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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

どくとるマンボウ昆虫記

2015-04-15 07:38:40 | 読んだ本
北杜夫 昭和41年 新潮文庫版
ぼつぼつ読み返そうとしている北杜夫、こないだの博物誌に触発されたというわけではないが、今回はこれ、昆虫記。
なんだろ、エッセイ集ってことでいいのかな、虫に対する思い入れにあふれた。
著者の虫好き、特に蝶が好きなことは、いろんな著書からもうかがい知れるんだけど。
冒頭の「人はなぜ虫を集めるのか」のなかで、
>さよう、子供たちは本能的に虫をとらえる。それらが美しく、奇妙で動いたり飛んだり跳ねたりするからだ。
と言って、虫をおっかけることについては全面的に肯定してる。
>トンボがいたら、とか子供たちよ、追いかけろ。それが子供であり、残された最後の本能というものだ。
とも言ってる。
虫のことは私にはよくわからないというか、その魅力が理解できないとこあるんだけど。
それにしても、すっごい久しぶりに読み返してみたら、けっこう独特のユーモアがおもしろいんだ、この本。
ウスバキチョウとか、ヒメウスバシロチョウとか、ウスバシロチョウの美しさについて、
>それにしても、なんという上品な姿だろう。彼女らは目に立つ化粧を一切しない。素顔のうつくしさ、なにげなく覗かせた襟足の清楚さだ。そしてどことなく弱々しく、ひっそりと暮しているかこわれ者のかげりがある。旦那に指輪ひとつ買ってくれとは言いださぬ古風な女の風情がある。
なあんて書いてるんだけど、最後の一文なんか、ホント笑わされる。
カブトムシの類をとりにいく段では、
>糖蜜採集法というのもある。これは黒砂糖と焼酎などを煮つめたものを、クヌギのざらざらした幹にぬっておき、夜になって集まってくるカナブン、クワガタムシ、カブトムシ、さては夜蛾のたぐいを採集するのである。べつのびんにはベルモットとジンをまぜたものを入れておき、これは自分で飲む。そうすると、夜の雑木林の童話じみたもののけが余計身に迫るのだ。
ってあるけど、そうか、マティーニを飲みながら行くのが大人の昆虫採集というものかと、私なんかは蒙を啓かれた。
ウスバカゲロウのところでは、
>(略)ウスバカゲロウが薄翅蜉蝣であるとはつゆ知らなかった。てっきり薄馬鹿下郎と思いこんでいた。
と、嘘だか本気だかわかんないトボケ方をして、そのあとに昆虫とは関係ないバカ談義をしている。
>(略)文学的にいえば、バカには二種あり、始末に困るバカと、人類の栄光を支えてくれるバカとがある。更に真理を述べれば、人類はすべて程度の異なるバカから構成されており、それ以外の人間はただの一人もいない。
って書きっぷりだけど、そんなシニカルには聞こえず、どっちかっていうと、気取らずにバカになろうよって言ってるような雰囲気がある。
コメント
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