「黒き計画、白き騎士」 ケイジ・ベイカー

「人生なんて八百長試合みたいなもんだ」
　ズルでもしなけりゃ勝ち目は無いと、ＡＩヘンリー・モーガン船長。

　有史以前、人類誕生の時代から暗躍している秘密結社＜カンパニー＞。これこそ時間旅行と不老不死の技術を手に入れた真なる秘密結社であり、その他の秘密結社といわれるものは＜カンパニー＞の存在を隠すダミーでしかないのだ……。

　秘密結社が生み出した不死身の工作員たちが活躍する短編集。
　いわゆるタイムパトロールものと違うのは、カンパニーが時間旅行の秘密を手中に収めているといっても歴史の流れを守る正義の味方なんかではなく利益を追求する腹黒い組織に過ぎないということと、エージェントたちは不死身のサイボーグだけれど自分の成績を上げることに血道を上げていたり趣味に走っていたり使命感とは無縁です。希少生物が絶滅する前に保護するといっても、それが商売になるからやるだけ。命令だからするだけ。やりたい仕事ができれば幸せという連中なので悲壮感とも無縁です。喪黒福造が混ざっていても不思議はあません。
　ときにはシニカルだったりコミカルだったり、ちょっと毛色の変わった、タイムパラドックスとは無縁な時間ＳＦの詰め合わせでした。

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