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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

惑星P-13の秘密

2015-04-07 18:40:35 | 読んだ本
高橋源一郎 平成2年 角川書店
副題は「二台の壊れたロボットのための愛と哀しみに満ちた世界文学」、って何のことやらだけど。
序文で明らかにされてるように、世界最高速のコンピューターを積み込んでるくせに、なにも仕事ができずに本ばっかり読んでいる、二台のロボット「トム」と「ジェリー」が読んでる本(または焚き付け、その区別はロボットにはつかない)の集まりってことになる。
もちろん、そんなのは冗談であって、偽書ってんぢゃないな、架空の書物をかたって、その一部を掲げてるって体裁。
これ、意外とおもしろい。
Dr.スランプがサザエさんがどうしたとかいうのは、私には全然おもしろさが分かんないんだけど、この架空の書物集は楽しい。
あまりこれみよがしに風刺してやろうとか、ウケねらったネタつくったりマニアックな理論固めた形とったりとかって、仕掛けのあるやつぢゃなくて、まったく意味ないタイプ(と私には思われる)のが私は好きだったりする。
>その国は世界最大の貿易国でございます。(略)この国に持ち込まれるいかなる品物も、鑑定人が直ちにその価値を判断してくれるからでございます。たとえば、丸々と太った小型の食用麒麟を(略)「棗椰子なら中クラスのもので八百五十六個、ラシャの布なら帝国綿布製造局刻印第八級のもので三十三エーリエーリ、チベット山羊の乳なら九樽三壜三枡、……」と、商人の納得のいくまで無限に叫び続けてくれるのでございます。(略)
とか、
>「国立の猫」……昭和十年、国立在住の愛猫家のグループによって創刊された。都下最古の猫総合雑誌である。創刊時の目次に、「対談―文学に描かれたる猫。出席者―太宰治、井伏鱒二」が載っているように、ハイブロウなものであった。
とか、
>一九一一年七月七日、ホセ・カエターノがブエナベントーラの郊外に開設した「ホセの大迷路」は縦二〇メートル、横一五メートルの小屋にすぎなかった。(略)カエターノは儲けをすべてこの「大迷路」の拡張につぎ込み、開設から一〇年後の一九二一年には迷路は市内に到達し、一九三五年にはブエナベントーラ市全域をおおうようになった。(略)ブエナベントーラ市当局は「大迷路」内に居住する市民の数を四六万四〇〇〇人、そのうち四万二〇〇〇人が元入場者であると推測している。(略)
とかって、バカバカしい大ウソみたいなのが、妙にツボにきておもしろかったりする。
コンテンツは以下のとおり。
・則巻千兵衛博士 未発表発明品目録よりNo.2401~No.2422
・無名の一宇宙人にして、忠実なる護衛兵、通称モコモコの詩に見るニコちゃん星の文物
・マルコ・ポーロ『東方見聞録』偽書断片
・マルコ・ポーロ『東方見聞録』偽書断片(2)
・ある芸術家たちの肖像
・失われた高貴な職業百科
・失われた高貴な職業百科(2)
・マラコビアの植物
・新しいスポーツ
・「全雑誌カタログ1987」より
・古代ギリシア哲学者断片集
・ファンティッポの言語について
・「野球博物館新着図書リスト1988」より
・アダキアからの手紙・抄
・銀河連邦テラ政府環境調査局疫病調査班から銀河連邦中央政府疫病対策特別委員会へあてて送付された「テラ星系におけるいわゆる『疫病』の発生の実態について」(報告書番号10813SA22)、通称「疫病白書」よりその抜粋
・世界の遊園地・改訂三十九版
・ヴァーミリオン版世界文学全集カタログ
・ヴァーミリオン版世界文学全集カタログ(2)
・ヴァーミリオン版世界文学全集カタログ(3)
・私立探偵フィリップ・Mの事件簿
コメント
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