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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

美食倶楽部

2014-05-22 19:58:37 | 読んだ本
谷崎純一郎 種村季弘編 1989年 ちくま文庫
副題は、「谷崎純一郎 大正作品集」ってことで、その時代の短編。
こないだ、開高健の「最後の晩餐」を読んだら、これについて触れられてる章があり、気になったんで、さっそく買って読むことにした。
大正時代の、カネがあってヒマもある人たちが、美食倶楽部ってのをつくってうまいものを求めるんだが、そのなかのひとりの伯爵が、ついに「美食の魔術」に開眼すんだよね。
そのひとつの料理が「最後の晩餐」にも紹介されてたんだけど、真っ暗闇のなかにいると、女の指が唇を弄んで、やがて指が口のなかに入ってきて撫でまわす、っていう仕掛けのもの。うーん、谷崎的フェチ全開?
収録作は、以下のとおり。
「病蓐の幻想」
虫歯の痛みで煩悶している男が、今夜大地震が起きたらどうしよう、起こるに違いない、どう逃げようかと悩む話。
「ハッサン・カンの妖術」
主人公の作家は、上野の図書館でひとりの印度人と知り合いになった。ちょっと気難しそうなその男は、作家が伝記を読んで興味をもった、魔法使いのハッサン・カンに会ったことがあるという。
「小さな王国」
東京からG県に一身上の理由で移り住んだ、小学校教師の視点による話。転入してきた男子児童がクラスを制圧して、他の児童に対しては教師よりも影響力をもっていく。
「白昼鬼語」
語り部の作家に、ある友人が異常に昂奮して電話をかけてくる。今夜某所で人殺しが行なわれる確証をつかんだので同行してくれという。いよいよ精神に異常をきたしたかと思いながらも、それにつきあって奇怪な体験をする。
「美食倶楽部」
上述。
「或る調書の一節―対話」
殺人で逮捕された犯人への尋問のやりとり。悪いこととは知りつつ犯罪をやめられない、そして女房に対してはある種の感情からそれを打ち明けるという心理をとつとつと語る。
「友田と松永の話」
何年かおきに行方知れずになる夫・松永のカバンのなかには、友田という人物の所持品が入っていると、松永の妻から問い合わせの手紙をもらった作家は友田とときに一緒に遊ぶ仲。似ても似つかぬ友田と松永だが、二人は互いにその所在を知っているのだろうかという謎がわきおこる。
「青塚氏の話」
深い関係にある若い女優を自らの作品で撮る映画監督の独白。あるとき出会った男が、女優のでる映画をすべて見た結果として、その身体の細部にいたるまで、とても詳しく、偏執的にまで、語る。谷崎的フェチ全開だあ!
コメント
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