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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

万引女の靴

2015-11-26 21:07:27 | 読んだ本
E・S・ガードナー/加藤衛訳 1956年 ハヤカワ・ポケット・ミステリ版
前回から推理小説つながりで、ぽつぽつ読みかえしてるペリイ・メイスン・シリーズのひとつ。
原題「THE CASE OF THE SHOPLIFTER'S SHOE」で、そのまんま、万引きをはたらいた女の靴に、そのあと血が付いてたっていう意味のタイトル。
それが、殺人事件の現場にいたんだろって、状況証拠のひとつになるわけだが。
もともとは、デパートの食堂で食事をとろうとしていた老婦人が、尾行してた店側のひとに商品を隠し持ってるのを指摘され、万引きの容疑で捕まろうかというところから始まる。
突然の雨を避けるために、秘書のデラとそのデパートに飛び込んで、ついでに食事をしようとしてその場にいたメイスンは、品物を店外に持ち出してないかぎりは犯罪は成立していないと、婦人とその姪に助け舟をだす。
ちなみに、老婦人サラは、万引きしたなんて自覚がない、トボケてんのか病気なのか、よくわかんない。
そんな出来事のあと、その姪のヴァージニアはメイスンの事務所に相談にくる。
サラの弟であるジョージ叔父は宝石を取り扱う仕事をしているが、周期的に大酒を飲み賭博に手を出して何日も帰ってこないようなおかしな癖がある。その叔父の留守のあいだに、サラ伯母のほうが盗癖によってダイヤを盗んだりしてないか心配だという。
宝石の出どことかをめぐって、すでに少々ややこしい話なのだが、サラが道路に飛び出して自動車にひかれて意識不明という事態が起きて、さらにややこしくなる。
事故現場の近くの、くだんの宝石に関わる人物をメイスンと探偵ドレイクが訪ねていくと、そこでは殺人が行われていた。
状況証拠いっぱいで、容疑はサラにかけられるが、意識は回復したもののサラはメイスンにデパートで会ったところまでは憶えているが、その後の記憶はなんにもないという。
でも、凶器らしき拳銃を所持していただろと問われたときとかには、「それだからって、その手提げ袋が私のものだとはいえませんわ。私はあの時、意識不明でしたもの。袋が私の傍で発見された事で責任負わされるなんて、心外です」なんて、弁護士顔負けのしっかりしたこと言う。
調べるほど事件はややこしく、ドレイクいわく「まるで蠅取紙の上の猫のようにこんがらかってるよ。つまり動き廻れば廻る程、益々状態は悪化するばかりなんだな」という状況。
どうでもいいけど、そんなドレイクのことを、ドレイクの前でメイスンの質問に答えていいものか「あの方は、どういう方?」と問われたとき、メイスンは、「貯金箱みたいな男ですよ。物事は簡単に運ぶが、いったんそれを出すとなると、ぶちこわさなくちゃなりませんね」なんて評する。
さらにどうでもいいけど、上機嫌で事務所に帰ってきたメイスンの顔をみて、秘書のデラが「先生、カナリヤを丸呑みにした猫みたいな得意な顔をなさってるの、なぜ?」なんて言う、おもしろい言いようだ。
ま、そんな変わった表現ばっかに気を取られてもいられない、事件の捜査のほうは、最初メイスンは警察のホルコム巡査部長に「協力」すると言って、そのことにドレイクは驚いたりするんだけど、メイスンは「協力という言葉は大変弾力性のある言葉なんでね。人によって、その意味はまちまちなのさ」なんて煙に巻いてたりする。
だが、途中から、ホルコムのやりかたに激怒して、俄然対決姿勢を明らかにする。
これまで読みかえしてきたメイスンものは、裁判の結末までいくものがなかったような気がするけど、本作では陪審員による評決まで持ち込まれる。
もちろん、圧倒的に不利だと思われていたものの、メイスンは検察側の証拠をぜんぶひっくり返して、被告の無罪を勝ち取る。
コメント
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