筒井康隆 昭和50年 新潮文庫版
持ってるのは、昭和57年の26刷。
こないだ『笑うな』を出してきたときに、おなじとこに仕舞ってあったのを読み返すことにした、筒井康隆の連作短編集。
しかし、なんだね、昭和五十年代に読んだ本を今んなって読み返してみても、やっぱ、安部公房、北杜夫、星新一といったところは好きだし、筒井康隆は好きになれないな、って思うとこは当時となんにも変ってないな、私。
そうは言っても、筒井作品については、数えるほどしか読んでないんで、えらそうに語ることはできないんだけど、いちばんいいなと思った・思うのは、これ。
主人公の火田七瀬は、高校を出たばっかりで、住み込みのお手伝いさんとして、家から家へ転々としながら働いている。
で、この女性が、生まれながらに、人の心を読み取ることができる超能力の持ち主。
そんな能力が自分だけの特殊なものだと気づいてからは、他人には知られないようにして、仕事も一カ所にとどまらない職種を選んで生きていくことにした。
「掛け金をはずす」という表現を自ら用いている精神作業をすると、相手の思考が自分のなかに流れ込んでくる。もちろん、掛け金をおろして、意識的にそれを遮断することも欠かせない。
そういうわけだから、その、登場人物たちが口に出して言葉にはしていない思考とかの描写がキモで、途中からは、並行して考えているふたつの事柄を、そのまま縦二行に並べて表記するなんていう形式をとったりもするようになる。
(いま突然おもいだしたけど、ロッキンオンの投稿にもよくそういう二行に書く表現方法あったな。)
ひとが表に出さないこと読み取っちゃうんだから、そこは当然グチャグチャ、ドロドロしてて、まああまり気持ちいいものではないが。
一連のなかで特におもしろいと思ったのは、強い精神力のある人なら、物理的に遠い距離までその心を追っかけられるとこを書いた「青春讃歌」と、七瀬の父の話の出てくる「紅蓮菩薩」かな。
各編のタイトルは以下のとおり。
八軒の家庭を渡り歩いていくから、タイトルは「八景」なんだろうけど、どこにいっても長続きしないよ、このお手伝いさんは。
「無風地帯」
「澱の呪縛」
「青春讃歌」
「水蜜桃」
「紅蓮菩薩」
「芝生は緑」
「日曜画家」
「亡母渇仰」

持ってるのは、昭和57年の26刷。
こないだ『笑うな』を出してきたときに、おなじとこに仕舞ってあったのを読み返すことにした、筒井康隆の連作短編集。
しかし、なんだね、昭和五十年代に読んだ本を今んなって読み返してみても、やっぱ、安部公房、北杜夫、星新一といったところは好きだし、筒井康隆は好きになれないな、って思うとこは当時となんにも変ってないな、私。
そうは言っても、筒井作品については、数えるほどしか読んでないんで、えらそうに語ることはできないんだけど、いちばんいいなと思った・思うのは、これ。
主人公の火田七瀬は、高校を出たばっかりで、住み込みのお手伝いさんとして、家から家へ転々としながら働いている。
で、この女性が、生まれながらに、人の心を読み取ることができる超能力の持ち主。
そんな能力が自分だけの特殊なものだと気づいてからは、他人には知られないようにして、仕事も一カ所にとどまらない職種を選んで生きていくことにした。
「掛け金をはずす」という表現を自ら用いている精神作業をすると、相手の思考が自分のなかに流れ込んでくる。もちろん、掛け金をおろして、意識的にそれを遮断することも欠かせない。
そういうわけだから、その、登場人物たちが口に出して言葉にはしていない思考とかの描写がキモで、途中からは、並行して考えているふたつの事柄を、そのまま縦二行に並べて表記するなんていう形式をとったりもするようになる。
(いま突然おもいだしたけど、ロッキンオンの投稿にもよくそういう二行に書く表現方法あったな。)
ひとが表に出さないこと読み取っちゃうんだから、そこは当然グチャグチャ、ドロドロしてて、まああまり気持ちいいものではないが。
一連のなかで特におもしろいと思ったのは、強い精神力のある人なら、物理的に遠い距離までその心を追っかけられるとこを書いた「青春讃歌」と、七瀬の父の話の出てくる「紅蓮菩薩」かな。
各編のタイトルは以下のとおり。
八軒の家庭を渡り歩いていくから、タイトルは「八景」なんだろうけど、どこにいっても長続きしないよ、このお手伝いさんは。
「無風地帯」
「澱の呪縛」
「青春讃歌」
「水蜜桃」
「紅蓮菩薩」
「芝生は緑」
「日曜画家」
「亡母渇仰」
