
こういうセッションに参加したいものですね。
1995年の大地震から60年。一度は壊滅してしまった西海岸に建設されたドリーム・パークはライブRPGをメインにしたテーマパーク。
ホログラムや役者をふんだんに使ったゲームが売り物で、そのプレイの模様を記録しては映画として販売したり、簡易化してアーケードゲーム化するなどして利益を上げている。
ところがある日、警備員の1人が他殺体で発見され、開発中の薬品が紛失してしまう。状況的に犯人は現在進行中のライブRPGのパーティ・メンバーの中にいるとしか思えない。しかし、参加者を全員拘束して取り調べれば犯人は判明するかも知れないが、それではゲームがめちゃくちゃになり会社は大損害必至。
そこでグリフィン警備部長がパーティの補充要員として送り込まれるのだが、パークに勤めていながらグリフィンはゲームそのものにたいした関心はない。だが、プレイヤーとして参加する以上ゲームはクリアしないといけないし、犯人もひそかに発見せねばならず……。
明らかに産業スパイと殺人犯を捜すことより、南洋の孤島を舞台にしたライブRPGの中身の方がメインですが、そのゲームでは、<ロア・マスター>と呼ばれるベテラン・プレイヤーがパーティーを統率します。
この<ロア・マスター>は会場に集まった参加希望者からメンバーを選抜してパーティーを編成するなどオフィシャル、<ゲーム・マスター>に次ぐ特権が与えられますが、同時にベテランとしてゲームを盛り上げ、ミッションを成功させる義務が科せられるのです。そのあたり、実際のネットゲームやMMORPGでも中心プレイヤーの行動が鍵となっているわけで、RPGはマスターとプレイヤーの共同作品であるというなら、それが商業ベースであるならば、プレイヤー側にも見返りがあって当然という発想は面白いです。
まだコンピュータがそれほど発展はしておらず、テーブルトークRPGは普及し始めていたけれど、コンピュータRPGはほとんどなく、やっと『ウルティマ』や『ウィザードリィ』が発売されたばかりの時代に書かれた作品です。
今なら、電脳空間内のワールドになりそうな気がしないでもありませんが、ディズニーランドのようなテーマパークが丸ごと体験型RPGの世界という醍醐味はバーチャルリアリティでは補えないらしく、2011年に4冊目が出るなど、今もドリームパークは書き継がれています。
『バルスーム・プロジェクト』The Barsoom Project(1989)
『ブードゥー・ゲーム』The California Voodoo Game (1992)
『月の迷宮ゲーム』The Moon Maze Game (2011)
バルスームはバロウズものかと思いきや、1冊目の事件から7年後。ドリームパークはイヌイット神話をベースとした新たなゲームの提供を始めていたが、一方で、火星に設置する宇宙エレベーターを検証するためのバルスーム計画も進めていた。そこにテロリストの一派が潜入し……というものらしいです。
ブードゥー・ゲームはあらすじから見ると1作目のリメイクっぽく思えるのだけれど詳細不明。
そして最新作のメイズゲームは月面探査ものらしく、時代はさらに30年ほど下って2085年。
人類の版図は太陽系全体に広がりつつあるが、月面都市などでは独立の機運が高まっている。
そんな情勢下で、プロのボディガードであるスコッティ・グリフィンは、政情不安なアフリカの共和国キカヤの大統領の令息であるアリの警護を依頼される。
しかし、そのアリ王子は月へ飛ぶという。初めて月で開催される『H・G・ウェルズの月世界探検』を原作としたゲーム、世界同時中継によって太陽系すべての人々が視聴する歴史的なイベントに参加するというのだ。
だが、そのゲームは凶悪なテロリストによって狙われた。多くのゲームプレイヤーが人質となり、命がゲームの対価となってしまう……。
グリフィン部長の子供だかが主役のようで、アマゾンのレビューは今ひとつのようではあるけれど、読んでみたいものです。(2008/05/19 2012/06/15改稿)
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