付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ドリーム・パーク」 ニーヴン&バーンズ

2012-06-15 | VRMMO・ゲーム世界
 仮想現実型RPGをテーマにした作品の代表作で、古典ともいうべき作品が本書。SFミステリの形式でファンタジーの物語を展開し、実はRPGプレイの入門書という贅沢な1冊です(しかも20世紀のカーゴ信仰がテーマ!)。
 こういうセッションに参加したいものですね。

 1995年の大地震から60年。一度は壊滅してしまった西海岸に建設されたドリーム・パークはライブRPGをメインにしたテーマパーク。
 ホログラムや役者をふんだんに使ったゲームが売り物で、そのプレイの模様を記録しては映画として販売したり、簡易化してアーケードゲーム化するなどして利益を上げている。
 ところがある日、警備員の1人が他殺体で発見され、開発中の薬品が紛失してしまう。状況的に犯人は現在進行中のライブRPGのパーティ・メンバーの中にいるとしか思えない。しかし、参加者を全員拘束して取り調べれば犯人は判明するかも知れないが、それではゲームがめちゃくちゃになり会社は大損害必至。
 そこでグリフィン警備部長がパーティの補充要員として送り込まれるのだが、パークに勤めていながらグリフィンはゲームそのものにたいした関心はない。だが、プレイヤーとして参加する以上ゲームはクリアしないといけないし、犯人もひそかに発見せねばならず……。

 明らかに産業スパイと殺人犯を捜すことより、南洋の孤島を舞台にしたライブRPGの中身の方がメインですが、そのゲームでは、<ロア・マスター>と呼ばれるベテラン・プレイヤーがパーティーを統率します。
 この<ロア・マスター>は会場に集まった参加希望者からメンバーを選抜してパーティーを編成するなどオフィシャル、<ゲーム・マスター>に次ぐ特権が与えられますが、同時にベテランとしてゲームを盛り上げ、ミッションを成功させる義務が科せられるのです。そのあたり、実際のネットゲームやMMORPGでも中心プレイヤーの行動が鍵となっているわけで、RPGはマスターとプレイヤーの共同作品であるというなら、それが商業ベースであるならば、プレイヤー側にも見返りがあって当然という発想は面白いです。

 まだコンピュータがそれほど発展はしておらず、テーブルトークRPGは普及し始めていたけれど、コンピュータRPGはほとんどなく、やっと『ウルティマ』や『ウィザードリィ』が発売されたばかりの時代に書かれた作品です。
 今なら、電脳空間内のワールドになりそうな気がしないでもありませんが、ディズニーランドのようなテーマパークが丸ごと体験型RPGの世界という醍醐味はバーチャルリアリティでは補えないらしく、2011年に4冊目が出るなど、今もドリームパークは書き継がれています。

『バルスーム・プロジェクト』The Barsoom Project(1989)
『ブードゥー・ゲーム』The California Voodoo Game (1992)
『月の迷宮ゲーム』The Moon Maze Game (2011)

 バルスームはバロウズものかと思いきや、1冊目の事件から7年後。ドリームパークはイヌイット神話をベースとした新たなゲームの提供を始めていたが、一方で、火星に設置する宇宙エレベーターを検証するためのバルスーム計画も進めていた。そこにテロリストの一派が潜入し……というものらしいです。
 ブードゥー・ゲームはあらすじから見ると1作目のリメイクっぽく思えるのだけれど詳細不明。
 そして最新作のメイズゲームは月面探査ものらしく、時代はさらに30年ほど下って2085年。

 人類の版図は太陽系全体に広がりつつあるが、月面都市などでは独立の機運が高まっている。
 そんな情勢下で、プロのボディガードであるスコッティ・グリフィンは、政情不安なアフリカの共和国キカヤの大統領の令息であるアリの警護を依頼される。
 しかし、そのアリ王子は月へ飛ぶという。初めて月で開催される『H・G・ウェルズの月世界探検』を原作としたゲーム、世界同時中継によって太陽系すべての人々が視聴する歴史的なイベントに参加するというのだ。
 だが、そのゲームは凶悪なテロリストによって狙われた。多くのゲームプレイヤーが人質となり、命がゲームの対価となってしまう……。

 グリフィン部長の子供だかが主役のようで、アマゾンのレビューは今ひとつのようではあるけれど、読んでみたいものです。(2008/05/19 2012/06/15改稿)

【ドリーム・パーク】【ラリー・ニーヴン】【スティーヴン・バーンズ】【創元推理文庫】【推理】【RPG】【南洋】【クトゥルフ】【減量プログラム】
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「インテリビレッジの座敷童」 鎌池和馬 

2012-06-15 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「禍根を引きずらない一番手っ取り早い方法は、完膚なきまで相手を叩き潰すこと」
 一度やると決めたらためらうな、ブレーキを踏んだ分だけリスクが増すと、菱神舞。

 国際競争に直面した日本の第一次産業は、田園風景と最新鋭テクノロジーのコラボである『インテリビレッジ』エリアの創設でブランド化を推し進めた。今ではなんのへんてつもない水でさえ、1杯ン百円の値がついてしまう。
 だが、あまりに『田舎』演出が完璧すぎたインテリビレッジは棲みやすい『環境』を求める妖怪すら呼び寄せ、さらには妖怪とその活動条件をパッケージ化することで犯罪に利用とする者まで現れるようになった……。

 七飯宏隆の『座敷童にできるコト』のときも思ったけれど「美人のおねーさんは“わらし”じゃねーぞ!」とツッコミだけはいれておこう。巨乳だし。
 怪異をパッケージ化して商売にするという発想は目新しい気がします。そっかーっ!という感じ。最近の妖怪ものをすべて網羅はしていないけれど、雪女を「相手が契約を反故にすることで自動的に致死を誘発する」存在として物語を再構築するというようなシステムは興味深いのです。
 物語はゲームばかりしている巨乳の座敷童と少年が雪女に絡まれたり、ノンキャリアの刑事と猟奇専門の美少女探偵が連続殺人に挑んだりと、場所も登場人物も異なる短編が幾つか続いたなと思ったら、最後にそれらすべてが1点に集まっての大惨劇。
 総合評価としては面白いのだけれど、コメディかといわれると死体を量産する話では笑いにくいなあと。妖怪マンガとしてコミック化するのが似合いそう。

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