る貧困層は多く、指導者が王として崇められているディストピアを舞台に、学び考えることを知った少女が不思議な押しかけ少女と繰り広げる逃走劇。
 ポスト・アポカリプス的な世界でのディストピアものだけれど、希望が残り、前向きに道が続く終わり方なので読後感はさわやか。末っ子のおすすめだけれど、おもしろく読めました。曲がりなりにも電撃小説大賞の銀賞作品なのですが、事前情報がなかったので個人的に拾いものでした。電撃文庫は懐が広いよね。

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コメント
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